見目麗しい3兄弟


 エマ様が駆けて行った先には、青髪の長男クリフォードと、同じく青髪の次男ルーク、そして金髪の三男のシリルがいた。


 3人はみな同様の濃紺のスーツを身に纏っており、その荘厳さと言ったらない。


 なにあれ眩しいつらい。


 金色の綺麗なツインテールを揺らしながら兄たちへと駆けていったエマは、今現在、クリフォードの腕の中だ。


「エマ、急に走ったら危ないだろう」


「転んでドレスを駄目にしたら母様が怒るかもよ」


「折角の髪型も台無しになるでしょう」


 クリフォードが片腕で抱いている妹に優しく声を掛ける3人と、それに笑顔で「ごめんなさぁい」と答えるエマ。

 みな一様に整った顔立ちをしており、辺りに居た女性たちがざわめき立つ。


 シーグローヴ家の男性が1人その場に居るだけで華やかになる。と言われるそのシーグローヴ家の息子たちが集まり、愛らしいと評判の妹に何とも優しい笑顔を向けているのだから当たり前だ。


 なんと絵になることか。


 私は前世、この場面のスチルでクリフォードに惚れたのだ。


「あ、シリルお兄さま。お客さまよ」


 エマがクリフォードの腕のなかで私を指差す。

 と、シリルだけでなくクリフォードとルークの視線すらも私に集まった。


「クロエ嬢。お出迎え出来ずにすみません」


「……いえ。とんでもございません。シリル様、本日はお招き頂き有難うございます」


 コテン。と首を傾げたクリフォードとルークに、私は慌ててスカートを少し摘まんで挨拶をした。


「クリフォード様、ルーク様。御初にお目にかかります、クロエ・アッカーソンと申します」


「……ああ、君がシリルの言っていたお嬢さんか。初めまして、クリフォード・シーグローヴだ」


「ルーク・シーグローヴです。宜しく」


 生の推しは、それはそれは眩しくイケメンでした。



* * *



 さて、自宅に帰宅しベッドへとダイブした私は、深いため息とともに今日のお茶会の思い出していた。


 結果を言うと、何も無かった。


 それはもう驚くほど何も無かった。


 挨拶をした後、男性参加者たちは皆で狩猟に行くと言って出掛けていき、残った女性参加者たちでお茶会をした。

 爵位こそ高くは無いが、そこは流石シーグローヴ家。

 見目麗しい3兄弟のいずれも、未だ婚約者すら決まって居ないとなれば、狙うご令嬢はそれなりに多いーーーどころか阿呆みたいに沢山居る。


 お茶会は優雅にお茶を楽しむシーグローヴ家夫人へのおべっか大会だった。


「世の中怖い」


 政略結婚が世の常であるこの世界。乙女ゲームの中とは言え、それはそう言う時代である。媚びを売りに売りまくって良い家に嫁ぐ。最高の旦那を手に入れる。故にお茶会がおべっか大会なのは当たり前なのだ。当たり前だがしかし


「気力削がれるわ」


「……良い感じに疲れてるな」


 ベッドの上でグッタリとしていると、レオナルドがお茶を持ってやって来た。私は片手を上げてそれに答える。


「どうだったんだ。シーグローヴ家は」


「どうもこうも、疲れただけよ」


「……ま、頑張れ」




 最推しへの道は随分と遠いようだ。

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