第4話 飯テロならぬ猫テロ

「どうにかできないのか……?」

 そうこうしている内に猫達はヒートアップしていき、人間許すまじ、絶滅すべし、というコールが上がるようになった。


 すると。

「はい、長老!!」

 いきなりメイが手を挙げた。


「……お前は『ラルーチェ東観音』の……」 

 ラルーチェ東観音とはうちのマンションの名前だ。彼女(?)が人間の格好をしていることは、この際何も問題ないらしい。


「うちのご主人様は、カラスから私を助けてくれました!!」


 そう言えば。

 メイを拾った時は、冬から春に移り替わる頃の話だ。通学路の途中にあるマンションのゴミ置き場で、段ボール箱に入れられ捨てられていた、生まれたばかりの子猫が1匹いた。

 それがメイだ。


 茶トラの子猫はすっかりやせ細って、助けを求めているように俺には聞こえた。

 ミィミィ鳴いている子猫のすぐ上を、複数のカラスが舞っていた。


 カラスが生まれたばかりの子猫を攻撃することはよくある。

 親猫はいない。


 このままじゃまずい。俺は咄嗟に、子猫を腕に抱いた。

 カラスに顔を覚えられた俺はその後しばらく嫌がらせに遭ったが、しばらくすると世代交代したのか、襲われることもなくなったけど。


「だから、人間すべてが悪いっていう訳じゃないんです!! それだけはわかってください!!」


 びっくりした……。

 日頃は悪戯ばっかり、じっとしていることが少なくて、食欲魔人(猫)のくせに。


 案外まともなことを言うんだな。


 続いてプリンが手を挙げた。

「人間の中には、私達を保護し、育ててくれる人がいます。もちろん、すべての仲間を助けられる訳ではなく……限界はあります。でも、たくさんいる『人間』のうちに1人でも私達、猫を愛してくれる人がいるなら……もう少し、様子を見てもいいのではないでしょうか?」


 しーん……。


 結局、意見はまとまらないまま、集会はお開きとなったようだ。

 集まっていた猫達は三々五々散らばっていく。


「俺に見せたかったものって、これ……?」


 プリンはにっこりと微笑む、

「はい!」

 そうか。まぁ、めったに見られないものが見られてよかったけど……。


「とりあえず、俺達も帰ろう?」


 するとメイとプリンは顔を見合わせ、2匹揃って俺の腕に抱きついてくる。

 暑い。


「ずっと前から、ご主人様に言おうと思っていたんです」

「……何を?」


『私達を拾ってくれて、助けてくれてありがとう』


 たまにはこんな夢も悪くないもんだな。

 今夜みたいな、寝苦しい夜は特に。

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俺ん家の飼い猫が人間の姿になって、猫の集会に連れて行ってくれた夜の話 成宮りん @mikemikeon

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