【多分アップするかもしれない】新作のやつ

【前書き】

多分近々「神様によって異世界チート転生したけど、どいつもこいつも様子がおかしいし無双どころじゃない」みたいな感じの話を書きそうなので保管。でも主人公がなろうじゃなくなったな……



【登場人物】

主人公

高級車に体当たりする感じで死亡した。偶然にもそこに乗っていた神様によって、転生先では学生の姿かつその世界でのスキルの最高ランク、レベルもカンスト状態で始められるようになる。

非常に卑屈かつ自己肯定力が低い。自罰的な考えであり、能力は最大値まで引き上げられたため、誰かが傷付く際は率先して身代わりになる。

これは優しさや正義、と言うよりも「自分はその方が性に合っている」である。神様曰く「自罰的な考えは親に対してすらも攻撃出来なかった為、本来は極度に人に甘い」と称されている。

死亡直前まで引きこもっていたが、親との関係は劣悪であるのにも関わらず憎悪よりも「自分が死ぬかどうか」を重点に置いている等精神が追い込まれていた。

兄弟、という言葉に非常に抵抗感を抱いている。経緯から類稀な能力を手に入れてはいるが、その使い方に悩み、日々試行錯誤を続けている。

転生後、魂の「入れ物」の今までの人生に興味を持っている。奇妙な学生生活を送りながらも、彼が得られなかったであろう「何か」を探し求めるべく、外の世界の冒険を志願している。


ヒロイン

人狼。不吉の象徴とされる枯葉色の髪と日没の瞳を持っている。学園及び世界で推奨される魔法を使わず、自前の腕力でのし上がる変わり者。

自分の一族は世界が利用している魔法よりも、更に根源に近付いた魔法を使用していたと信じて疑わない。曰く、元は大狼として過ごしており、人化は一族の魔法によるものである他、その生き残りが自分しかいない為誇りと言うよりもその為に生きている。

ただ子供の狼であることには変わらないため、世界が覆い尽くしている魔法に対して徐々に自信を無くしつつあるが、自分の実力を以て維持をしている。

その為頑固で融通も効かない自信家だが、実力でのし上がったり、誠実な人間を好んでいる。反面、自分に自信の無いものは同族嫌悪の如く嫌う。

一族の結晶として、片目に魔眼を背負っている。「解析と最適化の結晶」らしく、学園の前では使いたがらないが、これによって外での冒険で効率的にレベリングをしている。


「単刀直入に言うと、さっき車に轢かれて死んだ。

ただ……なんというか、私の娯楽というか、なんというか、轢くつもりはなかったんだが……すまない、家庭の事情があっただろうに」

「(この金髪青眼の女の人……なんか車に乗ってたな)何言っているんです?」

「いきなり言っても分からないだろうけど、君はさっきの事故で死んでしまってだな」

「ええ、そうなるはずですよね」


「……ええ……わざと……?」

「夢ですかね、これ」

「……いや夢じゃないんだが」

「夢じゃないならなんです?死後とか?」

「ああ、まあ……そうだな、人の子は読み込みが早いな」

「俺は確実に死んだとは言ってますし、そうでしょうね」


「……人の子よ、何故私の車にわざと当たったんだ?」

「一回くらい人に迷惑かけてみたかったんでしょうね……よくわかんないです」

「よく分かんないって……まあ、あれだ、頭空っぽにして聞いて欲しいが、ご家族に会いたいとかは」

「どうせいないです」

「恋人とか、子供とか」

「そんなのがいるやつが、当たり屋なんてしますかね」

「それなら、じゃあ、望みはないかな、生まれ直したいとか」

「元の世界は御免ですね、どうせ何も変わっちゃくれない」



「……別の世界とかは?」

「……いいんじゃないですかね」

「じゃあそれで……というか他人事に言うな、なにかないのか?」

「特にないです。平穏で、平和に暮らせるならそれで」

「平穏で平和ねえ」

「例えば、貴方って才能を最初から持った状態で生まれ変わらすことは出来るんです?」

「それは出来るが、平穏ではないぞ?」

「じゃあそれでいいです。少なくとも人から要求されるものはこなせるぐらいで……そう言えば」

「何?」

「俺、貴方の車がめちゃくちゃ高そうだから当たり屋したんですよね。で、神様というじゃないですか、どんな気分です?金も力も何もかも持っててさぞかしいい気分で、俺みたいなのを救うのが趣味なんです?」

「卑屈すぎないか」


「死ぬつもりで死んだのに、こんな夢見てる俺の身になって欲しい」

「分かった、分かったから……それで、人の子は何が欲しい?」

「余裕が欲しいですね」「人間は余裕が無いからこんなことになるわけで、馬鹿みたいに力があれば、余裕も生まれてこうならない」「そのくらいの強い力はあってくださいよ」

「……わかった」


「それじゃ、丁度いい所がある。文明レベルは少し下がってしまう。今生きた世界とはかなり乖離しているが、RPGの世界とは似てはいる。ここでは能力基礎が最初からステータスとレベルとしてあるから……どうする?」

「勿論最大値で」

「最大値か……」

「出来ないんです?」

「可能だが、出る杭は打たれるという言葉を知っているか?」


「知ってますよ。ただ誇示するつもりは無いです。慎ましやかに、少し仕事をサボっても明日食える物が手元に出来るだけ。

それが盗みになるなら、警察から匿われる能力があればいい

……クレカみたいにジャブジャブ使うなら、そのくらい容易いですよね。まあ信じていないんですが」

「人の子は穿ってるな」

「当たり屋してたような奴に、穿っていない考えはいないですよ」


「……聞きたいことがあるが、人の子は矛盾しているな」

「どこがです?示談ですよね?」

「示談としては成立しているが……まず人の子は、あの時本当に死のうとしていた。時間停止能力を持つ私でさえ回避できなかった」

「……は?じゃあ出来ましたよね?」

「出来たが、人の子は本気で死ぬ気であったことはよく分かった。ジャガーEタイプを狙うとはお目が高いな」

「あんなの道中で目立つので……」

「だからこう考えただろう、私が加害者になったとしても示談で済むと。だが死ぬためにやっている当たり屋は聞いたことも無いな」

「悪趣味な夢だな」

「まあまあ……だから私は気になった。私のような者を成金と見なされるのは慣れている。無論こういった加害行為は考慮しているが、人の子はその憂さ晴らしより、被害に対して多くの示談金という高い報酬を得ようとした。

得る側が人の子でなければ家族だろう。人の子は当たり屋だと自称したが、人の子は大きく車道から飛び出して、私の前に飛び込んだ。

その自殺行為に私が加害者になるか、それについては置いておきたいが……まずそこに焦点が行かなかったことも考慮していい。

そこまで思考が回らなかった、と考えるなら。合点はいく、何故なら人の子は年に反してあまり良い服を着ていない。磨り減ったサンダルや、よれたシャツから、あまり外に出る気になれてなかった。

ならただの引きこもりか、結論君はまだ家族の庇護下にある可能性は高いが、受け答えを見るとそうでも無い。

人の子は多少欲深い提示はしているが、夢と言っている割には非常に現実的だ。事実君は私の会話を止めようとしない」


「……止めろと言ったら、止めますか?」

「だがその素振りは見せなかった。人の子は少し考えが及ばなくても、客観的にどう見えるか分かっていた

……ただ、自己肯定は低いな。人の子は死んで金を得る為に身を投げた。親の庇護下であるにも関わらず」

「そこは、違いますよ。俺は死んでも良かったので……それで、満足ですか?」

「満足とは?」

「そうして、俺のやっていることは間違っていたと延々とほじくり返したいなら、いつでもいいんですよ。スキルも出来なければ出来ないと言って欲しい」

「ああ、人の子の間違いは私の金銭で終わる。今はその話ではないな

……要は、人の子は矛盾しているのだ。穿った考えというのは『これだけ被害を出したなら見返りを出して欲しい』ではなく『これだけの被害を出したからさっさと終わらせて欲しい』に私は見えた」

「どう繋がるんです?」

「人の子は私に、最強にして欲しいと求めた。だがこれは車を当てたからでの報酬じゃない。無論現状に満足できない不満でもない。人の子はそれ以外に何がしたいかも明確に自分で得ていないのだ」

「……」


「人の子は、スキルの数と強さを要求したが、そうじゃないだろう。人に迷惑を掛けたくなかったから。けれど生前に迷惑を掛けてしまったのなら、何も無い自分に何かが欲しい、合っているか?」

「……頷いて満足するんです?」


「適材適所だ、人の子が生まれ変わって、そして最後に自分の全てに向き合うことになる。君はどんな力を手に入れても人として生きる。そこに私はいない。一人で向き合って押し潰されるような大きな負荷は、私は与えたくない。

元より私は、君が死ぬつもりだったから殺してしまった。君はあの世界で死しか選べなかったから、君の選択に私は甘んじて応えた。

その状況でなんだが、君は何かに囚われるより新たな出発を望んだ方がいい。

人の子が、そこまでの能力が釣り合うかでは無い。君はその考えで本当に良いのか、と聞いているんだ」


「……分かんないですね。

ただ、迷惑は掛けたくはないんですよ。俺だって、閉じこもってて、それでいいって思った訳じゃないんですよね。そう、迷惑は掛けたくはないんです」

「お節介だが、迷惑を掛けない人間は神様視点でいないぞ」


「じゃあ、じゃあ記憶に残らない人間でいい。そもそも生まれ変わりたくない。もう死にたい。なんで死なないんだよ。死なせて下さない。無理です。ごめんなさい。無理。部屋から出るんじゃなかった。起きるんじゃなかった」

「残念ながらここにいる限り死なんぞ」

「ごめんなさい、ごめんなさい、許してください。嫌だ」

「大丈夫だ。後のことは任せて、人の子のやりたいことを考えて欲しい」

「……迷惑掛けたくない、けれど、人のために何かやりたい。だけど、俺が何かを得たら変なことになるかもしれない」

「その時はあれだ、天罰下してやろう。私は神様だからな」

「その時は殺してください」

「殺さないぞ、君はそこまで悪くない」


「……だけど、俺は何をどうやって人の世話が出来るか分からない。だから何が欲しいかも、分からない。ごめんなさい」

「なら……分かった。最初の約束通り人の子に能力の大部分与えよう。そこから人の子のやりたいことをすればいい」

「削っても良いです。ごめんなさい」

「その時はその時だ。よく使うスキルが見つかれば私に教えてくれれば良い。あまり良い世界でもないが、人の子なら歓迎される。不安なら毎晩日報聞いてやるぞ」


「日報…?」

「あっ……毎晩神託を行う。だからその時に報告したいことは報告すれば良い……最後に、そうだな、生まれ直す時期はあるか?赤ん坊でもいいぞ」

「赤ん坊はいい、家族はもういい……だから高校生でいい。すみません。出来ればでいいです」

「構わん。元より人の子の判断に後悔がなければなによりだ。呼びたい時はいつでも私を呼べ」

「名前聞いてない。一神教です?」


「うむ、お姉さんと呼んでもいいぞ」

「……アレです?本当の名前教えたら、なんか死ぬみたいな」

「そうではないが…良いだろう、お姉さんでも。金髪青眼で可愛いだろう」

「名前が良いです……兄弟は好きじゃないので」


「──じゃあ、エスと呼んで欲しい」


「……分かりました」

「多くの呼び方があるから、私じゃあ決めかねる。人の子はそれでいいか?」

「エスさん」

「お姉さんが話を聞いてやるぞ」

「……次の世界は、楽しいですかね」

「うーん、多分人の子には少々骨が折れるかもしれない。私は自由を愛しているからな、だから今の子らも奔放で手に負えない。


だが、君の得たいものはそこにはあるだろう……それは、神様として約束しよう」


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