第4話天使は受け入れられました


「うわああぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ」


 胃腸がもつれるような感覚と尻もち。


「いたたたぁ」


 打った尻をさすり、天使をにらむ。


「もうちょっと丁寧にできないのか」

 言ってしまってはなんだが、少しきつくあたってしまった。


「すみません! マスター。まだ、未熟なうえ不慣れなこともおおく」


 しまったと気付くが、いとおそし。しゅんとした顔立ちは普通の女の子であった。異性と会話するのすら久々であろう俺の心は、反射的にちょっときずついた。


「ああ……わりぃ。ちょっときつく言い過ぎた」


 すっかり大人しくなってしまった天使と目が合い、きょどり始める俺。

 女の子であることも当然ながら、先も述べた通り顔立ちは人形の様に整っており、スレンダーな体系から伸びる腕や脚はまるで作り物の様。実に身長から髪の長さまで、俺の理想と言える存在である。


 そんな完全無欠完成体がいま俺の前にいる。先の事態を省けば、天国にでも来たかのような、夢の中の世界のような、そんなありがたみを噛みしめたいところだ。彼女でもない人物に理想を抱くなど、とうていキモイことこの上ない事だとはわかってはいるものの、気が済むまで妄想を膨らませておこう。

 あえて言おう、私は紳士である。可愛いものに対して可愛いと言う事は、紳士としてあるべき姿であり一般常識である。


「あのー……マスター……修行などや私についてもいろいろとお話ししたいことがあるのですが……」


 キモイ妄想を膨らませるのを一旦やめ、天使に聞き返す。


「あのさ……マスターって呼ぶのやめにしない? なんか気恥ずかしいっていうか、堅苦しいっていうか」


 無論俺の妄想の一部ではない。だってほら、外とか出た時にそんな呼び方じゃ困るだろ。いろいろと。


「はい、かしこまりました。では、どのようにお呼びすれば?」

「名前でいいよ」

「でしたら。智樹さん……」

「ともきでいいよ。みんなそう呼んでいるし」


 あえて変な名前にしてみようかと思ったがやめておこう。トムとか。


「でしたら、私のことはスフレとお呼びください。苗字で呼ばれるのは私としてもあまり好ましくないので」


 ひとまず自己紹介が済んだところで、手を伸ばす。


「じゃ、これからよろしくな! スフレ」


 伸ばした手を握りしめ。目を輝かせたスフレは、可愛い笑顔で。


「はい。これからよろしくお願いします」

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