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 ジャリッ


 ジャリ! ジャリ! ジャリジャリ! ジャリ! ジャリッ!


(ひいぃぃぃぃっ!助けてっ !助けてぇっ!)


 足音は、彼女の近くで止まった。

 急に静かになり、彼女は固まる。

 穴の中に居たのでは少しも様子を知る事が出来ない。

 ここで出来る事と言えば、ただ黙って危険が過ぎて行くのを待つ事だけだ。

 ここで見つかったりしたら終わりだ。

 見つかったら、あの男に何をされるのか?

 考えただけでも恐ろしい……。

 彼女は付き纏う恐怖を振り払う事が出来ずに、そっとそこにうずくまった。

 息を殺し、両手で自身の髪を鷲掴み、顔を歪ませて、土臭い臭いを鼻から吸い込みながら、前後左右、土で囲まれたそこに、日の有る内は、何か別の物が……キラキラと光り輝く眩しいモノが詰まっていた筈の、そこに、今は恐怖が詰め込まれている、深い穴に、体を震わせて彼女はうずくまっている。

(助けてっ! 助けてっ!)

 そう叫びたいけれど、許されない。

 少しでも物音を立てたなら気付かれてしまうから。

 だから、彼女は穴の底で静かに、静かに、そこにいる事しか出来ない。

 隠れんぼするみたいに。鬼が過ぎるのをそっと待つ子供みたいに。

 静かに、このまま時が過ぎるのを待つしか無いのだ。




 どれ位時が過ぎたのか?

 彼女を探して公園の中をさ迷う足音はもう消えていた。

 しかし、油断は出来ないと、彼女はずっと穴の中に潜んでいた。

 彼女の体はもう震えてはいなかった。

 少しずつ、彼女は冷静さを取り戻していた。

(そうだ! ケータイ!)

 彼女は地面に転がっている自分の鞄をそっと手繰り寄せ、スマートフォンを探す。

(有った! これで助けを呼べば!)

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