第3話



「あっちから入れるよ」



彼はそう言って私の手を引いて

生い茂る草をかき分け

川岸へ進む。



対岸には花火の筒が立っている。



「寝転んだ方が見やすいよ」



敷物がないので、汚れるのが気になるけど

頭の部分だけハンカチを敷いて

仰向けに寝る。



ドン!

地響きを伴う大きな音

ひゅるひゅるひゅるという打ち上げ音

パンバチバチバチバチという破裂音

視界の全てが花火に覆われる。

火薬の匂い

落ちてくる火の粉。



何度か花火大会には行ったけど

こんなに間近で見たのは初めてだった。

大きな音で会話がままならない。

花火が上がる度

辺りが鮮やかに照らされる。



花火が終わっても

耳がキーンとおかしな感じだ。



「また来ようね」





23の夏




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ノスタルジー ぴおに @piony

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ