世界の果てまで連れてって

ヨル from 1001

プロローグ



空はどこまでも青色で、下には一面に広がる草の絨毯が風にうねり、その波は地平線へと消えて行く。

千葉県の田舎に建つこの高校の屋上から一人、僕は何も考えずに辺りの景色を見つめていた。


「ヨル! 3時間目の授業はじまるぞ!」


後ろでやたら煩い声がする。

金網越しに景色を見るのを止め、僕を『ヨル』とあだ名で呼ぶ声のする方へ目線をやった。

そこには屋上の入り口で僕に声をかけてきた同級生が仁王立ちしていた。

クラスメイトの沢城 春虎だ。

春虎は僕より10センチほど背が高く、名前の通り制服の青いブレザーの下に、虎のマークが付いた黄色のパーカーを着ている友達だ。

「春虎だって授業サボるつもりだったんでしょ?」

僕は少し笑いながら、春虎の左手に目をやった。大量のお菓子が入った袋を持っている。

「ヨルと政治について語りたくてな。お菓子持ってきたぞ!」

「嘘つけ。春虎、今の首相も誰なのか知んねーだろw」

僕はすかさず春虎にツッコミを入れる。これはいつものことだ。

春虎は無邪気にはにかみ、僕の隣りに座った。

他の生徒が真面目に授業を受けているその真上で、僕らは馬鹿話をしながらお菓子を食べた。

「ヨル見ろ、このグミの形! う◯こみてーだな! う◯こグミだぜ! 召し上がれ♡」

「……」

「ヨル! う◯こグミ!」

「……」

「…ヨル?」


こんな何気ない日が永遠に続けば良いって思ってた。


「俺、春虎に言いたいことがあるんだ…」

僕は静かに春虎にそう告げた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



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