魔女の迷宮 B11 - 1

クザワは協会から派遣された、このダンジョンの管理者だと言った。

このダンジョンには危険すぎて封印された《地下11階》があり、あのモンスターはそこから出てきたものだというのだ。

凍結封印という最上位の封印措置がされていたのだが、何故かそれが解除されている、その調査を私たちにお願いしたいとのこと。

そういうことで私たちは、まだ誰も攻略していないフロアに足を踏み入れることになった。


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地下11階での戦いは熾烈を極めていた。

出るわ出るわ、最上位モンスターのオンパレード。デーモンやらドラゴンやらのメジャーどころから、幻獣あり機械あり、と思えばどんな図鑑にも載っていない完全な新種がポッと出てきたりする。

これは手に負えなくて封印されるのも仕方ない。


対して私たちは、そんなモンスターたちをちぎっては投げちぎっては投げの大暴れ。本来の戦闘スタイルに戻った私とマキは並みいる強敵をばったばったと打ち倒していった。

久々の全力戦闘であるのと、しばらく役割を交代していたおかげでコンビネーションもスムーズになり戦闘のバリエーションも増えている。


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「よし、これで封印石も4つ目だね。」

例の、水晶玉から足がたくさん生えたモンスターから青いクリスタルを回収する。

最初の奴が蜘蛛の足で、それから鳥の足、蛸の足、猿の足の奴が出てきた。何を考えたらあんな生物のデザインになるのか、それとも単なる偶然で生まれたのか。できたらもう逢いたくない。


それで、この封印石というのが11階の凍結封印の要で、異変の原因はこいつが奪われたせい、ということらしい

「じゃあ、これを元に戻せば解決ってことですか?」

「そう簡単にはいかないな。こいつを持ち出した犯人を捕まえなきゃ。――なあ、そうだろうアンタ!」


戦いの最中に転がり出ていた広間、その中心部に問いかけると、ゆらりと空間が歪み、1人の女性が現れた。


地下11階に降りてからずっと視線は感じていたんだ。そいつはモンスターが私達を始末するのを待っていたようだけど、一番強かったモンスターが倒されたことで諦めたのか、ついにその姿を現した。

その姿はゾッとするほど美しい。黒いフードの奥からでも分かる芸術品のような顔立ち。それでいて尋常な存在ではない、少なくとも明らかに人間ではないことが直感的にわかる。

その表情から読み取れる感情は……歓喜だ。その女は狂わしいほどの歓喜に満ち満ちていた。


「もういいの、こんな場所はもうどうでもいいのよ、だって取り戻したんですもん。わたし取り戻したんですもん。」

その姿に似合わぬ少女のような声で、弾むように喋る。しかしそのプレッシャーは凄まじく、周囲がビリビリと振動している。

その頭上に、ふわりと浮かぶ球体があった。


「凄い、とんでもない魔力です、あの玉は……」

本当にとてつもない力を感じる。あれは魔女の宝玉だとでも言うのだろうか?語り継がれている伝説では魔女と共に砕かれたって話だったけど、他にもあったのか再生したのか。まさか100年も経って伝説の続きが始まるなんて思いもしなかった。

とにかくあれを使わせてはいけない、私は一気に距離を詰め、斬りかかった。合わせてマキの呪文も着弾する。


しかし、何の手ごたえもなくその姿はふわりと掻き消え、代わりに強力な魔力を纏った嵐が室内に吹き荒れる。そして数秒後にその嵐が去ると、そこには半透明の姿をした巨大なゴーストが浮かんでいた。


―ダンジョンにはボスが居る―、それは伝説の中、昔話の中だけのハズだった。しかし今、私たちの目の前にいるのはまさしくこのダンジョンの主と呼べるものだ。

ダンジョンの主を打ち倒し英雄となるか、人知れず散るか。

最後の戦いが始まろうとしていた。

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