第22話苦く忘れたい過去

・小話・

なんと気づいたら100PVこえているじゃないですか!

とても嬉しいです。これからもみてください。目指せ1000PV


2019年になって初の更新ですが、

今年もどうか獄炎の業火をよろしくお願いします。


今回は皆に正月といったら何か聞いてきました。


氷河火炎:初詣。お年玉。

お年玉は貯金する派。

雨風雫:お年玉。お餅。

正月太りを気にしている…

野原花樹:年越し蕎麦。お年玉。

年越し蕎麦に天ぷらは乗せ

ない派。

疾風:鳥なのでそんな風習が無い。


ほとんどがお年玉を期待しているそうでした。あの年になるともうお年玉をもらえなくなる年が近いから、欲しいんだろう。


今回の小話はここまで、本編をお楽しみ下さい。


お年玉。何円もらえるかな…


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺は気づいたらテントの中にいた。

あたりはすっかり暗くなっていて、テントの中で、狭苦しそうに皆が寝ていた。


「ここは?皆寝てる。俺は一体何があったんだ?・・・ダメだ思い出せない。」


ふと、俺の脳裏を響喜の顔が横切った。

急に息が荒くなった。全身に力が入る。


響喜が死んだ。俺が弱いから死んだ。


頭の中が響喜を自分の無力で殺してしまった。最愛の親友を殺してしまった。という罪悪感で一杯になった。


心の中にまた、あの時の炎が音をたてて燃え始めた。


あの時と一緒だ。なんだろうこの感覚

は・・・


炎は俺を包もうとした。しかし、炎に包まれる瞬間。その一瞬。

何かが手に触れた。雫の手だ。雫の手は俺の手をしっかりと握っている。

力が抜けたのか、俺を包もうとした炎は、小さくなって消えていった。


なぜ起きたのか分からないが、ぱっちりとした二重の目は、寝起きのせいか目が少し細かった。でも握られた手は力強く、温かい。


「大丈夫?顔が赤いよ。」


俺の顔色に疑問を持った雫が、首を傾げて聞いてきた。

雫は俺の目をジッと瞬きする事なく見つめている。


「ううん。大丈夫だよ。」


俺はそっけなく返した。

もし、雫がさっき手を触れてくれなければまた、さっきの炎に飲まれていただろう。



突然溢れてきた。目からこぼれてきた。涙だ。あの時の止めど無く溢れてくる涙とは全然違う。悲しいのに嬉しい、安心できる温かい涙だ。


思えば、あの時も助けてくれたのも雫だった。(あの時とは、第3話のあの男からの手紙を見たあとに、家から出ようとした時のこと。)


俺はあったことを全て語った。

16星にあったこと。

響喜が自分のせいで死んでしまったこと。

泣きながら全てを包み隠さずに話した。


人前で泣いたのは、いつぐらいだろう?高校3年になっていながら、雫の前で大泣きした。

そんな俺を、雫は優しくだきしめてくれた。とても温かくて、いい香りがした。俺は抱かれたまま、眠ってしまった・・・


次の日。俺は皆に響喜のことを全て話した。俺が話している間、皆はずっと静かに真剣な表情で聞いてくれた。


「・・・そこで俺から提案がある。

先にいっておく、嫌なら断ってくれてもいい。・・・修行をしないか。

今の実力じゃあ、響喜の様にまた誰かが傷つく。そんな事はもう起こってほしく無い。だから力を蓄える。だからっ・・・」


「いいよ。やろう。やるよね皆!」


「勿論。当然のだよ。折角ここまで旅をしてきたのに、ここで終わるなんてあり得ないから。」


「そうだよ!雫ちゃんと花樹ちゃんの言うとおりだよ。ここでやめる理由なんて無いからね。」


だからのらを言う前に、雫が話を切ってきた。その雫の顔からは、何故か必死の表情がうかがえた。


ぶっちゃけ、この提案に賛成してくれないと思っていた。

でも、皆がここまで自分を信じてくれて、ここまでついて来てくれていて、

とても嬉しかった。


こんな感覚になったのはいつぐらいだろう・・・

そんな言葉と、苦く忘れたい過去が脳裏をよぎった。


☆★☆★


おじいちゃんが、こおり属性最強の「氷河期」のスキルという事で、とても誇り高い。そんな氷河家に三男として産まれた俺は、自分のスキルが嫌いだった。

氷河家は代々、氷属性のスキルを使っていたのだが、俺は火属性のスキルだった。


「おい、火炎!スキル使ってみろよ。お前のスキルは火。この偉大な、氷河家を馬鹿にしている。これでも喰らえ!」


「ハッハッハッ。また泣いてやがる。火属性のスキルなんだろう?氷を溶かしてみろよ。ほらほら。やってみろよ!」


「お前はこの偉大な氷河家の恥さらしだ!」


そう言って兄や姉達は、俺に氷をぶつけてきた。俺はそれをずっと泣きながら耐えるだけだった。抵抗しようとは、考えなかった。抵抗すれば、もっと攻撃されるという恐怖だけがあった。


俺のスキルが火属性だという事で、氷属性のスキルを使う兄や姉達から、毎日いじめられていた。

毎日生傷絶えない日々。俺は小さな頃からこの家族が大っ嫌いになった。


しかしそんな俺に、手を差し伸べてくれる人もいた。

それは母と、おじいちゃん。そして由紀だった。


由紀は、自分も氷属性のスキルでは無い為、いじめられていた俺に同情したのか、兄や姉達とは違い母と一緒に傷の手当をしてくれていた。


おじいちゃんは、一度だけ俺に本心を語ってくれた。


「すまんな。火炎。ワシのせいでお前にここまでの傷を負わせてしまって。ワシがこのスキルのせいだから…」


六歳の俺はこの言葉の意味は、分からなかった。ただおじいちゃんの本音を聞く事しかしなかった。


母は、毎日いじめられていた俺を、ずっと慰めてくれていた。

傷の手当をしてくれながら母は、よくこんな事を言ってくれていた。


「火炎。お前はそのままでいいんだよ。自分を責める必要なんてない。」


この言葉が、いじめられていた時の俺の唯一の生きがいだった。


しかし、俺は聞いてしまった…


ある日の夜。俺は喉が渇いて、飲み物を取りに行こうと、一階のリビングまで行った。その途中に母と父の部屋がある。そこを通り過ぎる時に、異様な声を聞いてしまった。


「貴様は、この氷河家を馬鹿にしているのか。あの野郎を甘やかしやがって!」


「おやめ下さい。あの子は悪く無いんです。許して下さい。」


何か硬い物を使っていた、叩いている音がこの会話と共に聞こえた。

その度に母は、「あの子は悪く無いんです。」と必死に俺を庇ってくれた。


ドア越しに俺は震えた。喉の渇きすらも忘れた。

ただ、自分がいる事で、おじいちゃんや母に迷惑をかけていると思った。


その出来事の後から俺は、家族全員から一歩距離をおく様になった…


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