キャプテン・ミニーとリッキータ・コンティーの大航海時代 エルドラドの秘宝 ~"il dado è tratto!"~
Pigafetta
第1話〖勅命 そしてリッキータ・コンティーとの出逢い〗
【この物語はハーフフィクションです。
事実と創作が入り交じってます。
また、時代背景が中世後期ヨーロッパなので、残虐性のある暴力、及び宗教の話は避けて通れません。
予め御了承下さい。
尚、途中の※は、注釈です。
文末に解説します】
かつてジュリオ・チェーザレ(ユリウス・カエサル)ローマ終身独裁官はこう言った。
«'eatur,' inquit, 'quo deorum ostenta et inimicorum iniquitas uocat. alea jacta est,' inquit.»
(さあ進もう。
神々の示現と卑劣な政敵が呼んでいる方へ。
賽は投げられた)
【もう帰還不能限界点を越してしまったので、最後までやるしかない】
………………………時はユリウス暦1521年。
【※1】
これは、マゼラン艦隊のヴィクトリア号乗船員達18人(ホァン・セバスティアン・エルカーノやアントニオ・ピガフェッタ等)が、世界初の世界一周航海をし、欧州に帰還して来る途中の話である。
【※2】
この年、マルティン・ルテーロ(マルティン・ルター)が、95か条の論題を書いた文書をヴィッテンベルク城教会の門扉に貼り出し意見(質問状)を提示してから5年が経過した。
活版印刷の技術も進み、ラテン語のみならずドイツ語訳、バレンシア語訳等の聖書も一般的に読まれる様になって来た頃の事であった。
【※3】
イタリア半島のナポリ王国は、スパーニャ王国(イスパニア王国・スペイン)から派遣されしピエトロ・パーネ総督(副王)が治めていた。
【※4】
ピエトロ総督は、スペインハプスブルク家の血縁者であった。
【※5】
4月27日。
ナポリ港の元首宮殿にて、ピエトロ総督の前にカピターノ(キャプテン)、ミンニ・ロッサ・トポリーナが謁見していた。
【※6】
ピエトロ総督👑『ドンナ アッミラーリョ(女提督)=ミンニ・ロッサ・トポリーナよ。
よく来てくれた!
礼を申す。』
ミンニ・ロッサ🐭👒『これは総督閣下、私目等に勿体無き御言葉。
畏れ入ります。』
ピエトロ総督は頬杖をつきながらニヤリと微笑み、ミンニ・ロッサに言った。
ピエトロ総督👑『謙遜するでないミンニ・ロッサよ。
卿の活躍ぶり、聞き及んでおる。
そこで此方の腕を見込んで是非頼みたい事があるのだ。
やってくれるな?』
ミンニ・ロッサ🐭👒『何なりと仰せを』
ピエトロ総督👑『うむ。
新大陸のグランデ・モンターニャ・ディ・トゥオニ(大雷山⚡🗻)の噂は聞いておるな?』
ミンニ・ロッサ🐭👒『はい。
存じております。
彼の地の鉱山にエルドラドの秘宝が秘められているとの由』
ピエトロ総督👑『その通りだ。
その謎を解き明かして秘宝を入手し、その威厳を持ってして、分裂状態にあるこのイタリアに再びローマ帝国時代の栄光を取り戻し、統合出来る切っ掛けを作って欲しい!
ミンニ・ロッサ・トポリーナに告ぐ!
新大陸はグランデ・モンターニャ・ディ・トゥオニへ赴き、秘宝エルドラドを発見せよ!
此方にしか出来ぬ事だ!!』
【※7】
ミンニ・ロッサ🐭👒『勅命、賜りまして御座います。
必ずや、秘宝エルドラドを発見し持ち帰り、総督閣下の御前に献上致しましょう』
ピエトロ総督👑『おおっ!!
おおおお、よくぞ受けてくれたミンニ提督!
卿が見事この勅命を達成した暁には、新たな爵位を贈ろう』
ミンニ・ロッサ🐭👒『ははっ!!
有り難き幸せに御座います。
誠心誠意、全力を尽くします!』
ピエトロ総督『うむ。
なお、補佐役として航海士、リッキータ・コンティーを此方の船に乗船させよう。
………………あまり役に立たぬやも知れぬが』
ミンニ・ロッサ🐭👒『畏れながらピエトロ総督閣下。
リッキータ・コンティーは、先祖代々船乗りの誇り高きリグリア族末裔。
素晴らしき潜在能力を秘めた航海士と聞き及んでおります。
居れば必ずや役に立ちましょう。
私奴の船の客将副官に任命しとう御座います』
【※8】
ピエトロ総督『う………………うむ………そうか。
そこまで申すならば、最早何も言うまい。
期待しておるぞ』
ミンニ・ロッサ🐭👒『ははっ!』
こうして、ミンニ・ロッサはリッキータ・コンティーと出逢った。
リッキータ「紅きミニーこと、ミンニ・ロッサ・トポリーナ提督でやすね。
お初にお目にかかりやす。
リッキータ・コンティーと申しやす。
以後お見知り置きを」
ミンニ・ロッサ🐭👒『貴方がリッキータね。
先祖代々船乗りのリグリア族末裔39歳。
サバイバル経験豊富で、ベテランの航海士。
操艦技術を得意とする』
リッキータ「これは御見逸れしやした!よく御存知で」
ミンニ・ロッサ🐭👒『確か貴方はジェノヴァ出身だったかしら?』
リッキータ「さいでがす!」
ミンニ・ロッサ🐭👒『実はあたしもジェノヴァ出身なのよ』
リッキータ「なんと!
奇遇でげすね。
道理でナポリ訛りが無いと思いやした」
ミンニ・ロッサ🐭👒『貴方には私の船の副官として乗船して貰うわね。
あ、そうそう。
貴方の事は今後、リッキーと呼ばせて貰うわね。
宜しく頼むわね!
リッキー!』
リッキータ「承知しやした、カピターノ・ジェネラーレ(総指揮官殿)!」
🐭👒『そんな堅苦しい言い方は抜きよ(笑)。
(クスクス)………アッミラーリョ(提督)って呼んでね』
リッキータ「宜しく頼むぜ!
アッミラーリョ(提督)!」
斯(か)くして、ミンニ・ロッサ・トポリーナは航海士リッキータ・コンティーと出会い合流し、客将である彼を今航海の副官に任命した。
その後、二人が元首宮殿内から城外へと移動している時であった。
ミンニ・ロッサは、ふと立ち止まり、壁の方に体を向けた。リッキータは数歩過ぎてからそれに気付き、振り返って言った。
リッキータ「どうしやした?
何を見ておいでですか?
提督」
ミンニ・ロッサ🐭👒『絵画よ』
リッキータがミンニ・ロッサの閲覧している絵画に目をやると、そこにはクリストフォロ・コロンボ(クリストファー・コロンブス)の肖像画が描かれてあった。
【※9】
リッキータ「ああ。
コロンボ提督の肖像画でやすね。
新大陸への航路を発見した名提督。
そういえば、コロンボ提督も元々は我々と同じイタリア・ジェノヴァ出身でしたね。
後にスパーニャ王国の前身、カスティーリャ王国に亡命しやしたが」
【※10】
ミンニ・ロッサ🐭👒『………………………………………そうね』
だが、ミンニ・ロッサがクリストフォロ・コロンボの肖像画に目をやったのはそれが理由ではなかった。
ミンニ・ロッサが思い出していたのは、約30年前のコロンボにまつわる、ある話だったのだ。それは………
………………………第2話へ続く
第1話 注釈解説
【※1】
▷ユリウス暦………ローマ終身独裁官ユリウス・カエサルにより紀元前45年1月1日から実施された、1年を365.25日とする太陽暦である。
4年に一度閏年があり一年365日の年を3年経た後、閏年を366日とするものである。
元々は帝政ローマの暦であるが、キリスト教宗派に広く受け継がれ、欧州の基本的な暦となった。
ローマ教皇グレゴリウス13世が1582年、ユリウス暦に換えて、太陽年との誤差を修正したグレゴリオ暦を制定・実施した。
その理由は、ユリウス暦のまま1280年経つと、実際の太陽年とは10日もずれるからであった。
【※2】
▷ヴィクトリア号乗船員達18人………スペインに戻ってきたマゼラン艦隊乗組員の人数は、正確には22名であった。
しかし、その内4人は航海途中の島や大陸地から乗り込んだ者達であったので、初の世界一周を果たした人物としてはカウントされなかった。
【※3】
▷活版印刷………ヨーロッパでは1445年頃にヨハネス・グーテンベルクが活版印刷術を発明したとされる。
欧州初の活版印刷書籍は聖書であった。
宗教改革が起きた背景には、一般人が安い金額で聖書を手に入れられる様になった影響も大きい。
▷バレンシア語の聖書………この頃のスペイン語版聖書は、カスティーリャ語よりも寧ろバレンシア語の方が多かった。
【※4】
▷イタリア語のスペインはSpagnaと書いてスパーニャと発音する。
スペイン語のスペインはEspañaと書いてエスパーニャと発音する。
因みにポルトガル語ではEspanhaと書いてスペイン語と同じエスパーニャと発音するが、抑揚が微妙に違う。
ラテン語ではHispaniamと書いてイスパーニャと発音する。
イスパニアという言葉は紀元前205年頃、スペインがローマの属州だった時にイベリア半島を呼称して付けられた名称。
【※5】
▷スペイン・ハプスブルク家では、一族内での近親婚が繰り返された。
また、厳格なカトリック政策で、プロテスタントや正教会の王侯との結婚は不可能。
ヨーロッパ屈指の名門であり、家格の低い諸侯との結婚は出来なかった。
【※6】
▷ミンニ・ロッサ・トポリーナ………架空の人物。
イタリアのジェノヴァ出身。
赤い帽子がトレードマーク。
紅きミニーの異名を取る。
ピサ大学首席卒業者。
40ヶ国語を話せる超天才女提督。
元・交易商提督で、現・冒険家提督。
信仰はキリスト教カトリックであるが、その他の宗派も研究している。
因みにピサ大学の後輩に地動説を唱え宗教裁判によって終身刑を言い渡されたガリレオ・ガリレイがいる。
【※7】
▷同時、新大陸には黄金や宝石に纏わる伝説の類いが沢山あった。
エルドラドの秘宝はその中の一つである。
【※8】
▷リグリア族………先史時代からスペイン及びイタリア北西部にかけて居住していた先住民族。
ギリシアの植民者によって知られ、頑健且つ勇猛な民族とされた。
初期鉄器文明を残しているが、その起源の詳細は不明。
【※9】
▷英:クリストファー・コロンブス(コロンバスとも)
伊:クリストフォロ・コロンボ
西:クリストバル・コロン
葡:クリストヴァオン・コロンボ
各国によってコロンブスの名の言い方が違う。
【※10】
▷クリストファー・コロンブスは学者並に知識人であった為、本当は古ポーランドの王族の末裔であるとか、新大陸に興国を目論んだユダヤ人説等、様々な俗説が存在するが、何(いず)れも信憑性はない。
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