第二話 もんもん

 中学生になっていた…バカはそのままに中二病という名のオプションまで付けて…


「もんもんって知ってる?」


 なんでも元陸上の短距離走の選手で足がとんでもなく早い。

 そのフォームは独特で両肘を水平にあげ、上下に揺らしながら走るのだという。

「そんな恰好で走れるのか?」

 実際、真似て走ってみても、早く走れるとは思えない。

「それで、もん…もん…と言いながら走って追いかけてくるんだって、自転車でも逃げ切るのがやっとって速さらしい」


「行くか…」

 港沿いの道路に現れるという謎の走者『もんもん』その存在の有無を確認するために今、あの時のメンバーが再集結する。

 若干、メンバー変更はあったのは仕方ないことだ。


 夕方、部活をサボり集結するメンバー、自転車に跨り道路を意味も無く往復する日々…。

「変速付のヤツがさ~囮にならないとさ~」

 現れないまま無駄に日が暮れる。


「あそこの家、窓に鉄格子がハマってるじゃん、アレが『もんもん』の家らしいよ」


 どこからか得た、あやふやな情報を元に、家の周りを徘徊する。

 窓を叩いてみたりする(迷惑)

 ピンポンダッシュを試みる。

 コンタクト取りたい…その一心で迷惑行為を繰り返した日々。


「出てきたらどうする?」

「とりあえず追いかけられるだろ…疲れたところを…」

「ところを…」

「………」

 誰も考えてなかった。

 捕獲するのか?

 人を?

 退治するのか?

 人を?

 

 後に知ったのだが…その家は、空家だったらしい。


 思うに、『もんもん』とは陸上で夢破れた男の末路を語った話し、だったのかもしれない、挫折して心に病を負った狂人『もんもん』


 海岸公園でジュースを飲みながら談笑した夏…忘れない思い出。

 中二の夏。

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地方都市伝説 桜雪 @sakurayuki

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