エピローグ 四千年の残花

 現代と呼ばれる時代よりも遥か昔を想起させる文明水準の次元。そこにある某村の大衆食堂は夕暮れ時、木のジョッキに注がれた酒を飲み交わす男どもで溢れていた。そこへ、真っ赤な血で衣服を染めた二人の少女が入ってきた。一人はこの世界そのものであり全てを司る白い少女。もう一人は白い少女によって世界そのものへと存在を変えた久遠ミーア。 

 二人は席に着き、白い少女はラム肉の料理と鳥の丸焼きを、久遠ミーアは魚料理とサラダを注文した。

 料理の注文が込み合っているのか、注文してからしばらくたっても料理は運ばれてこない。久遠ミーアは血で汚れた衣服のポケットから携帯電話を取り出して弄りながら料理が運ばれてくるのを待っていた。その向かいで白い少女が頬杖を突きながら彼女を見つめていた。

「君はいつもそのストラップを見つめているよね」

 携帯を弄るふりをして星型のストラップを見ていたミーアが顔を少女に向けた。

「あたしにとってこれは大切なものだから」

 それにこれを見ていればいつでも二人のことを思い出せるから、と小さく付け足した。

「君たちの感じる時間であれから一体どれくらいたったんだろうか。生半可な精神では崩壊してしまうほどだろうね。それでも君は自分というものを見失わず、一途に想いを持ち続けている。私はそれがとても嬉しいね」

 白い少女は口角を上げていやらしく続けた。

「いつか君が、この私という世界ケージから飛び立つのを心から楽しみにしているよ」

「あっそ」

 少女の言葉は本当に嬉しそうで身勝手な無邪気さを振りまいた。それとは対照的にミーアは淡白で軽い言葉を返すだけで、再び携帯の下で揺れるストラップを見つめた。

 この会話の後も、料理が運ばれてくることはしばらくなかった。ミーアはその間、ずっとストラップを見つめながら待っていた。

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Everlasting Desire ~運命の鳥籠と少女の想い~ 胴長ルカ @rukadounaga

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