よる

 僕らは、この海苔がしなっとなり冷えきったおにぎりのような残念な「日常」に捕まっている。しかも不幸なことにそいつはケイドロの警官役が最強で逃げようとしてもすぐ捕まってしまう。そうして僕らを檻の中にしまって苦難する様子を一人上から眺めている。そして時折僕らの悪足掻きを嗤って捻り潰す。

 神は死んだというのなら、その座に代わって座ったのは日常なのだろう。誰も救わず、奇跡も起こさず、全くシェイクスピア的じゃない悲劇を「現実」とかいう名目で僕らに与える。正しく外道。腐れ日常。

 そんな世界で、少しだけ許された平穏。現実が薄れ日常と切り離される時間。死んだ神様の置き土産として、それは僕らに贈られた。

 人はその時間を色々なことに使う。


 例えば、将来を思ったり。


 例えば、「今日」を振り返ってみたり。


 例えば、お菓子を美味しいと思ったり。


 ゆったりとした時間が過ぎて。


 例えば、不安にかられたり。


 例えば、自分を傷つけてみたり。


 例えば、うずくまって恐怖と闘ったり。


 色々なものがぐちゃぐちゃに混ざっちゃって。泣きそうになって、けどそれを黙って許してくれる。


 貴方に、何度救われただろう。

 貴方と、何回一緒に過ごしただろう。

 貴方と、あと何回一緒に居れるだろう。


 そんなこと知らんと言わんばかりに、貴方は今日も僕らの意識を奪うのだろう。憎めないヤツめ。


 護ってくれて、一緒にいてくれてありがとう、「夜」

 これからもよろしく。






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