夜明け

 * * *

 ろうそくの光が自身のろうに吞まれた。

 背後から差し込んだ光に思わず目を細めた。

「早いものだ。もう朝が来た」

 瞬間手にしたファイルを勢い良く閉じる。

 ――パン!

 良い音がした。

「丁度良い。これで一章も終わりだし、少し休憩しよう。またろうそくを持って同じ時間にここに集合、良いね?」

「それで終わりですか?」

 前髪くんの声が心なしか震えているように聞こえる。

「終わりだよ?」

 そんな彼の動揺を気にせず一歩が微笑む。

「本当に?」

「一章はね」

「ケッ! そんなんじゃ何も分かんねぇよ! 現時点では事件は迷宮入り、容疑者も増えて、死体の謎も何にも消化されてない! オマケに事件は強制終了!? 頭イカれてんのか!!」

 茶髪(チンピラ)くんが乱暴に頭をかく。

「まあまあ、そうは言っても一つ確かな事は分かっただろう?」

「あ……」

……」

 また微笑んだ。

 どうやら当たりのようだ。

「じゃあ、私がRoylottで、こいつがJoseph?」

「こいつってゆーな!!」

「正解。君の名前はRoylott、そいつの名前はJosephだ」

「人の話を聞け!!」

「まあまあ落ち着き給えよ青年。一つ分かったんだから良かったじゃないか。しかもかなり怪しい役じゃないか、良かったね」

「嫌だよ!? 俺がこんなのだなんて!」

 暴れ回るJoseph。もう何を言っても聞きそうにないのでそこら辺に放置しておく。

「そうですか……私はRoylott、なんですね」

「まあ、まず間違いないね」

「……」

 大分ショックを受けているようだ。

 そんな彼の肩に一歩は優しく手を置いた。

「大丈夫。君達は今からでも変われる。もう君達は足りないものを持っているんだから」

「……、……変われますか」

「勿論。その為には全てを知らなければならない。逃げずに立ち向かうんだ」

「……」

「出来るかい?」

「……やってみます」

「その意気だ」

 一歩の柔らかな笑みにRoylottもつられて笑みを零した。

 そんな彼らの空気はお構いなしに一通り暴れたJosephが寄ってくる。

「そういやお前は

「……? どういう事かな?」

「だって俺らの名前はファイルにあったその怪しい二人と特徴が一致してるって事で分かったんだろ? お前もその大輝って奴と瓜二つじゃないか」

「……」

「どうなんだ? そこんとこ」

「……いずれ分かるよ」

 後方にあるドアへ腹を向けながら言った為、彼の表情は良く分からなかった。

 しかし、その背に何か哀愁が漂っているように見えた。


「僕はあいつとの約束を果たしているだけだからね」


「……」

「第二章の前にこれまでの復習はしっかりとしておくんだよ。これから忙しくなるからね」

 日は完全に上がった。

 部屋の外に喧騒が戻っていく。


 何故だかこの大量の光を久し振りに直視したような気がしてRoylottは目を細めた。


(第一章 完)

(第二章へつづく)

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