第49話 ブログを本に?

 私は『無料体験は一か月になります』の声に甘えて、しばらく先生のお家に料理を習いにに行くことにした。

 魚のホイル焼きのようにメニューは増えて行くが、正直パートに出て、主婦業もやって、料理教室にも行ってとやることが多い。……しっかりした奥さんなら、きっともっと上手くやるのだろうけれど、こんな掛け持ちでもいっぱいいっぱいだ、だいたい、主婦が簡単だと言ったのは夫ではないけれど、結婚する前たくさん満員電車でぶつかられた男の人が、私には笑うしかなかった男女の差が、その声が、『女は楽だ』と言っている気がする。実際は、もちろんそんなことはない。

 私も智美さんみたいになりたい、お家を綺麗にして、ちゃんと収入があって、なんでもできる。そうしたら誰も私を地味な花だとは言わなくなる?それでも若いころ、夫は私の地味さが好きだと言った、私は、誰にでも言うんじゃないの?と小さく笑っていたけれど。

 知っている料理の手順もあったりして、ブログにも料理教室の料理が少し並んだ。がんばる私を誰かに見て欲しい、夫だけじゃない?わからない、ちやほやされたいわけではないけれど……私は少し地味なのを気にはしていたのだ。

 そんなころ、ある昼下がり、ブログに登録しているメールアドレスに一通のメールが来ていた。

 「件名:はじめまして!○○出版社です!

 本文:いつも楽しく読ませていただいています。さて私○○出版社の鈴木浩二と言います。

 本題ですが、こちらの料理ブログを書籍化させていただけないでしょうか?お時間よろしい時にでも連絡下さい。」

 私は最初、ブログサービスのよくあるリボ払いとかの広告かと思って何も考えず捨てる気だった。でもなんとはなしに読んだそれに広告の意図を組むのは私には難しかったのだ。

 だから、私はつい夫に相談もなしにそれに返事だけした。「この日ならお時間あります」といったとても簡単なものだけれど、なんだかすごい冒険をしている気がしたものだった。

 私が本を出す?

 たしかにそんな話は聞いたことがあるけれど……。

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