第5話選択肢と選択と

自分の部屋に戻った俺は、とりあえずベッドに横たわり考えごとに耽っていた。


最初はかなり戸惑っていた俺だが、状況をつかめてくると異常な程すんなりと

現状を受け入れることが出来た。まるで何かそう強制されているかのように。


あの人を母さんと呼ぶことにも違和感を抱かなくなったし、妹の舞に関しても

妹と認識しているし、不思議と愛情だって感じるのだ。


何なんだろうな今の状況って・・・


そんな風にだらけていると、それは突然起こった。


周りの風景がぴたりと止まったのだ。


俺以外に動いているものはないので、そういう意味ではさっきから止まっているんだが、そうじゃないのだ。


音も空気すら止まっていると何故かそう感じるのだ。


すると目の前にふとウィンドウが宙に浮いてきた。


それは俺にとって見慣れすぎたものだった。そう選択肢というものだった。


目の前に浮いているそれには2つの選択肢があった。


A このまま家でのんびりと過ごす


B 外へ出かける


突然の出来事に驚いたが、どちらかを選べということなのだろう。


むしろ選ばないとずっとこのままのような気がする・・・


俺はとりあえず、どうやって選択するのか分からなかったで指で触ってみることにした。


ここまで色々とあり一人で考えたかった俺は、もちろんBの選択肢を選んだ。


すると周りの空気が動き出し、先ほどまでの雰囲気が戻ってきた。


そして俺は、選択肢について考え始め一つの仮説に行き着いた。


そう。この世界はゲームの中なのではないか?ということだ。


美人な母親が居て、美少女といって差し支えのない妹が俺にになついている。

そして、隣には幼馴染の女の子が住んでいて、その子も俺を気に入っている。


なんてテンプレな美少女ゲーム的設定だろうか。


美少女ゲームを愛してやまない俺なら、すぐに思いつきそうなものだが

あまりにもリアルすぎて、そんなことは思いもしなかった。


そこにきて選択肢の登場だ。もう答えに近い仮説じゃないだろうか?


今まで忘れていたが、この世界に来る前に起動したあのゲーム・・・


思い返してみたら不思議な点ばかりだ。


そしてあの説明書


『あの青春をもう一度をプレイする皆様へ


このたびは、あの青春をもう一度をご購入いただきありがとうございます。


本作品の仕様に疑問をもたれた方がほとんどだと思いますが


これは決して手抜きで作られたソフトではないことをまず此処に宣言いたします。


プレイしたいただければ、この意味を十分にご理解いただけるかと思いますので


まずは、インストールが終了しましたらアイコンをクリックしてください。


では、皆様に良いご縁があることを、また、良き結末が待っていることを


スタッフ一同願っております。』


怪しすぎるだろ・・・。


この世界がゲームで、選択肢が出てきたということは何かしらのイベントがこの後起こるはずなのだ。


そんなことを考えていると


ピンポーン


とインターフォンの音が微かに聞こえ、下から俺を呼ぶ母さんの声が聞こえてきた。


「恭一さーん!優衣ちゃんがきてくれたわよ!」


このタイミングで女の子が俺を訪ねてくるか・・・


俺はとりあえず部屋から出て玄関へと足を運んだ。


するとそこにいたのは、黒髪を綺麗に背中くらいまで伸ばし、たれ目で優しい表情の美少女が立っていた。


「恭一くん。学校休んでるって聞いて心配だから午後から早退してきちゃった。」


と可愛く微笑んだ。


あぁ確か幼馴染は優衣って子だっけか?幼馴染との初対面イベントのフラグだったってことか。


そのとき俺は、この世界がゲームだと仮定から確信に変わったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ようこそ美少女ゲームの世界へ @akaganegaku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ