第15話 全てを託して

ローズはビームを撃ちまくる。正確すぎるビームだ。キョウジンは全てを食らっている。例えでかい的でなくても、ローズからは逃れられないだろう。キョウジンはよく出来ているよ。グシンが言う。

「そろそろ食らったらどうだ、ローズ。オレは、破壊しまくるぞ」

ローズが言う。

「そうはならない。ナイトの名の如く守るさ。マキさんの守ったもの。それは、それほど凄いものだったはずだ。私は託されたのだ」

しかし、遂にナイトはキョウジンのビームを食らった。

「くっ、やるな」

しかし、ナイトは一発食らうと、どんどん追い詰められていく。ローズの精神力、体力共に化け物としか言いようがない。これだけ食らっても、まだ諦めていない。そんな感じだ。グシンは言う。

「素晴らしい。ローズをこんなに破壊出来るとはな。いたぶれるとはな。クククッ」

ローズは無言でキャノン砲を放つ。しかし、キョウジンはまだまだ落ちそうにない。パイロットの方はどうだ? まだまだのようだな。これはローズの負けなのか。ローズがやられたら、クワン族はどうなるんだろう?

僕達の目指しているものとは何だっけ? 戦争を終わらせることだ。ローズも間違いなくそうだろう。守る者の多さは凄まじい。その頂点に立つ者の名がナイトとはな。皮肉を感じる。ローズがやられたくらいで、クワン族は終わらないだろう。他にもエースはいるようだしな。しかし、精神面ではどうだろう? ナナに務まるだろうか? 僕は何を考えているんだ。クワン族をさっさと潰して、下らない争いに終止符を打つんだ。

キラーが言う。

「これにはやはり、コマペンが絡んでいるか。ヤツの目的は何だ? 平和の意思とはいいもんじゃない。しかし、ヤツのやろうとしていることに心はあるのか?」

「解りません。とにかくこの一戦は凄く重要だと思います」

アイカはそう言った。僕は言う。

「平和の意思というネーミングもあやしいな」

ローズは、まだまだやれると聞こえるようだった。

ローズは、キョウジンのビームを再びかわし始める。ナイトの名の如く、守るってか。ローズも必死なんだな。クワン族も必死なんだな。それでも戦わなければならない。どちらが悪いという訳でもないのに。これも、制御によるものなのか。クワン族も食欲を制御されているだけなんだよな。戦いは終わらない。

ローズが、ナイトが傷ついていく。もう、ぼろぼろだ。しかし、ローズは戦う。グシンが言う。

「もうこれ以上のことはないな。破壊だよ。トップに立ち、気にくわなかったヤツを破壊出来るなんて」

ローズは言う。

「お前の望んだ破壊だ。覚えておけ」

「強がりをっ。すぐに楽にしてやるよ」

ローズは何を言っているんだ。ローズは剣で切り刻む。美しすぎるフォームと傷ついた装甲。しかし、キョウジンはまだ耐えられそうだ。絶望がクワン族を襲う。しかし、ローズは戦い続ける。これがナイトか。頂点に立つ者か。ローズは言う。

「マキさんの守ったもの。絶対に守りきる。戦争のない時代は訪れる。私はナイトだ」

圧倒的に不利な状況のローズは、更に戦う。どんなメンタルトレーニングしているんだ、と思わず聞きたくなる。キラーが言う。

「ここまでくると恐ろしい。殺意さえも超えるものかもな」

アイカが言う。

「何がローズをここまで支えているのでしょう?」

僕にも解らない。

グシンが言う。

「いい加減に落ちろよローズ、そしてナイト。オレはおびえているのか、カメロウと同じぐらいに。そんなバカな。あと少しで破壊出来るんだ!」

ローズはキャノン砲をまだ放つ。そして、接近して剣で貫こうとしている。グシンは言う。

「無駄だ。無駄なんだよ。破壊されろよ」

グシンが明らかにおびえている。ローズは最強のパイロットかも知れない。ローズは言う。

「キョウジンは私が作った。それが、何を意味するか解るか? ここを剣で貫けば……」

ナナが言う。

「どういうことだ?」

グシンが叫ぶ。

「やめろ、やめろローズ! オレが悪かった」

ローズが言う。

「これがきさまの望んだ破壊だ」

どういうことなんだ。ローズは何をしようとしている? グシンのあの慌てようは何だ? 嫌な予感がする。グシンが言う。

「ローズ、そんなことをしたらきさまも死ぬんだぞ。解っているのか!」

ローズが言う。

「フハハハ、ナイトよ。マキさんの守ったものは凄かった」

何だと。まさか、爆発するのか? 二人とも死ぬのか? ナナが叫ぶ。

「嫌だ、嫌だ、嫌だー。ヴァルキリー、私も戦うんだ。行くぞー」

ローズが言う。

「ナナ。今からお前はクワン族のリーダーだ」

「いらない! 地位などいらない。嫌だ。ローズ様がいないと嫌だ」

ローズが静かに言う。

「お前に全てを託す」

「イヤー」

どかーん!

大爆発が起きる。ナイトもキョウジンも木端微塵だ。そこには、もう何も存在しない。マキとやらが守りたかったもの、それは何だろう? ここには、ローズの最後の言葉がまだ漂っている。今、クワン族のリーダーは力尽きた。

そして、新たな時代を迎えようとしている。ナナが言う。

「ムサシ、一週間後だ。人間との会議を行う」

ムサシが言う。

「はい、ナナ様。では早速準備を」

一週間後、人間とクワン族の会議が始まる。ナナは、交渉マシンを使ったらしい。そして、ナナの演説によって、人間の国は説き伏せられた。ナナは言う。

「光エネルギーは、二十年以内に撤退させます。そして、異星人の存在が明らかになりました。私達は、はめられていたのです。争っている場合ではありません。共に戦いましょう。そして……」

演説は続いていく。そして、人間とクワン族の数百年に及ぶ戦争は、遂に終わりを告げる。ローズは凄いヤツだったな。ナナももう立派なリーダーだ。今、新しい時代が開かれた。人間とクワン族の未来は、エース達に委ねられる。


ショートストーリー5 扉を貫く絵の先

マキは命を失い、いや肉体を壊しただけだ。ここで語られるのは、マキの残した『記憶』さ。マキは言う。

「『心の草』とは、心の健康だったんだね。私には先のことは理解出来ないよ」

マキとカメタは、ここで出会う。僕は、マキという女性の『記憶』と会話する。マキは語る。

「私はたくさんのものを『落として』きた。カメタ君は拾ってくれるかい?」

僕には、意味が解らなかった。マキは言う。

「答えを持っていないという顔だ。カメタ君は、『強い刀』と『強くなる刀』の二つを持っているね」

一つは『変幻』だろう。もう一つは、解らない。

マキは話しを続ける。

「ローズは私の『落としたもの』を拾ってくれた。それは『扉を貫く絵』の先にあるもの。つまりは、補える『個性』だ。肉体と考えは、一人一人違うよね。違う心を持つから、サポートを互いに出来る」

海の絵は、サポートで成り立っていたのか。『落としたもの』を『自分』で見つけるのは難しい。だから、『自分の心の草』を修復することは出来ない。

「ローズが信頼を運び続けた世界を、私は見たかった。でも、死人は見てはいけないよね」

と、マキはゲラゲラ笑った。

信頼がなければ、『落した物』など誰も僕には届けてはくれないってことだ。つまり、僕は仲間達に恵まれていたということ。

マキは僕に忠告した。

「強くなる刀はね、カメタの心の健康によって違う。心の健康は、結局『何も考えようとしないバカ』が持っている。まあ、深く考えてもダメだよ、ローズ」

どうやら、ローズも説教されたようだ。

マキは予告を始めた。

「ローラさんが、『心の草』について研究している。アイカちゃんは、歌で『心の草』を運べる。でも、二人共カメタ君が見せた『背中』をおうから。君は、ただ自分に素直になればいい」

最後の決断の時、僕は自然体でいられるだろうか?

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