第48話 ハンター道中

 漆黒の究極防具を着けた俺は、美しい銀の装備を身につけたエルフを従え、颯爽と村を歩いた。道行く人々がことごとく、驚いた様子で振り返る。


 そのオーラに後ずさりする村人もいれば、カッコよさにハァと溜息をつく村娘もいた。


「もうすっかり有名人ニャね、光一。ハンター道中ニャ」


 レベッカはニヤニヤしながら、周りに愛想を振りまいた。


「この宣伝効果は計り知れないニャ、その装備で商品の販促もしないかニャ?」

「やめろよレベッカ、恥ずかしい」

「とか言って~。ホントに恥ずかしいならこんな仰々しいもの、着ながら帰らないニャろ」

 

 確かに、この猫の言う通りだ。

 せっかく大金出して買った装備だ。


 見せびらかしたいというのが、人間というものだろう。

 大きい買い物は、人を浮き立たせる。

 

 だがこれを手に入れる為に、俺達が稼いだゴールドはほとんど消し飛んでしまった。ここから本気で、クエストを成功させなければならない。


 背水の陣である。


「さて光一。防具も揃ったし、これからどうするニャか」

「取り合えず一回家に帰る。物資を整えてから出発だ」 


「お、お買いものニャか! お安くするニャよ!」

「アイテムはもう要らない、前に買ったのがシコタマ残ってる。それに、もう所持金はスッカラカンだろ」


 フィーリアが小さくなった金貨袋を確認した。


「もう契約金くらいしか、払えそうにありませんですぅ」

「ってことは、次クエストに失敗したらまたピンチか」


「店を出せば、すぐ稼げるニャ」

「借金の返済期限は大丈夫なのかよ」

「ぐっ」

 

 レベッカの顔がスーっと青ざめた。

 おいおいまさか……。


「忘れてたニャ、商売に夢中になって」

「嘘だろ……!? お前の借金返済のために頑張ってんのに」


「今すぐ出発ニャ!」

「解ってるって、一回アッチの世界に帰らせてくれ」


「何故ニャ!?」

「そりゃ、またあのクソマズイ携帯食料を食わないといけないんだから。対策するんだよ」

 

 村で色々試したが、クエストに必要なスタミナをつける為には、やはり携帯食料でないといけないらしい。

 ホットケーキでスタミナがつくなら、どれだけ良いか。


「解ったニャ、待ってるニャよ!」

「逃げないで下さいよ、マスター!」

 

 猫娘とエルフが、悲壮感を漂わせながら、俺をアチラの世界へ送り出した。

 ……はぁ、疲れる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る