53話 聖女の驚愕そして再会

おびただしい血と悲鳴。この地ギリースは今巨人の襲撃を受けていた。

その原因は血の教団と名乗る魔の組織である。

「…ていうかあいつら巨人しか使えねえのかよ。」

先程この地にたどり着いたばかりのユウとミーシェは不本意ながら巨人の討伐をしていた。

「うー…わんわん!」

「お前はどうせ吠えてるだけで攻撃しないんだから静かにしてろ。」

「くぅん…」

「めんどくさいね。ちょっとまってて…ヴィーナスフラッシュ。」

その場の巨人全てがミーシェの前にひれ伏した。

「さすが…ブラックホール。」

その巨人全てを強力な圧力で押しつぶした。

「うへぇ…我ながらグロいことするねぇ。」

「ははは…ほんと我ながらだよねー…」

「ん?人がいんのか?」

「あ、ほんとだ…」

瓦礫の隙間の小さな空間に1人の人間が隠れていた。

「…大丈夫ですかー?」

「あ、ありがとうございます…本当に…もうダメかと…」

「そりゃ間に合ってよかったよかった…んじゃそういうことで。」

「ま、待ってください!」

「…何か?」

「私をどうか…どうかギルドまで連れて行っては頂きませんでしょうか?」

「ギルド…ってどこだ?…ミーシェ。」

「私に聞かないでよ…」

「…それはいいですけど俺たちは旅のものでして。ギルドの場所は分かりませんよ?」

「私たちが案内します!」

「そりゃ助かります。俺の名前はユウキです。」

「あ、私はミーシャです。」

「ご、ご丁寧にどうも…私はアイというものです。」

「アイさんね。行きましょう。」

「は、はい!案内します。…こっちです。」



「ユウキさんとミーシャさんはどうしてこの国に?」

「旅の途中によっただけですよ。」

「それは…こんなタイミングで大変でしたね…」

「血の教団…ですよね。」

「はい。血の教団のマリクなる者が巨人に奇妙な術をかけこの国に攻め込ませたのです…アーメルの時と同じように…せめて…せめて勇者様がたどり着くまでは持ちこたえなくては…」

「え?勇者が来るんですか?」

「はい…今日の日没までにはたどり着く予定です。」

そりゃそうか…宝玉回収に来るわな。

「…めんどくせぇ。」

「何か言いました?」

「いえ、別に。」

「?…そうですか?」

「ユウ!…キ!前に巨人が!」

「ユウキさん…」

「心配いりませんよ…プロミネンスブレイズ。」

火属性魔法最上級魔法で5体の巨人を一気にやき尽くした。

「す、すごい…今のは最上級魔法じゃ…」

「…まあ、少しはね。」

「ありがとうございます!」

「いえ…それよりもなぜギルドに向かってるんですか?」

「ギルドは今国民達の拠点になっているんです。そこにSランクの冒険者がいて結界を貼ってくれているんです。…でもその方が怪我を負ってしまいまして…それを癒しに行くのがこの街の聖女であるわたくしの仕事なのです!」

「…なるほど…めんどくせぇなぁ…」

「え?」

「いやなんでも…」

「…そうですか。」

「ミーシャ、マシュマロは一度アイテムボックスの中に入れていいか?」

「え?」

「これは…」

3人の周りには30を超える巨人が集まっていた。

「そんな…」

「マシュマロ、アイテムボックスの中に入ってて?」

「わん!」

「いい子だ…さてと…」

闇属性魔法は使えないしな…ていうかさっき見られた可能性があるから迂闊には使えない…どうするか…大罪魔法で喰らい尽くすのが速いんだけどなぁ…ダメだよな…そうだ。やったことないけどやってみるか。

ユウは左手に風属性魔法を右手に火属性魔法を纏わせる。

「な!ユウキさん。それはまさか…合成魔法?」

あ、これって珍しいんだ…

「…プロミネンス…ハリケーン。」

最上級魔法二つの合成魔法である。

「そんな…あなたは…一体?最上級魔法を二つも…?」

「やべ…やりすぎたかも…」

辺りは火の海と化していた。

上手く魔力を制御し、何とか止めることが出来た。

「ふぅ…何とかなったな…」

「ユ、ユウキ…さん?今のは…?」

「ん?…ああ。…気にしないでください。被害は極力抑えましたから。」

「そ、そうですか…」

うわ…さすがに引かれるか。

「行きましょ?アイさん。」

「ミーシャさん…」

「ユウキは生まれつき魔力が高かったんですよ。」

「そう…ですか…」


崩れた街の中に一つだけ無事な建物を見つけた。

「ここがギルドです。地下に生き残った国民が避難しているはずです。」

「着きましたね。では俺らはここで。」

「さよなら。アイさん。」

「…待ってください!」

「何か?」

「あの…図々しいのは分かっているのですが…出来ればその…わたくしたちと一緒に…この国を守ってはいただけませんか?」

「…はぁ。」

「?」

「な…」

「な?」

なんでいつもこうなるんだよぉ!アーメルの時もそうだ!めんどくさいったらありゃしない!あーヤダヤダ!

「あの…ユウキさん?」

「その…お誘い嬉しいんですけど…俺たちは俺たちのやり方で生き残りますんで。」

「そう…ですか…ず、図々しいこと言ってすいません!その…あなた達が手伝ってくだされば巨人の殲滅もなんとかなると思ったのですが…本当に…ごめんなさい…」

「…うっ…」

「邪魔してすいませんでした…ここまで本当にありがとうございました…」

「…ユウキ?」

「分かりましたよ…」

「え?」

「やりますよ。役に立つかは分かりませんが。」

「ほ、本当ですか!?」

「…はい。案内してください。」

「ありがとうございます!みんな喜んでくれると思います!」

「…そうですか。」



〜ユウとミーシェのもはや念話に近いアイコンタクトでの会話〜

(ねえ、どういうつもりなの?)

(仕方ねえだろ…あんな顔されちゃ。)

(あーー!浮気だぁ!)

(ち、ちげえよ!あそこで引いたら男がすたるだろ?)

(とか言って下心丸出しだったくせに!)

(違うっつってんだろ?それに…こっちの方が情報も集めやすいから都合がよかったんだよ。)

(ホントかなぁ?)

(…ケーキに加えてアイスクリームも買ってやるから。)

(約束ね!)

(ああ…)



…チョロ。



ギルドの中はみんな疲弊しきった顔で避難所のような状態になっていた。

「せ、聖女様だ…」

「聖女様!」

「聖女様が来たぞー!」

「遅くなってごめんなさい。…怪我をされているSランク冒険者のコリンさんはどこですか?」

「聖女様。」

「あなたがギルドマスターですか?」

「はい。ここまでは何もありませんでしたか?」

「はい…こちらの二人が守ってくださったので…」

「そちらの方は?」

「ユウキさんとミーシャさんです。先程会ってここまで護衛してくださいました。腕は確かです。協力してくれるそうなので連れてきました。」

「…そうですか。コリンはここです。」

そこには魔道士風の男が横たわっていた。

「せ、聖女…様…」

「よく頑張りましたね。もう大丈夫です。…ハイヒール。」

「…すげえ傷が塞がっていくぞ。…ミーシャ?」

「…あれぐらい私もできるもん。」

「…言っておくがあの人に気があるわけじゃないからな?」

「…どうだか!」

「はぁ…後で話…聞いてやるから。」

「!…うん。」

コリンが起き上がった。

「もう大丈夫です!ありがとうございます。聖女様。」

「良かったです。」

「…そちらの二人は?」

「あ、俺達は旅をしているものでして…ユウキと言うものです。」

「ミーシャです。」

「大丈夫ですよ。このお二人はとてもお強いんですよ?」

「…そうですか。では結界を貼り直しましょう。」

「あ、その事なんですけど…」

ミーシャが手を挙げた。

「何か?ミーシャさん。」

「コリンさんが貼っているのはコリンさんが貼れる最大の結界ですか?」

「…はい。そうですが…」

「なら私に任せてくれませんか?」

「何を…」

「いいからいいから。ね?コリンさん。」

「あ、ああ。」

「ディバインシールド。」

「な!この魔法は…結界魔法最上級魔法ではないですか!」

「えへへ…まあ…」

「これなら当分は安全ですね…」

「は、はい…」

「…このあとの事ですが…ギルドマスター。」

「はい。勇者は順調にここへ向かっています。来るのは2グループの勇者です。天城様が率いるグループと小宮様が率いるグループです。」

ん?あの二人って同じグループだった気が…

「そうですか…血の教団は彼らに任せるとして…巨人の討伐をしたいと思うのです。」

「そんな!無茶です!」

「大丈夫です。こちらにいるユウキさんは先程30体の巨人をわたくしの目の前で倒してみせました。」

「さ、30体も!?そんな…馬鹿な…」

「いえ、この目で確かに見ました。ユウキさんとわたくし達が力を合わせれば何とかなるはずです!」

「…分かりました。信じますよ…ユウキさん、聖女様。」

「はい。」

「…勝手に話が進んでいるようだがひとついいか?」

「ユウキさん?」

「巨人を倒すのは別にいいけど…あんたら邪魔だからここで待っててくんね?」

「な、何を…」

「俺の魔法だとあんたら巻き込んじまいそうなんだよね〜。」

「…た、確かに…」

「ちょっと行ってくるから待っててくれ。ミーシャ。」

「う、うん。」

「あ、ちょっと…」

「心配しないでください。大丈夫ですから。」

そう言ってユウキはギルドを出ていった。




「さてと…めんどくせえなぁ!」

「ユウが引き受けたんでしょ…」

「わかったよ…やればいいんだろ?やれば。」

「サクッとやっちゃいなよ。」

「はいよ…これを打ってみたかった…」

「あれやるの?」

「ああ…離れてろよ…」

ユウの周りでとてつもない魔力が渦巻いた。

「行くぜ…」

するとそこにアイがギルドから出てきた。

「ユウキさん!」

「エクスプロージョン!」

ドゴオオオオン!

「きゃあああ!…これは?」

「あ、アイさん。」

「ミーシャさん…これは?」

「ギルドの前に巨人が集まってたから…ユウキが一掃したの。」

「ひゃ、100体はいましたよ?!」

「ユウキにかかれば1体も100体も変わらないよ。」

「す、すごい…こんなに…強いだなんて…」

「さてと…もう出てきても大丈夫だ。」

「は、はい…」



勇者side

天城が率いるグループと小宮が率いるグループは無事ギリースにたどり着いた。

「どうなってるんだ?巨人なんて…いないじゃないか。」

このふたつのグループは表上では同じグループである。しかしダンジョンでの1件で実質は小宮、江ノ島、松山のグループと天城、橘のグループに別れている。

「よ、よくぞ…よくぞおいでいただきました…勇者様。」

「あなたは?」

「私はこの国のギルドマスターをやっているものです。」

「巨人は?どこにいるのですか?」

「巨人はわたくしたちの手で殲滅しました。勇者様には血の教団の相手をしてもらいたいのです。」

「巨人を殲滅?一体誰が…」

「立ち話はなんです。ギルドまでいらしてください。」

「はい。」

「…どうなってるのかしら?」

「強い冒険者でも居たのかな?」

「そうだな。この街にはSランクの冒険者ないるらしいからな。」

「詳しいね。小宮くん。」

「一応調べたからね。」

そのまま一行はギルドに到着した。

「ここだけは壊れていないんですね…」

「はい。避難所にするために結界を貼ったのです。」

「なるほど…それにしてもよく出来た結界だ。」

「ここによった恐らく結界術士の旅人の方が貼ってくださったのです。」

「すごいな…これは。」

「…ええ。よく出来てる。」

そのまま一行は中に入った。

「久しぶりだな。天城、橘、松山、小宮。…江ノ島。」

「え?」

「…なんで…」

「お前は…」

「生きてたのか?」

「ゆ、ゆ、ゆ…優…くん?」

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腹下したせいで1人異世界転移に遅れてしまったんですが けん玉マスター @sasaki1012

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