好れ

和田蘆薈

好れ (ズレ)

 「きょうは会えるといいな」

 僕はそう思いながら学校から駅まで急いだ。

時計は19時を回っていた。しかし、まだ街は明るい。

その明かりは人工的なものではない、原始的な光によってもたらされたものだ。


 気づけば今年も半分を終えていた。虫達の鳴き声も聴こえてきた。

虫の変わり映えのない連続的な鳴き声を聴いてると、まるで瞑想をしてるかの様に心が落ち着いてくる。


 赤信号。自転車のスピードを徐々に落とし、僕は一息つく。駅までは200、いや、100メートルほどだろうか。徐々に徐々に体温が上昇するのが分かる。 鼓動もはっきり聴こえるようになる。

小学校から一緒だったあの子。何故惹かれるのかは分からない。でも会うとドキドキする。誰だってそういう経験はあるだろう。特にこの年代ならば。そんなあの子とは進学を機に別々になった。今では中々会うことは出来ない状態になっていた。

何故だろうか。何故タイミングが合わないのだろうか。通学に使う電車の本数はそう

多くはない。それなのに微妙なズレが生じていた。それは月と太陽の様に。


 しかし、こればかりはどうしようもなかった。いや、どうにか出来たのかもしれない。どうにか工夫すれば何とかなるかもしれない。だがそんな勇気がでない。そんな2択。頭の中で僕はその道の分岐点で立ち尽くしてしまっていた。


 結局僕は何もできずに毎日過ごしていた。

嫌われたくない。知りたくないことを知ってしまうかもしれない。

そんな恐怖が頭の隅に常に置かれていた。

その工夫1つですべてが終わるわけないのに、僕は恐れていた。

だから祈った。


彼女に会いたい。

一言でもいい。言葉を交わしたい。


と。


積極的にいけない僕にはそう祈るのが精一杯だった。



 何故だろう。自分でも不思議に思うくらい君を意識してしまう。

太陽が僕らを照らす青春の季節になるからって訳じゃないけど。


駅の階段を駆け上がり、改札を通過。

ホームには同じような学生達が待つ。




ふぅ。








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好れ 和田蘆薈 @aloe-yu

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