第3話 おおぐまちゃん、こぐまちゃんと出会う

都会ではいろいろなものがいろいろな街から運び込まれてくる。山の中では採れないものや、いままで見たこともないものがたくさんあって毎日楽しかった。おおぐまちゃんは海の魚は見たことがなかったので魚市場に行ってみることにした。大きなマグロや平べったいヒラメ、ピンクのタイ・・・いろいろな大きさ・形・色。一日中見たり、食べたり、写真を撮ったり大忙し。お腹いっぱいで海辺に出た。もう日が傾いて夕方になっていた。

海からの風が涼しく気持がいい。しばらく夕日を見ていると、女の子のくまがひとりぽつんと岸壁に座っているのに気がついた。

「そんなところに座ってちゃ危ないよ。」

声をかけたが反応がない。足をブラブラさせながら、うつむいて夕日でキラキラ光る海面を眺めていた。

「お母さんとはぐれたのかい?」

と声をかけたが、何も言わず首を左右に振るだけだ。あたりを見回したが誰もいないし、放っておく訳にも行かない。疲れた表情で寂しそうにしていたので、彼女の両脇をかかえ抱き上げると、嬉しそうにニコニコしてくれた。きっと買い物客か市場のひとの子供だろうと思い市場の管理事務所を探した。

「なんて名前なの?」

彼女が初めて話してくてた。

「おおぐまちゃんというんだよ。キミの名前は何っていうの?」

しばらくうつむいて、

「こぐまちゃん。」

とポツリと答えた。

やっと事務所を見つけ、職員に声をかけた。

「あの・・・岸壁に女の子がひとりでいたんですけど・・・。」

奥からおじさんが出てきて

「あっ・・・その子ね。ここ2・3日、この時間あそこにいるんだよ。いつの間にかいなくなっちゃうんで近所の子だとおもうんだけどね。」

と困った様子で答えた。電話が鳴り、奥に引っ込むとなかなか帰ってこない。さっきの態度からするとあまり関わりたくないらしい。

「おなかすいた。」

またポツリと言った。

「とりあえず何か食べようか。それからお母さんを探そう。」

とは言ってみたけれど、市場の食堂はもう閉まっている。

「あ・・・そうだ。」

市場で買った食べ物を持っていたのを忘れていた。

「こんなものでごめんね。」

両手でチクワを持ち、美味しそうに頬張っている。

「おおぐまちゃんはたべないの?すごくおいしいから。」

モグモグしながらチクワを勧められた。

「さっきまで市場でいろんなものを食べたからね。今はいらないよ。気にせずに好きなだけ食べなよ。」

こぐまちゃんは嬉しそうに食べていた。しかし食べる様子からするとしばらく何も食べていなかったように見える。

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