第5話

アナタに呼ばれて行った片隅のロビー。アナタにどんでもない発言をされてしまった。

「アイツが、君に。これ届けて、って。」

アナタは小さい箱を差し出した。

「開けて....いいの?」

「もちろん。どうぞ....。」

アナタは涙目になりながら、箱をグッと私の方に差し出した。箱の形状から、想像がついたけど、丁寧に開けた。中身は、指輪だった。裏側に、私とあなたの名前が書いてある。私の誕生石が入った指輪。あなたは、自分が死ぬことを見据えていたのだろうか。おかしい、そんなの。面と向かって渡してほしいよ。そんな心の叫びを抑えきれなくやった私は、あなたが死んでから初めて泣いた。何でよ、どうしてよ、って。別に、あなたは悪くないと思っているのに。アナタは私を人の目からそっと隠すように立つ。

「あいつが、俺が死んだら渡してほしいって。自分で渡せよ、って言ったんだけど。そしたら、あいつ。俺のことを忘れてほしいけど忘れて欲しくないんだって。」

私が少し落ち着いたタイミングでアナタはそう話す。全てが終わった気がした。

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