02. start

 そして環は、あらかじめ用意してあったおおまかなイメージに沿って、体の動きを整え、軽くスキャットを挟んだ。

そしてすぐさま言葉を、ゆっくりとした気だるいメロディに乗せて口ずさみ始めた。


「溜め込んできた怒り

 に導かれし光

 君と見た景色

 たどりついたこの地

 踏みしめる両足

 フェイクは用無し


 この地このタワー

 変わりゃしないな

 十六のまま

 着の身着のまま

 レコードが生まれる」


環は言葉を口ずさみながら、リズムに乗せて体を動かしていた。

それは環の内側から生まれる、抑えきれないのに発現のしようもない、ある衝動に基づいていた。

環の脳裏にあったのは、内からあふれるロックンロールの衝動を、ヒップホップの作法に則りながら、R&Bのリズムに乗せて、形を与えて外に逃がす事だ。

その分だけ今回のダンスは熱いものになった。

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