神々の庭園 ~月の小庭園~

永久乃刹那

第1話 大庭園からの使者

僕の名前は「ジャック・グラフ・ラスト」というカボチャ頭を被った一応、紳士です。

闇の大庭園ナイト・ガーデンにおいては、特別管理整備官という役職を持っています。


僕の出身地は、空に輝く月が僕の故郷です。

でも、月の小庭園ムーン・ミニガーデンは、月の大樹が枯れてしまい、今や荒廃の一途を辿っています。

闇の大庭園ナイト・ガーデンにやってきたのは、月の大樹の意志を引き継ぎ、月の再生をもたらす救世主を待ち望んでいるからです。


そして、僕は闇の大庭園ナイト・ガーデンでは、カボチャ頭を被り続け、道化を演じているのです。

そうでもしないと、反感ばかりを買ってしまう生真面目なただの紳士に成り果ててしまうからです。


僕は、この闇の大庭園ナイト・ガーデンでの種族格差を目のあたりにして、軽く絶望をしました。

何故、月の大樹は、僕をここに向かわせたのか、正直、わかりませんでした。

南東部では、種族格差は余り無いのですが、北西部では、種族格差があまりにも酷かったので、僕は北西の中央部に種族格差の無い独立した管理整備棟を作りました。

僕の故郷では、種族格差は無く、皆が平等で平和だったのです。


ただ、行き過ぎた科学の力が月を荒廃へと導いてしまったのです。

闇の大庭園ナイト・ガーデンでは、失われた技術ロストテクノロジーと呼ばれていますが、月では失われていないので、僕には、それらの技術を使って作られたモノを簡単に修理ができるのですが公表はせず、こっそりと修繕や修理を行っている感じです。

このことを知っているのは、闇の大庭園ナイト・ガーデンの特別管理顧問官であられる古竜のフォンセ様だけです。

そして、僕が月の住人であることを知るお一方です。

北西中央部に独立した管理整備棟及びその周囲の庭園を造るのも、黙認して頂いており、また特別管理整備官の役職は闇の大庭園ナイト・ガーデンの皆が知っていることなので、闇の中央管理局も手が出せないのです。


真面目に不真面目を演じているので、闇の大庭園ナイト・ガーデンの方々から道化として見られています。

しかし、僕が作った北西中央部の管理整備棟では、僕が皆を平等とし、皆が平等であるという認識を持ってくれているので、道化では無く、しっかりとした眼で僕を見てくれているので、有難い限りです。


荒廃してしまった故郷には月二回位のペースで戻っています。

何故なら、荒廃した月を侵略しようとする輩がやってくるので、それを撃退する為に月からの通信コンタクトがあると戻っているという感じです。


僕は、これでも超能力者エスパーと呼ばれる者で、闇の大庭園ナイト・ガーデンには誰一人いない特殊なヒトなのです。

なので、超能力者エスパーを知らない方々ばかりなので、私の能力は秘密に隠されているように思われております。

これを知ってるのも、フォンセ様だけなのですけどね。


月には、まだ生き残っている種族が数種類いる限りで、僕以外のヒトは冷凍睡眠カプセルによって、月の内部庭園の奥底で眠りについています。

そして、月の地上庭園部にドラゴンと呼ばれる種族とビーストと呼ばれる種族によって、月を外敵から守っている感じです。

この二種族が月の外部庭園を内部庭園は、小人ホビットと呼ばれる種族と人工生命体ホムンクルスによって管理されています。

機械人形オートドールと呼ばれるモノは内外問わずに設置されており、三種族のサポートを行っています。


月の大樹は、内部庭園と外部庭園に拡がる大樹だったのですが、今は枯れいく運命を辿っております。

それを枯れいく運命を変える救世主を待ち望んでいるのが僕ということになります。


月の文明は、科学が発展しすぎた為に起こった災いと外部からの侵略と言う二重苦に覆われ、僕以外のヒトという種は、月の大樹によって強制的に眠りにつかされ、それ以外の三種族と残された僕に月の命運を託し、枯れいく運命を少しでも伸ばす為に休眠状態に入りました。

それでも、日に日に少しずつ枯れていく状態なのです。


月の支配を企む外部からの侵略者の正体はわかりません。

異形の者として、7体の大型の異形種と戦って、侵略を防いでいるのが僕なのです。

異形の者は、月の大樹が枯れ始める前から、襲ってきており、それを撃退すべく超級と呼ばれる力を持った超能力者隊エスパーチームによって、月の平和は守られていました。


しかし、ある日、発展しすぎた科学が暴走を始め、その混乱に乗じた7体の異形の者全てが月の総攻撃を始め、月を守る為に挑んだ超能力者隊エスパーチームは壊滅状態に陥り、月の大樹は、侵略と暴走を止める為にその殆んど全ての力を使い果たしたのです。

そして、残された力を僕に与え、「月の書」と救世主の来訪を託され、眠りについたのです。

7体の異形の者も月の大樹の力の前には、屈することしかできず、特殊空間へと封じられたのです。

しかし、月の大樹が眠りについてから、ひと月に二回程、特殊空間に歪みが生じ、そこから月への侵略を始めようとするので、僕が退治に戻っている訳です。


僕の月での肩書は、一応ありません。

唯一の残されたヒトであり、月の外部庭園においては「ラスト」と呼ばれています。

内部庭園では、「カボチャ伯」とも呼ばれたりしてますが…。


とまぁ、闇の大庭園ナイト・ガーデン月の小庭園ムーン・ミニガーデンを行き来する日々を過ごしていたある日、待ち望んだ救世主が現れたのです。

救世主とは、「月の書」に選ばれた者を指し、その書に選ばれた心強き少女に出会いました。

少女の名は「アニス」と言い、光の大庭園ライト・ガーデンと呼ばれる別の大庭園の特別管理整備補佐官の任に就いている少女でした。

その後、その少女は、闇の大庭園ナイト・ガーデンでフォンセ様に気に入られ、たった三日の在日期間の間に「闇の特別管理整備官」の役職を与えられ、光の大庭園ライト・ガーデンに戻った際には、「光の特別管理整備官」の役職に昇進したとフォンセ様より聞きました。


その少女が再び闇の大庭園ナイト・ガーデンに訪れたのは三ケ月後のご両親の交換研修の際でした。

少女は、フォンセ様より密命を帯びており、主に北西部の種族格差を無くすことでした。

僕が数年かけて、北西中央部に種族格差の無い平和な庭園を城築上げたのにその少女は、たった三ヶ月で闇の大庭園ナイト・ガーデン全域にあった種族格差全てを崩壊させたのです。

その前に、少女と入れ替わりに光の大庭園ライト・ガーデンから数日後に帰ってきた北西部と南東部の管轄管理整備官の七大天族のルフォン様とガブリール様は、一変して種族格差の壁を中央管理局から撤廃し、各々の管轄部にまで影響を及ぼしていったのです。

そして、その集大成を成したのが、その少女だったのです。


僕は、光の大庭園ライト・ガーデンに戻る前に月の事情を全て話し、月の大樹が貴女を待っていることを伝えました。

アニス様は、快く私の言葉を聞き入れ、「月の書」からも月の状況を聞いていたのか、月へと先に旅立たれたのです。

僕は、フォンセ様に月に当面の間、戻ることを伝え、お暇を頂いてから、月に戻りました。


そして、アニス様から通信コンタクトがあったのです。


「カボチャさん、トラコンとかいう古竜様に似た種族の方々から喧嘩を売られてるんだけど、どうしたらいい?」


「えーっと♪一番偉そうにしているドラゴンさんを軽く叩きのめしてください♪」


「わかったわ。一番、偉そうにしているのを倒せばいいのね。」


「出来る限りでいいので、秒殺には…」


「えっと、ゴメン。3発で倒しちゃったんだけど、良かったのかな?」


「アニス様、今からそちらに瞬間移動テレポートするので、それ以上は攻撃せずにお待ちください!」


僕は、アニス様の気配とドラゴン族が多数いる場所を感知して、瞬間移動テレポートしました。

すると、目の前には、襲い掛かっている若いドラゴンの群れが居たのですが、全ての攻撃を軽々と避けて回避されている少女の姿が…。



「ストップ!それ以上、その方に危害を加えるのであれば、この僕が相手になるよ。」


「カボチャさん、やっと来てくれた。このトラコン?さん達が急に暴れて襲い掛かってくるから、どうしようかと思ってたのよ。」


「ラスト!この小娘は何者なんですか! 族長と一対一で勝負しましょうって言ってから、族長がOKしてから、小娘が動いた瞬間に急に泡を吹いて倒れちまったんだ!」


「だって、OK!かかってこい!って言ったから、攻撃しただけじゃないの。」


「族長がこんな小娘に瞬殺されるものか!それと俺達はドラゴンだ!」


「わかったから、お前たちが束でかかっても、返り討ちにあうだけだから止めといた方がいいよ。」


「もう、じゃあ、族長さんを起こすから、黙ってて!」


というとアニス様は、ドラゴン族の族長であるドランに活を入れて起こしました。

眼を覚ましたドランは、周囲の若いドラゴン達の言動を収めたのです。


「お前等では、この方には勝てんだな。俺も手加減されたとはいえ、たった3撃で失心したんだな…。」


「ほら、この族長さんの言う通りでしょ。」


「ラスト、この方は何者なんだな?まさか、ラストが言っておられた…。」


「そうだよ。月の救世主様だよ。アニス様、申し訳ありません。何分、人の子が月に来るのは久方振りなので、早とちりしたのでしょう。」


「それにしても、カボチャさん、いつもと話し方違うけど、それが本当の喋り方なの?」


「はい。これが僕のこちらでの話し方です。」


「不真面目な喋り方から一転して、普通の喋り方なのね。やっぱりカボチャさんは面白いね。」


「そう言って頂けて、何よりです。」


僕がアニス様と話している様子を見て、周りのドラゴン達もようやく状況が掴めた様子で、アニス様の前に平伏す。


「月の救世主様、ご無礼を許してくだせいだな。俺いや私はドラゴン族の族長をしているドランと申すだな。以後、お見知りおきくだせいだな。」


「別に無理に堅苦しい挨拶なんていらないわ。さっきみたいな喋り方の方が私も気楽でいいし、それと私の名前はアニスよ。宜しくね。」


「ラスト、いつも通りの喋り方でいいんですかだな?」


「アニス様がそう言ってるのだから、別に構わないと思うよ。」


「じゃあ、遠慮なく、アニス様、これから宜しくなんだな。」


「えぇ、宜しくね。ドランさん。あと、いつまでも平伏されてると困るんだけどなぁ~。」


「ほら、お前ら、いつまで平伏してるんだな。さっさと立ち上がって、持ち場に戻るんだな!」


アニス様が一言、言うとドラゴン達は、皆、平伏すのを止めて立ち上がり始め、持ち場に戻り始めました。

ドランは、アニス様を羨望の眼差しで見ていました。


「それにしても、アニス様はお強いんだな。本気でやられたら、俺、絶対にこの世にいなかった。」


「私は、喧嘩は買うけど、別に相手を倒せばいいだけでの話でしょ。」


「ドラン、この方は不殺の心得なんだよ。決して簡単なことではないけど、覚えておくといいよ。」


「すごい心掛けなんだな。でも、時には全力を持って、相手にしないとこっちがやられてしまうから気をつけることにするだな。」


「ありがとう。でも、大丈夫よ。それにしても、ここが月なのね。何だか、いつもより身体が軽く感じる。変な感じ。」


「アニス様、それは重力が大庭園と比べると軽いからです。なので…。」


「大丈夫。こっちに来る前に「月の書」ちゃんに話は聞いてるし、きちんと手加減も出来たから。」


さすがは、アニス様。規格外の強さと知識量は伊達じゃない。

このドランをここまで心酔させるのだから、やはり、この方は月の救世主様に違いない。

そんなことを思いつつ、アニス様を見て思ったのでありました。

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