第14話 鳥か! 飛行機か!? なんじゃあれかっこ悪!!

 周りにいた生存者たちは空高く舞い上がるその姿の彼を見てこう戸惑う。

「あれはなんだ!?」

「鳥か?」

「飛行機か?」

「いや、違う!」

 そう、目の前にはタンクトップ姿のおっさんが腰あたりで手をパタパタさせていた!

「「「「なんじゃあれかっこ悪!」」」」

 泣きそう。

 ゴッサムはうんざりしている。

 エースの顔自体はイケメンだし、非の打ち所は全くないのだが、空の飛び方が異様にださい。

 あれじゃまるで変態だ。

 空を飛ばれては最も困る存在がサーバントな彼は、皆の前に召喚などしたくなかった。

 それが修行をしていなかった理由だ。

 太一がゴッサムの後ろからそっと手を置いて、

「なんか、悪かったな……」

「謝らないでくれ!」

「すまん、ぶっ……」

「笑うなコラァ!」

 エースがキモい飛行体制から着陸してどっしりと構える。

 タンクトップがやたらと筋肉を強調している。

 ぴったりとタイトなのも気持ちが悪い。

 エースは皆の前に立つと、

「無事だったかい?」

 太一は一応お礼を言った。

「どうも。助かりました」

「おや? 君は見ない顔だね? 新入生かい?」

「いいえ、チームエクレツェアのメンバーです」

「……そうか……助かってよかったね」

 疑問に思った。キモいはずのエースがエクレツェアの名前を出しただけで急に戸惑ったのだ。

 この手の人間にはあまり見ない反応だった。

 ゴッサムはエースに指示を出す。

「あの隕石を止めてくれ!」

「了解!」

 エースは凄まじい速度で飛び出していった。

 ゴッサムは遠くの彼の姿を覆い隠すように立つと、

「みんな! まだ敵はいるはずだ! 見てないでさっさと行け!」

 しかし、サモントレーナーたちはサーバントが全滅していた。

 巨大蜘蛛使いが首を振って、

「無理だって、俺たちの敵う相手じゃなかった」

「そうは言ってもだな……」

 隕石が見事大学のドームに直撃。そこはよしきが演説を行っている場所だ。

 ゴッサムは困った。確かに、サーバントのいない彼らに何ができるのだろうか?

 だが、彼はこういう時こう考えるのだ、エースの考え方は違うはずだ、と。

「君たち! いいかい? たとえサーバントが無くたって、頭を使って戦えばいいのさ! 肉体線は私たちに任せて、君たちは頭を撃たれたその子の手当て、他の人の避難にあたってくれ!」

「わ、わかりました!」

 誰かが返事をすると、サーバントを失ったものたちはその場の太一とゴッサムを残して大学に戻っていた。


 どかああん


 文字で表すとこんなものだが、大学の方からしたのははるかに凄まじい轟音だった。

 太一とゴッサムが振り返ると、大学には隕石が思いっきり直撃していた。

「「思いっきり直撃とるぅ!」」

 エースはふわふわと帰ってきてゴッサムに、

「ごめん、無理だったわ」

「ごめんで済むかクソサーバント!」

「主人がそんな口を聞くんじゃない!」

「どうするんだよあれ!」

「仕方ないだろ! 新聞記者の仕事でいそがし——」

「それ以上言ったら訴えられるからやめてくれ!」

 ゴッサムは改めて学校の方を見ると青ざめてうなだれた。

「ああ……大学のみんなが……」

 だが、太一がそれを止めて、

「見ろよ、あれ。多分大丈夫だ」

 ダームに食い込んだ隕石をはじき出してできたのが詠嘆のエクレツェア。彼はまたドームに引っ込むと、とてつもない火力のエネルギー砲で隕石を一掃し始めていた。

 エースは静かな顔で、

「詠嘆のエクレツェアか」

 彼が隕石を止めに入った時、詠嘆のエクレツェアの気配を感じて、引き返してきたのは言うまでもなかった。

 彼なら隕石もどうにかできると考えてだ。

 それよりも、上空で確認した他の敵勢が厄介と判断。作戦を練るためにゴッサムのもとに帰ったが、なぜかよしきのことを話す気にはなれなかった。


 その時、一報が入る。


——ミズノです。大学の北東と北西が攻め込まれています——

——直ちに防衛してください——


 太一は首を振って、

「そこって確か俺たちの仲間が警護している場所だ!」

 その通りで、サカ鬼と龍矢がそれぞれ担当しているはずの場所だ。

 ゴッサムとエースは顔をあわせると、

「ゴッサムよ、チームエクレツェアの人間でも対処しかねるとすると、敵はかなり強いぞ」

「そうらしい、あんたは北西に向かってくれ!」

「わかった、お前はその隣の坊やともう一つを頼む」

 そう言い残してエースはキモい姿勢で飛んで行ってしまった。

「エクレツェアのものと共に戦うことになろとは」

 飛びながらそう呟く。

「だが、今は仲間ならそれでいい」

 しかし、その言葉は状況によれば敵対するという意味でもあった。

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