アナーキー☆セブン 【Episode:7】

〔7〕



 目の前に広がっていたのは、黒を基調にした、青く光を帯びた空間だった。

 横を見れば無事にアナーキー☆セブン達が並んでいる。何とか鉄壁の空間に入りこめた事に安堵し、俺はニヤリとした。


「まずはスタート地点に立てたな」


 四人が嬉しそうに顔を綻ばせて、ハイタッチなんかを交わしはじめる。ケンがこちらに掌を向けたので、仕方なく軽く叩き返す。


「だが、問題はここからだぞ」


 俺の言葉に、全員が表情を引き締めて頷いた。俺達が視線をやった先には、真っ白な細長いゲートが伸びている。おまけに、そこには球体のbotが浮遊しており、小さな穴からはレイザー光線が青く伸びていた。

 おそらくあの光線に触れると、自分の情報をタッチされた挙げ句に弾き返され、えげつない強制終了を食らうか……もしくは、他の空間に拘束されるかだろう。

 俺は、道具箱からパッチ専用銃を取り出す。

 センサー部分に、パッチを飛ばして貼りつけていくしかないが、その前に人の動きを感知して全ての球体が反応するはずだ……思わず胸の前で腕を組みつつ、低く唸る。


「なあ、オッサン……それ、パッチ専用の銃か?」


 ケンが俺の手許を凝視しながら言い、俺は肩を竦めながら頷く。


「ああ。道具はあるが、他のbotが反応する前に撃って光線を停めないとならない。その為には、千手観音みたいに腕が沢山ある奴か、早撃ち名人じゃないと無理だな」

「……ユナならいけると思う」


 ケンの言葉に、俺は瞠目しつつ大人しそうな彼女に目を向ける。ユナは、相変わらず人見知り特有の、はにかんだような面持ちで、こっくりと頷いてみせる。


「ユナ……それは本当か?」


 俺は彼女と視線を合わせるように、膝をつく。彼女は「大丈夫」と頷いてみせ、着ていた制服からレオタード姿へと変換する。

 彼女は少し身体を屈めて、踊り終わったバレエダンサーのようにレヴェランスしてみせる。


「ユナのママは、世界的に有名なバレエダンサーで、パパも舞踏家なのよ」


 ナギサの言葉に、なるほどね、と相槌を打つ。俺はユナにパッチ専用銃を差し出した。


「撃ち方は分かるか?」

「照準を合わせて、引き金を引く」

「その通り。脅かすつもりはないが、あの光線に触れると、きみのスピリットが危険な事になる。それでもやるか?」


 ユナの大きな瞳が一瞬、揺らいだが、すぐさま強い光が浮かび、彼女はこっくりと頷いてみせた。見た目とは裏腹に、芯の強い子なのかもしれない。

 ユナは練習するように専用銃を構えていたが、ふとこちらを見上げた。


「あの……もう一丁、あれば貸してもらえますか?」

「あ、ああ……勿論、良いが……」


 ぎょっとしながらも道具箱から、もう一丁取り出して、彼女に差し出す。彼女は両手に専用銃を握りしめ、皆に微かに微笑む。


「じゃあ、行ってきます」


 そうユナがダンサー特有の軽やかな足取りでゲートの入り口に立ち、途端に浮遊していた球体のbotが彼女の存在に気づいて、一斉にセンサー部分を向ける。

 彼女は一つ呼吸を整えてからゲートへと一歩、踏み出した。

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