第5話 サトーの話3

説得は呆気なく終了した。どうも前々から宇宙に出たいと

思っていたらしい。


「どうしてもダメならお金持ちの知り合い作って子どもだけ

 連れて出てもよかったのよ」

と妻はニッコリ笑った。


ジムの建物内に住める家具付きの部屋が空いてるとのことで、

荷物をまとめて持てないものは箱詰めして郵送し、

そして家を出た。夜逃げのごとく。


そして行先は月の裏側にある第三エリアと呼ばれる宙域。


一番近い海洋上にある宇宙エレベータで上がり、そこから

シャトルを使って移動する。どちらも高速のものを

選ばなければ発車時でもシートベルトなしでくつろげる。


いったん第一エリアでシャトルを乗り換え、第三エリアへ

向かう。宇宙行き出張を一度でもやっておけばよかった。

無重力帯の移動含めて不慣れなことこのうえない。

しかし意外と旅は快適に過ごせた。


第三エリアでシャトルを降り、そこでいったんホテル泊した。

そこで、ジムの所長のボブと会った。たまたま別件で

出ており、翌日いっしょに移動することになった。


ジムに着いて旅装を解いたあと、ボブから例の双子を紹介して

もらった。確かに二人とも地球で見た少女よりもひと回り

体が大きく、肌も褐色で強そうだった。似てはいるが。


ついでに同じ日に入門することになった女の子も紹介された。

アミという。金髪の14歳。なんでも音楽活動をやっていて、

体づくりのために入門するだとか。


なんとなくごつい筋肉の男ばかりがいるところを想像して

いたので、少し気が楽になった。あとで勘違いであることに

気づくのだが。


仕事はジムでのトレーニングの様子を記事にして発信すること。

というわけで、1か月の基礎トレーニングのあとに、本格的な

トレーニングが開始された。


地獄の始まりだった。

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