第4話 村の消滅

 僕は畑近くの草原で幼馴染のノノと遊んでいた。

 ノノは山でアーマーウルフに襲われたクロベおじさんの娘さん。

 僕と同じで質素な村人の服を着ている。


 ノノは後ろ手に隠していた何かをジャーンと僕に見せてくれる。


 「ニカ、みてみてー。パパがね。アーマーウルフの毛皮の切れ端でお財布作ってくれたんだよ!」

 「うわ!かわいいね!よかったね!」

 「うん!」


 財布の中身は空である。


 「そういえば、僕のスキルって、まだ、見せてないよね?」

 「スキル?」

 「うん。LV10になって新しく覚えたんだ。今から見せてあげるね!」

 「うん!」


 スキル!≪超異次元召喚≫


 ・MP10% タマポチ 使用不可

 ・MP20% ギアメカ 使用不可

 ・MP30% アブソルブ 使用不可

 ・MP40% アドミン 使用不可

 ・MP50% セクレトリ 使用不可


 「あーれー?モンスターがいないからかな?使えないや。」

 「そっか。じゃ!ドレスマッシュルーム探しましょう!」

 「そうだね!」


 ――ドレスマッシュルーム

  物理攻撃無効のモンスター。叩くといい香りを放つ。いい香りは生育条件により違いが出る。


 「あった!こっちにあったよ!!」

 「ありがと!それじゃ使うね!」


 スキル!≪超異次元召喚≫タマポチ!!!


 頭上の空間が大きくひび割れていき、猫と犬が飛び出してくる。


    テシ 

 テシ     テシ

 ワンワン!!にゃんにゃん!!

 テシ  テシ  テシ


 0ダメージ!

 0ダメージ!

 0ダメージ!

 0ダメージ!

 0ダメージ!

 0ダメージ!


 トータル 6ヒット 0ダメージ

 付属効果で攻撃力弱体90%

 ドレスマッシュルーム HP999→999


 ドレスマッシュルームはいい香りを放った。

 リンゴの甘い香りが広がっていく。


 「きゃ-!犬?!猫?!カワイイ!!ね!ね!なでていい?」

 「うん!いいよ!」

 「この子たちに名前あるの?」

 「うーん?タマとポチかな?」

 「たまたまー!」

 にゃんにゃん!!

 「ポチポチー!」

 ワンワン!!


 そこへ猛スピードで騎士の伝達馬スピードホースが走ってくる。

 「総長!目の前に子供が!!このままでは!!」


 僕たちのそばを伝達馬スピードホースが走り抜ける。


 「村ごと助からん・・・・!放っておけ!1秒でも速く知らせねば!スタンピードで都は壊滅する!!!」

 「ぐっ…!!!」


 は!は!と伝達馬スピードホースをかけて騎士たちが見えなくなっていく。その頃にはタマもポチも異次元に帰っていっていた。


 ―― 超異次元召喚魔法Lv2 4/20


 ――スタンピード

  大量に発生したモンスターが狂ったように突き進む現象。


 …

 ズザザッ…

 ズザザッ ズザザッ


 大地や空気、魔力に不気味な振動が混ざり始める。


 「ニカ…わたし、怖いよー。」

 ノノが僕にすがりつつく。


 騎士たちが駆けて来た方角を見ると黒いもやがかかっている。そのもやがすべてモンスターの集まりで出来ているのだと10歳の僕たちでも本能的に理解・・した。

 ノノが、がくがくと震えている。

 「大丈夫!僕がいるよ!」


 村に戻ってみんなに知らせる?モンスターのが僕たちより先に村に…たとえ知らせることができても、あんなにいっぱいのモンスターが村にきたら…僕にできることなんて、いくらスキル覚えてても…

 わらをつかむ気持ちでスキルを使う。


 スキル!≪超異次元召喚≫


 ・MP10% タマポチ 使用不可

 ・MP20% ギアメカ 使用不可

 ・MP30% アブソルブ 使用不可

 ・MP40% アドミン 使用可能

 ・MP50% セクレトリ 使用不可


 お願い!アドミン!!


   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・


 その瞬間、震えていた大地、空気、魔力、音までもが止まり、僕を中心に全てが淡くきらめく白い光に飲まれる。

 遠くに見えていたモンスターたちが作り出すもやの中心に黒い点が浮かび上がり、その一つの黒い点に吸い寄せられるように渦を作り吸い込まれているように見える。

 すべてのもやが消える。


 一律9999999ダメージ!


 付属効果でドロップアイテム自動回収


 ―― 6549201体のモンスターを倒した。

 ―― 超遠距離のため、通常経験値の取得はできなかった。

 ―― 超異次元召喚魔法Lv2 8/20


 段々と白い光が消えていく。


 あ…


 「ありがとうございました!!!!」

 僕が大声で感謝を叫ぶと、世界が優しく微笑んでくれたように思われた。

 「あ、ありがとうございます!!!!」

 ノノも僕に続いて感謝を叫んでくれた、優しい日差しと優しい風が吹く草原で僕たちは何度も何度も感謝を叫び続けた。



 その日の夕食でとうさんとかーさんに今日あったことを話した。


 「僕、今日、もぐもぐ、インベントリ(ものすごく)広がったんだよ!」

 もぐもぐ

 「子供の頃は(ひとつふたつ)成長するからな。」

 「あらあら、よかったわね。」

 「うん。」

 もぐもぐ

 「かーさんのホルモン鍋はうまいな。」

 「ふふふ。昨日いっぱい作った残りですよ。」

 「それでも、おいしいよ!」

 もぐもぐ


 ――アドミン

  超異次元の管理者

   オールオブワン

    100体以上を条件に距離無効の複数体へ一律ダメージを与え、付属効果ですべての・・・・ドロップアイテムをインベントリへ取得する。

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