猫を攻略する乙女ゲームに転生した、はずだった。

枝豆@敦騎

一章

第1話誰だってミスする事もあるよね

私は猫が大好きだ。

猫派か犬派かと聞かれれば、どちらも好きなんだけど少し猫派寄りかもしれない。


あのもふもふの毛、ぷにぷにの肉球。パタパタ動く尻尾と耳。

猫を飼った事のある方ならご理解いただけるだろう、猫の愛らしさ、素晴らしさを!!



……けれど、物凄く残念なことに私は重度の猫アレルギーだった。

猫を飼っている友人と居るだけでくしゃみが止まらないほどに。

いつかは猫アレルギーを撃ち破り猫を飼ってやる!!!






と、意気込んで居たのですが。ここは何処でしょう?

なんか足元がふわふわしてます。

雲みたいなものの上に立ってます!そんな私の回りを白い服を着た人達が書類のようなものを抱えながら忙しなく動き回っています……。

あの人、宙に浮いてる!?


「あーいたいた。享年25歳の御嬢さん」


すげぇ…何かなこれ、最新のVR?

私、VRゲームなんかもってたっけ?いや持ってないな。

家庭用小型ゲームならある、ソフトは乙女ゲームが8割だけど。


「おーい。君ですよ君」


あー、そう言えば猫が攻略対象の乙女ゲームがあったなぁ…猫じゃらしとか鰹節とかのアイテムを使って猫を手懐けて、好感度がMAXになると自宅で同棲できるようになるゲーム。

確かタイトルは『もふもふパラダイス』。


同棲とか言ってもただ猫を飼えるようになるだけっていうやつ。

何処が乙女ゲームなの?って突っ込みたくなるよね、ただのペットを飼うシュミレーションじゃんって。

…でもジャンルは乙女ゲームに分類されてて、猫のイラストもやたらイケ猫ばっかりだったから気になってジャケ買いしたのよ。


まだプレイしてないけどね。帰ったらやらなきゃ。


「そんなゲームが地上世界には存在してるんですね……というか、御嬢さんはもう元の世界には戻れないですよ?」


えー…それは困る。まだ他の積みゲー消化してないのに。


「諦めてください」


いやいや、そんな簡単に諦めきれるなら乙女ゲームやり漁ったりしないから………って

「ふぉ!?私の心を読むのは何奴!?」

「あ、やっと気がついた。私です」


驚いて声のする方を見れば……白い人がいた。

あ、いや、全身タイツの白とかじゃないよ?

なんか、こう目映く輝く人型の光源体っていった方が正しいかも。


「失礼ですね、私は天使です」

「天使……あの白い羽が生えてて空を飛ぶ神様の遣い?」

「その通りです、と言いたいところですが天使に羽は無いんですよ。それはさておき。貴方、亡くなる前に小さい子供を助けましたね?」


そう言われて首をかしげる。覚えてない。猫アレルギーを撃ち破ってやんよ!と気合いをいれた事しか覚えてない。


「無理もないでしょう、結構な衝撃が加わった様ですからそのショックで忘れてしまったのかもしれません。で、とにかく、貴方は亡くなる直前、車に引かれそうだった子供を助けたんですよ。なので良いことをした御褒美として好きな世界に転生させてあげます」


「……転生?それって乙女ゲームの世界とかでも?」


「ええ、可能です」


そういうと天使と名乗る光源体は何もない空間からにゅっと書類とパソコン、コピー機を取り出した。


なにそれ、四次元空間なの!?


「まぁ似たようなものだと思ってくださって構いません。で、どうします?」


こんなチャンスまず今後一切無いだろう。なら絶対後悔しない世界に転生したい。

そうだ、プレイできなかったあの猫を飼うゲームの世界にしよう!そこでなら思う存分猫を愛でられる!撫でられる!

「もふもふパラダイスって乙女ゲームの世界でお願いします!」


私がそう告げると天使は書類を一枚取り出して、コピー機に読み込ませる。

すると、私の目の前に白い扉が現れた。


「はい、そこを潜ればご希望ゲームのヒロインに転生出来ます。次の人生、楽しんでください」


転生システムってこんなものなのか。

そう思い天使に礼を述べて扉をくぐった瞬間、後ろで天使の焦った声が聞こえた。


「あ、やばっ!これ他のゲームも一緒に読み込んじゃってる!…学園物乙女ゲームっぽいな。転生先は悪役令嬢になってるし…うわ破滅エンドもある…ま、いっか、もう変更きかないし」


「えっ!?ちょ、待っ―――」

私が抗議の声を上げようとした瞬間、足元の雲がすっと消えて下に落とされる感覚に襲われる。


「無責任かぁぁぁ!!」

そう叫びながら私は落下していった。

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