お便りコーナー

□魔王さま、初めまして。世界征服おめでとうございます。僕は今年の春中学生になりました。だけど、まだどの部活に入るか決めていません。野球が好きなんですけど、運動はほとんどやったことなくて、ちゃんと毎日の練習についていけるか心配です。仲の良い友達は吹奏楽部に入ってて、そっちからも誘われているんですが、魔王さまはどっちが良いと思いますか? やはり自分のやりたいことを優先すべきでしょうか?□

(ペンネーム:高橋トビイワシ大好きさん・十三歳)



A:野球……? 申し訳ございません。まだまだ人間の世界に疎いもので、『野球』なるものが何なのか分からないです……。『自分のやりたいことを優先するべきか』、それとも『友達と一緒にあまりやりたくないことをやるのが良いのか』という悩みでよろしいですか? 私は『どちらでも正解』だと思います。自分のやりたいことをやったら楽しいだろうし、友達と一緒なら、最初は好きじゃないことでもやってるうちに楽しくなることがあります。私も実は最初、そこまで世界征服が好きじゃなかったんですよ。だって怪我したら痛いし、壮大過ぎるし。隠居後も、インタビューだとかなんだかんだ言って、やる事多いんですよ(笑)。

 ただ一緒にやる友達がいたから、征服地図を広げてて楽しかったって言うのは確かにあります。それに好きなものが一緒な人が集まれば、きっと新しく仲の良い人もできると思いますよ。だからどちらでも正解です。いっそのこと、野球界を征服してみてはいかがでしょうか。そして野球と吹奏楽部を合体させて、両方一緒にやれば良いんです。世界征服すれば、そんなことも可能です。今度野球教えてください(魔王)。



□魔王さまこんにちは。いつもインタビュー楽しく読ませていただいてます。早速ですが私は三十代の主婦です。今度二人目が生まれるんですが、正直夫の稼ぎだけでは将来が不安です。少しでも足しになるようにアルバイトを始めようかとも思うんですが、子育てをしながら働くのは体力的に大変そうで尻込みしています。どうしたら良いと思いますか?□

(ペンネーム:照り焼き少女生姜隊さん・年齢非公表)



A:おめでとうございます! 私も妻が六七人いて、子供が一三四人、孫が四四三人、ひ孫が一四二三人います。毎年正月になると城に家族が集まるんですが、正直祝いの出費が……(笑)。私は男ですが、子供を育てながら働くと言うのは現実的に厳しいものがありますよね。かといって旦那さんに今すぐ出世しろと迫るのは、それはそれで酷な気がします(苦笑)。

 節約で言えば、家庭菜園なんかいかがですか? 市販されているスパゲティ=ナポリタン・ドッグは安いし手間いらずでドアを開けておけば勝手に散歩にも行ってくれますし、今度生まれてくる赤ちゃんの良き友になってくれると思います。お願いすれば毎日スパゲティナポリタンも作ってくれますしね。私も昔飼ってましたけど、疲れた時料理しなくて良いのでオススメですよ。いっそのこと、アルバイト界を征服してみてはいかがでしょうか? そして子育てをしながら体力的に無理なく稼げる新しいアルバイトを創設し、『子育てバイト王』として君臨すれば良いんです。世界征服すれば、そんなことも可能です。ご出産おめでとうございます。すくすくと元気に育つことを、魔界の片隅から祈っています(魔王)。



□薬を飲むときに水が必要なんですが、五〇〇ミリリットルのペットボトルじゃ正直多すぎます。持ち運びにも不便だし、三五〇でも多いくらいです。二〇〇ミリくらいの小さいペットボトルを用意してください!□

(ペンネーム:案と運と縁と恩でInさん・七十六歳)



A:分かりました。今すぐペットボトル界を征服し、ファンタジアでも用意するように準備いたします(魔王)。



□どうして人間と仲良くしないといけないんですか?□

(ペンネーム:エリザさま万歳さん・三六七歳)



A:はい。こう言った意見が多いのも事実です。結論から言わせてもらうと、仲良くしないといけないと言うことはないです。ただ、仲良くしていた方が楽しいことも多いと思います……。私の理想の世界は自分に取って悪い奴や嫌いな奴を倒して終わりとか、目に見えないところに追いやってハイ終了、と言うようなものではないんです。仮に人間を迫害しても、必ず恨みを買って、どんなに押さえつけてもきっとどこかで反乱が起こる。人間が魔族を追いやって、魔族が人間を追いやって、また人間が……って、その繰り返しじゃ、キリがないじゃないですか。

 確かに諸先輩方の中には、私の世界征服のやり方に苦言を呈する人も少なくありません。ですが、『あいつのやり方は失敗だった』と後で誰に笑われても良いから、人と魔族が手を取り合う世界を、私は見てみたかったのです。それに理想を目指すことこそが、世界征服の醍醐味ではないでしょうか? (魔王)。



□僕は不安症で、よく家の鍵をかけたかどうかが気になって何度も玄関を見にいく事があります。どうしたら治るでしょうか?□

(ペンネーム:松平ペンギンさん:年齢不詳)



A:もし治したいのであれば、自分の性格を、自分で征服してコントロールしてみましょう。それと、特に治す必要もないという考え方もできます。だって、不安になる事が何かいけない事でしょうか? 悪い事でもしましたか? 少なくともファンタジアでは臆病な事、不安になる事は決して悪い事ではありません。不安になるからこそ、『慎重かつ丁寧に物事が実行できる』し、臆病だからこそ『むやみに危険に飛び込まず、生き残る事ができる』と私は思います。不安にならない人は、逆に確認作業を怠ったり、安心しきったりして油断も多いのではないでしょうか? 考え方や活かし方次第で、不安症も立派な武器になると思いますよ(魔王)。 



□毎日何が楽しくて生きているのか分かりません。幼い頃からいじめを受け友だちもできず受験に失敗し失恋を重ね仕事すら見つからずとうとうこの間引きこもる家さえ燃えて無くなりました。世界なんて滅んでしまえば良いと思います。魔王さまなら、分かってくれますよね?□

(ペンネーム:匿名希望名無しさん・二十七歳)



A:世界を滅ぼすよりもっと簡単で良い方法があります。征服してしまうことです。滅ぼそうと思ったら、各国の軍隊とか魔族とか全部相手にしなきゃいけないし、生命保険の手続きとか、面倒なことがいっぱいです。征服してしまえば、自分の好きなように世界を変えて行くことも可能です。まずはその怒りと悲しみに任せて、お近くのダンジョンに挑んでみるのはいかがでしょうか? 攻略次第でお金や食料を稼ぐこともできますよ。腕が上がれば、私の右腕として正式に魔王軍の仲間に採用することもあります。採用試験は年に一回です。お待ちしています(魔王)。


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