第48話 貸切露天風呂
零の将来設計が進んでいくにつれて、時刻もだんだんと夕刻になってきた。時間を潰すのには十分すぎるほどの情報量であったが、まぁ良いだろう。
食事に関しても色々とあるようだが、零が選んだ寿司屋に行くようだ。
寿司屋一つにしても、この旅館のことだから俺の想像など軽く凌駕してしまうものが出現するであろうことは火を見るよりも明らかだ。
「涼さん、ここですね。」
目の前にあるのは、東京に本店を構える超高級寿司屋である。いつだか、爺さんに連れられたことがあったような、なかったような……。
店内に零は少々緊張気味に、俺はまるで異国の地のような思いで入った。そそくさと若めの店員に案内を受けて、2~4人用であろう個室席へと案内された。
さきほどまでのティータイムとは正反対に静かで高級感あふれる雰囲気であり、まぁ嫌いではないと言ったところである。
「えーと、これとこれとこれもお願いします。」
なんて異国の地にでも攫われた気分になり、席に着いても尚、辺りを見回している内に零はオーダーしていた。
ここの制約通りならば、いくら食べても無料ということである。東京本店の値段でも調べてみたいものだが、ここの闇にでも触れてしまいそうなのでやめておこう。
「涼さんのお寿司も注文しておきましたので!」
「あ、ありがとう」
雰囲気に飲まれてしまって後手後手の返答となってしまった。
「店のランクは違えど、寿司屋に来るのはホントに久しぶりだな。」
「そうですね。お爺ちゃんとの食事会でもお寿司はあまり無かったですものね。」
「そうそう。たまにクラスの打ち上げで回転寿司行くくらいだからな。」
「あ、男子の方だと回転寿司に行くんですね。女子の方だとイタリアンとかに行く こと多いので。」
「おしゃれな女子高生してるね。」
「食べ放題コースなのであんまり長くはお店にいらないんですけどね。」
そんな食事に関する世間話をしていると、早々に高級感あふれる寿司の登場である。さすがの零も少々驚いている様子である。
見ためだけでなく、味も然りであった。今度あたりから爺さんに「寿司食わせろ」とでも言ってみたい気持ちになるほどであった。食事の時も俺と零は結構喋るタイプであるが、今回ばかりは例外的に寿司に夢中になっていた。
寿司に感動すら覚えるほどに満足して、自室へ向かうこととした。
自室はというと、もうそれそれは超高級もいいところであった。広々とした和室テイストの部屋作りに、その雰囲気を壊さない調和したキングサイズのベット。そして、広大な窓ガラスから見える露天風呂である。露天風呂は、シャワーゾーンと大き目の檜風呂が風情ある屋根下にあり、石で作られた少し小さい風呂が夜空の下という具合になっていた。
人間をダメにする要素しかない部屋に泊まることとなってしまった。
部屋を零と二人で探検することかのごとく見て回っては感動していた。すっかり夜空となり、涼しくなっているために露天風呂もさぞ気持ちが良いのだろうと想像していると、零はとても準備が早いようだった。
「じゃあ、お風呂行きましょう!」
露天風呂に通じる部屋の窓ガラスごしに感動している俺の横では、もう零は下着姿であった。しかも、上はもうすでに脱いでいる。
まぁ、下に関してもお尻がほぼ露わになっているので裸とほぼ変わらない。
「早くお風呂に入って、ベット行きましょ!涼さんのもお手伝いしますね。」
零に急かされ、脱がされ、愚息を確認され、シャワーゾーンへと移動した。
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