羽虫

僕はここにいると声をあげても


誰もいない

泣いてみせても

誰もいない

手を伸ばしても


薄暗い部屋の片隅で

誰かの手を乞い続けて

言葉は壁に跳ね返って

僕の鼓膜だけを揺らして


羽ばたいている音がするんだ

飛び続ける為の翼じゃなくて


それはまるで羽虫のような

光に触れ命尽きるような


羽ばたいている音がするんだ


(初出:2019/3/31)

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