ロケテされていたゲーム

アーカーシャチャンネル

本編

 西暦二〇二〇年、海外のイースポーツ拡散具合からして日本は大幅に遅れをとっていた時代の事である。

様々なジャンルのゲームが日本ではブレイクしているが、その中でもARゲームの広がり具合は――お察しください。

「数日前にロケテストを行っていたのは間違いないのだが――?」

 ある男性は、県内某所にあるアミューズメント施設にあった筺体を指さしていた。

目の前にはロケテストで稼働していた物とは全く違う外装になっている事に対し、彼は疑問に思ったと言う。

ここ最近になって話題になっているARゲーム、そのひとつであるファンタジーブレード(仮タイトル)というゲームのロケテストが行われていたというのだ。

しかし、該当する筺体は存在しない。そればかりか――周囲のギャラリーも『まとめサイトとか都市伝説に引っかかった』と言うばかりで相手にする気がないようである。

「このゲームじゃない。一体、何が起きたのか」

 彼は違うゲームタイトルに変更されている事に違和感を持つ。しかも、このゲームのジャンルはリズムゲームだ。

ロケテストされていたのはベルトスクロールアクションのような系統のはずである。ロケテストの場合、反応がなければ中止もあり得るが――ネット上で話題の機種を撤去する理由が何処にあるのか?

案の定だが、このニュースはネット上で話題になり、承認欲求欲しさにネット上で真実を確かめずに拡散する状態が続いた。

これに関しては許可を得ての撮影との事だが――様々な部分で疑問が浮かぶような箇所は多い。本当にジャンルはそれで正しいのか――という点でも。



 都市伝説の噂を聞き、女性バーチャルゲーマーが施設に姿を見せる。

彼女は電車で来たらしいのだが、それにしては服装が――明らかに周囲と違っているのが分かるだろう。

『皆さん、今回は出張プレイになります! その場所は――県内の某アミューズメント施設です!』

『特にアポは取っていないので――事後承諾ですかねぇ、今回のケースは』

 黒髪のツインテール、マジックテープ式スニーカー、むっちりラインが目立つ青をベースとした白ラインのインナースーツ――と言う姿のバーチャルゲーマーだった。

映し出されている姿は、むっちり体型だがアイドル系の衣装となっていたので――配信とリアルでは違う姿で表示されているのだろう。

ある意味でもこのシステム自体が都市伝説かもしれない。まるで、市自体がゲームとタイアップしているかのような状態であるが――これ自体が宣伝と疑う視聴者だっている。

『とにかく潜入したいと思います。こちらでは、特にコスプレイヤーでも普通に入店できるので――』

 彼女の言う事は正しいようで、周囲にはコスプレイヤーが数人いるように見えた。さすがに顔から上はプライバシー的な事情であまり映していないようだが。

『あれでしょうか――丁度、入口近くにありましたね。都市伝説サイト通りです』

 確かに該当する筺体は違うジャンルの作品に変更されているが、形状自体は特に変わった様子がない。俗に言うガワ変えか?

しかし、筺体に貼り付けられているインストカードを見て――ある疑問を持つ事になった。

それは――都市伝説は閲覧数やアフィリエイト稼ぎのために建てられた偽者のサイトだったのである。俗に言うフェイクニュースだろう。

『そう言う事らしいですね。都市伝説サイトは、どうやらアンチ勢力によるコンテンツ炎上を狙ったフェイクニュースだったと』

『皆さんも数十年前に流行ったようなチェーンメールみたいに恐怖で情報を拡散せず、真実を確かめる勇気を持つべきです!』

 彼女の配信で事の真相を知ったユーザーは、今回の件で都市伝説等に依存して嫌な事があっても『都市伝説の仕業』と責任転嫁するような時代は終わったのだ。

全ての情報を足で稼ぎ、目で真実を確かめる――何時の時代でもネット情報ばかりに頼り切っていると、こうしたブーメランが飛んでくる事になる。

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