神能件2

(さてと……高校生の姿に転生するってどうなるんだろ……)

「……君、……俺君!」

「……」

「!!……良かった……本当に良かった……」

(これは……この女の子は誰か知らないけど、神さまの言うとおり乗り移ったってことか……いやでも髪の色カラフルだな……言葉も分かるけど、口とか動かないな)

(見てみる限り、学校の保健室みたいだけど……じゃあ打ち所悪かったとか、そういうやつか。あっちだって、ちょっと頭打っただけで早死にする事故あったし)

「……」グスグスッ


(……とりあえず泣き止ませないと)

「……だい、じょうぶ?」

「こっちの台詞よ、馬鹿」

「……ばか?」

「馬鹿よ、大馬鹿……」

(……?

ああ、いや、言葉は違うが、こうして喋れるらしい。

……どうしてか、現状痺れて手足が上手く動けないけれど、考えられることは簡単か)

(生まれ直した訳ではなくて、ただ気絶か仮死状態だったこれに俺が入った。だから脳みその言語状態は共有出来てる)


(泣いている子には悪いけど、横の書籍を確認しよう)

(……うん、ちょっと横に小さい文字が見える。

会社の名前だが、異世界の文字に対して自分はそれが認識出来ている。この明解度はネイティブだろう。知識について、脳に損傷は起きていないらしい)


「ねえ、どこか体痛くない?何かお腹空いたりとかないかな……私、頑張るからさ。今先生来ないから……うん、何とか、何とかするから」

(あの女の子は、この男と関係はあるらしいけれど、その記憶は一切ない。生活圏の記憶喪失か。

……まあでも、仮死状態から復活したようなものだから。後遺症このくらいで大丈夫か。

なんか知り合いみたいだし、自分の手柄じゃないから、すごくアレだけど……)


「あのさ」

「何?なんでも言って!」

「……俺、貴方のこと覚えていないんです」



​───────



「それでね、次に私達の教室行くからね」

(記憶喪失のていで進んでいるが、こんなにあっさりするものなのか。

記憶喪失として振舞ったら、この女の子……この体の持ち主の幼馴染みは、多少驚いたけれど、その後の対応が早かった。

最初こそ悲しそうな顔をしていたけど、直ぐに担当教師らしい人を呼んで、何かしら神様の言っていた魔法を使って検査して、今に至っている。そのくらいだ。

こういった自体なら本来療養するべきだろうけれど、神様が言っていた通りRPGらしい。)

(担当教師が来る前に、幼馴染みはステータス、なんて言って俺の今の状態を表示した。

普通のゲームもそうだろう、HPとMPを見ながら、満タンであることを確認して担当教師に説明した。

怪訝な顔をしていたが、ステータスを見せることで納得は行ったらしい)

「良いのかな、授業中に」

「いいのいいの、入学案内の時に慣れてるから!」


(まず、この世界観は何かを例えるにも少し難しい世界背景をしている)

(教室がある。他の教室も見たが、人の見た目とは違う獣のようなものも勉学に取り組んでいる)


「色んな人がいるんだね」

「皆仲良くだからね、いわゆる獣人とか、山奥に住んでいて、戦闘民族でもあったから、スキルでもそういうのを開拓出来るし、お互い成長し会えるから」

「良いところだね」

「昔は奴隷とか一杯問題あったし、解決していないところはあるけど、もっとすごくよくなるから」


(奴隷制を廃止しているとしたら、時代も段階的に進んでいる。

勿論、そうであるから現代的な考えだ、とかはまだ判断出来ないけど、ある程度発展はしているらしい。

現代的な要素だと衛生環境だろうか。先程いた保健室……もとい治療室も、出入りが多いにも関わらず、違和感のないような心地良さがあった)

(自分の価値観ではあるが違和感がない、という点ではここは現代的に見える)


「ここ私達の教室ね……声は小さく……」ガラッ

(皆が勉強していて……黒板の字は異世界の言葉だけどわからなくは無いな。タイムリーだが、今奴隷制についてのことか……えーっと、奴隷に酷い扱いを行う現状に心を痛めた……何かの偉い人?が、スピーチしたのか)

『government of the people, by the country, for the god』

(……ん?)

(……これこう言う意味で言われていたのか?)


「俺君?」

「(でもこんなのおかしいって言うと空気乱すな)……名言ってさ、結構端折ってるから分かりにくいね」

「俺君この言葉有名だよ~、個人の卑しい感情が悲劇を産むのであれば、国が統制して国民一丸となって政治するってこと!」

「なるほど」

(……こういう細かいところは流石に合わないよな……)

(あれ直訳すると人民の国家による神様のための政治か、まあ信仰が悪いわけでみないし、そういう感じか)

(なんかチラホラ後ろ向いてるのいるけど、この持ち主の友人とかだろうな。

……それもそれで自分が横取りしたみたいで罪悪感あるけど)


「……あれ?」

「どうしたの?」

「俺と君が一人空いているとして、まだ一人休みの子とかいるんだね」

「……ああ、うん、あの子はサボりがちだから」

(ただこういう自由……というか我儘になるのはある意味では自由は保証されてる)

「次食堂行こっか」

「ああ、うん」

(ちょっと色々引っかかるけど……まあギャップのようなものか)


─────


「食堂はね、一番安い物で20マニーくらい……えっと、分かるっけ」

「度量衡も……ごめん……」


(それほどステータスは、ここでは客観的なデータとして扱われているらしい。

効率的と言えば効率的だ、幼馴染みはステータスを見たあと直ぐにしまった。だから一般人でも目視できるようにレイアウトも設計されている)

「ううん、大丈夫……ああでも安いけどすごく美味しいの、ちょっと待ってね」

「いやいいって、俺なんかの為に」

「そういうこと言わないの、ステータスじゃ元気だけど一応怪我人だからね!」

(……まあ、話しかけているのは俺じゃなくて幼馴染みだった体だろうし、言葉に甘えておくか)


「うん、じゃあ待ってる」

「じゃあ窓際に座ろ、すっごく眺めがいいから」

「分かった」


(幼馴染みの言う通り待つけど……それはそれで暇だな)

(……ステータスか、確か神様は能力は大体使えるって言ったはず……とりあえず幼馴染みの思い出そう)

「……ステータス」

ヴォン

「まじか……」

(本当に出てきた……幼馴染が直ぐに消してたし全体的に見て起こっかな)


『俺 Lv25 平民

HP 100/100

MP 40/40

スキル

ファイアーボール

ファイアートルネード

状態異常 なし ◤』

(ゲームっぽいけど……あっここクリックすると人体の異常とか分かるのか。幼馴染みがサッとしていたのも分かるな)

(それでここは……へえ、スキルの当たりは属性事に分類して、会得しやすいやつを図で示してるのか、めちゃくちゃ分かりやすいな。

それにスキル習得までの推奨パターンも掲載されてる……これ……アローダイヤグラムか。こういうの分かりやすくていいな)


(……いや楽しんでるけど、レベルおかしいな、25?)

(……ああでも、幼馴染みが平静になったのも無理はないか、高レベルだと疑われるもんな)


「……」

『◤』

(なんだこのいかにもめくってくれと言わんばかりのやつ……いやでも直接触れるなら触れるだろうけど……まあ触ってみるか)

『ベリベリベリ』

(サウンドエフェクトいる?)

『俺 1億Lv 物好きさんめ

HP 1億

MP 1億

スキル

全部使えるぞ、最悪あれやりたいこれやりたいって考えときゃなんとかなるから。』


(……この神様まじで大丈夫かな)

(まあ、俺にしか見れない仕様って感じなら別にいいか……いきなりカンストじゃびっくりするしな……)

(というかめちゃくちゃ適当だな……もう少し一覧化すればいいのに)


『スキル

待ってくれ、ちょっとプログラム組んでくる』

(えっ聞こえてるんです?)

『神様はそう暇じゃないがつい暇だったものでな……』

(結局暇では)

(……別に今の住処悪くないんで良いですよ。平民って着いてるならこのくらいでいいだろうし。すみません、多分やりがいないと思います)

『まあでも、何かあるか分からないからな。私は気にせず青春を謳歌してくれ』

(借り物の体にちょっと抵抗はありますが……あっごめんなさい、幼馴染が来ますんで切ります)


「おまたせ~」

「ありがとう……結構ボリュームあるね」

「でしょ?これ一番安くても人気あってね、私も結構頼んじゃうかも」

「へえ……」

(見た目は普通のカツレツ……)

「日本みたいだね」

「え?」

「いや……変わった料理だね」

「揚げ物だけど、そんなに重ねて使うってことしないしね」

(……ああなるほど、確かにカツの原点であるフランス料理だと、揚げ油にバターを入れるからそれなりに高くなる……食べてみよう)


「……美味っ」

「でしょ、ソース何がいい?ちょっと色々持ってきたんだけど」

(美味いけど……これ何の肉だ?というかこれ一種類の肉……でもなくて、整形肉?チキンナゲットをそのまま油で揚げた感じか)

(……そもそもチキンナゲットのカツレツを食度に出すのか……?)


「……でもこれ、ごめん、覚えてないんだけど、どんな肉?」

「それね、御供体よ」

「ごくうたい」

「ほら、悪い人を捕まえて、神様にお詫びをするでしょ。そしたら食べるじゃない、神様のものとなりました。許されて綺麗な体を食べましょって」


(……え?)


(……マジで言っているのか?)

「へえ、えっと」

「えっとね、神様って私達を作ってくれたけど、魔物とかいたじゃない。だからそれに影響されて悪い人が出てきて、そんな人達を清めるのよ」

(いや、ごめんマジで理解できない……つまり、マジで)

「その、悪い人だったんだね」

「そう、だけど美味しいでしょ……まあでも本当は、節約出来るからって皆分かってるけど」

(……吐き出すな)

(良いか、平穏になりたければ、今出そうとしている物を吐き出すな)

(これは宗教観の問題だ。俺が口出していい問題じゃない)


(……でもさっき、皆よく食べてるって言ったよな)

(じゃあ、幼馴染みみたいに知った上でこれを食べているのもいる)

(……どんな世界観だよここ……駄目だ吐き出しちゃ駄目だ)

(……というかちょっと違和感あるけど、病人にこんな消化の悪いもの食わせるのか?)


「……もしかしてまだ体調優れない?」

「ああ……そうかも」

「じゃあ……うん、おばさん達にちょっとタッパーとかないか聞いてみるね。ファイアーすれば全然美味しいから!大丈夫、今日中に食べたら綺麗になるから」


『言っておくが』

(脳内で話しかけないでくれ、猛烈に恨みたくなる)

『それは済まない。私はこんなことは一度も指示はしていない。だが信じるのは団結の必要不可欠要素だろう』

(他人事みたいに言ってるけど神様の国じゃないか)

『元よりこんなものにした覚えはない……人の子は、神様に完全に見てもらっている世界が良いのか』

(そうは言ってない)

『それでは人の子らが不服する。人の子は、私のお気に入りになってしまうからな』

(……今もそうなのか)

『いや、でもこの生活も悪くは無いだろう』


『楽しんでくれよ。そろそろ一石投じてみたかったんだ』

(最悪だ……)

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