第21話黒幕は動き出した…

・小話・

前回はまさかの響喜が死んでしまうという悲しい展開になりましたね。


しかし、実はこの展開については、小説を書く前から考えていた展開で、響喜というキャラは、思いついた時からこの展開になるのは、こいつだと決めていました。


あと、一行開ける事にしました。


今回の小話はここまで本編をお楽しみください。


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「うああああああ」


目からは涙がこぼれ落ちた。

流れる涙を止める事ができなかった。

止めようとしなかった。

ただただ頭の中で響喜の死んだときの姿がフラッシュバックする。

敵がいるという事すらも忘れて泣いた。


「何だそいつのパワーは?しかし先ほど言った通り、俺には攻撃が通じない。不意打ちで少し食らったが、血液で振動を殺した。だから、脳にはダメージがほとんどない。」


男は頭を押さえながら、立ち上がった。

フラフラとよろけながらも、マスクをつけ直し、頭を押さえるのをやめた。


「一撃必殺。諸刃の剣と言ったところか。かわいそうだな。家族も友人も

殺された。もう戦うな諦めろ。

ボスから全員殺せと言われている。

だが、お前の命だけで許してやる。さあ諦めろ。」


俺の命だけで皆助かるんだ...

ごめんな響喜。これで俺もそっちにいけるぜ...


諦めた。何も考えたくなかった。

感じれなかった。

ただ心の奥底には響喜を殺してしまったという、悲しい悲しい吹かずとも消えゆく小さな罪悪感の炎が静かに燃えていた。


もう俺もこの火も死ぬんだ...

そう思った。


男はマスクを取り、響喜を抱えたまま絶望の表情を隠さず出したような俺の顔。男はその顔をジックリと見たあと、手を合わせて拝んでから、水で作り出した戦斧を使い、思いっきり首を目掛けて振り下ろされた...


その一瞬。真黒だった心に、雫、花樹

疾風の顔が浮かんだ。


今まで小さく弱々しかった炎が、音を出しだんだん強く大きくなっていった。


ここで死んだら全部無になる。

ここでは終われない!


首を目掛けて振り下ろされたその戦斧は、首に当たる寸前。その数mmで

男は手を止めた。


近づくだけで、焼け焦げてしまうような途轍もない炎属性のスキル。


男の手が震えた。

戦斧の重さで震えているのか、スキルの凄さで震えているのか男自身もわからなかった。

しかし一つわかったのは、このスキルは火炎から出ているという事。


俺は意識を戻し、ゆっくりと立ち上がった。

心の中でだんだんと強く大きくなって

いく止まらない怒りの炎はやがて俺自身を包み込んだ。


戦斧の刃の部分を掴みゆっくりと立ち上がってくる。

男より弱かった火炎のスキルは今では男の数百倍。


「何だ!お前は!」


男は何か恐ろしいものでもみたような、震え上がった声を上げた。


火炎の後ろには、火で作られた巨人の像のようなものが現れていた。

天神の羽衣を羽織り、火の太刀を持った巨人は静かに男を見下した。


「お前は。お前だけは、ぜってぇに

許さねぇ!」


刀が鞘から抜かれた。それと同時に

巨人も鞘から太刀を抜く。

火炎の動きと同時に同じ動きをする。

一瞬も外れない。狂わない。


これは火炎自身だ。と男は感じた。


火炎が、刀の持っている右手を体に巻きつけるような形で、左側に右手を回した。

と同時に、巨人も同じ動きをした。

「炎帝・火炎斬」


[炎帝・火炎斬(えんてい・かえんざん)炎の巨人を出しているときに出せる技。これ以上は説明できません!

理由は後に分かります。]


ヤバイ、ワープをしてボスにこの状況を説明しなくては。

そう思い男は、太刀が当たる寸前にギリギリでワープをした。


当たらなかった太刀は、周囲を焼き切ってしまった。


体の力が抜けた。と同時に後ろの巨人も消えた。

風に吹かれた砂のように、火の粉となって消えていった。

俺はそのまま、響喜の上に横たわって倒れた。


「ぼぼぼ、ボス大変だ!」


男は広く暗い廊下を叫びながら、ボスの元へ向かった。


「落ち着け。16星たるもの、落ち着きが感じんだ。どうした、事情を話してみろ。」


さっきの廊下とは比べものにならない広さの部屋に一人。紅く背の高い椅子に座っていた火炎と同じ年ぐらいの少年の落ち着いた口調で、男をなだめた。


「すみません。命令どうりとは行きませんでしたが、響喜のガキは倒せました。しかし肝心の火炎の方は、響喜を倒したあと、おぞましいスキルになり、後ろから謎の巨人が現れて、殺しそこねました。」


男は片膝を床につけて、下を向きながら状況を報告した。


それをみた少年は、ゆっくりとした足取りで男の横を通り過ぎて、廊下に向かった。


男は許してもらったとホッとした。

のも束の間。


「餌だ。食え。」


そう言って、少年はリモコンのようなもののボタンを押した。

すると、広い部屋の壁が三重の扉になり、横、縦、横と二つに別れて開いた。その先には広い空間が現れた。

明かりは一つもなく、暗い空間に二つ、紅く光るものがじっと男を見つめた。


その光は、だんだんと男に近づいてくる。

向かってくるにつれ、だんだんと光の正体が照らされていく。

その光の正体は熊の目だった。

紅く光る殺意に満ちた目。

すべてを壊すような剛腕。爪。

この広い部屋ですら小さく見えるような巨体。


男は青ざめて、焦りながら言った。


「こここ、今回は失敗はしししましたが、次こそは成功させます。なのでどうかどどどどうか、命だけおおおお助けを。」


「任務の出来ない雑魚なんていらないんだよ。お前の代わりなんてたくさんいるさ。16星の中でも、最弱なお前の代わりなんてな。」


少年は男を見る事すらせずに、一言言ってその場を去った。


「ぐわあああああ」

「ぐるるるがるるる、グワッ!」


部屋は、男の悲鳴と、熊の声が混ざって満ちていた。


廊下を歩きながら、少年は思った。

雑魚とは言ったが、あいつも16星の一人。それを倒せるほどの実力があるのか。もっと強く当たらなければ。


こうして、黒幕は動き出した…


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