第2話ひときわ目立つビラ
一応小説家志望の美和子は、今日この日まで漠然と、一般的な小説家志望の学生が辿るであろう『文芸部』に入ろうと考えていたのだけれども、すると貰ったビラの中に、一つだけ異質に目立つビラがあった。
ほとんどの部活やサークルが白黒での印刷のビラである中で、そのビラだけがフルカラーで印刷がなされており、他の部活やサークルと違って、明らかに異質さを放っていた。
「理系……同好会?」
部活の名前は、そう書かれている。美和子は貰った勧誘のビラのその一枚を、じっと見つめていた。
そういえば美和子は大学側の事前説明はきちんと聞いていたが、部活動とサークルの説明は、文芸部以外は興味がなくて軽く聞き流していたし、隣に座っていた愛美はもっと酷く、実際は椅子に座りながら寝ていたのである。
二人ともそんな状態であったから『理系同好会』についての説明があったことすら、二人は完全に忘れていたのであった。
その『理系同好会』のビラには、次のような謳い文句が、書かれていた。
『期末試験の過去問ストックは全部活・サークルの中で一番! 文系の学部・学科で構成されているこの大学で、ひときわ変わったこの部活に、ぜひあなたも入部してみませんか!』
ビラに書かれている謳い文句を読み終えた愛美が、美和子にこう言った。
「ここ、文系学部だけで構成されている大学だよね? なんなの? この『理系同好会』って部活って……どこかおかしくない?」
そう言われてみれば、愛美は正論を言っているな……と美和子は思った。
「理系って一口に言っても、細かく言えば例えば数学があったり、物理学があったり、化学があったり、生物学があったり、場合によっては地学だって、あったりするわけでしょ?」
と、美和子と愛美は顔を合わせる。
「理系って一口に言っても、大まかに分けて今美和子が言った四種類はあるわけでしょ? それを一つの部活が、全部をカバーしているのかな? だとしたらなんかそれもそれで、中途半端な気がしなくもないけど……」
「でも期末試験の過去問が揃っているっていうのは、なんか惹かれるかな?」
「まあ大学の期末試験なんて、ほとんど過去問の使い回しだし、過去問の丸暗記がその授業の単位を決めるようなものだって、私のお姉ちゃんも、そう言っていたからね」
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