教壇の端には、水の入った盥が置かれている。

 校舎を覆う足場は、グレーの燃えにくそうな布で覆われている。

 これにより、窓外の形式は灰一色に染まったものの、夏の日差しを防ぐという利点があった。


 工事は下級生が入学してすぐの四月に始まり、五月を跨ぎ、六月の雨で遅れに遅れ、台風と地震の影響で今尚続いている。

 本来の予定ならばとっくに終わっていたはずなので、意識に上りにくいが、実の所、季節は夏だ。

 この足場と布は、日差しを防ぐのに随分役立っているのではあるまいか。


 そもそも、教室にエアコンを設置しないというのは、些か時代に即していないのでは。


 教壇の端には、水の入った盥が置かれている。

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