第7話 夢心地

 私は、東雲零。

 私はある方、そう涼さんに命を救われた。もう、あれから一年か。

 私はあの日、お見合いがあった。お爺ちゃんの事を考えてずっと相手の男性に耐えていた。自分の事ばかりで、私の事でなくお金や地位が目当てなのはすぐにわかった。下品な態度、話し方、マナーがなっていないなどもう嫌で仕方なかった。お爺ちゃんが無理やり止めてくれて良かった。私が、どこかの御曹司のところへ行くのは小さい頃から感じていた。でも、こんな相手はごめんだ。


 私は気持ちを落ち着かせるためにお爺ちゃんと何度か訪れた駅近くのビルに向かった。今度、行こうとしていたカフェに入った。そこで、涼さんに出会った。初めてだったけど、今まで会ってきた同世代の男性とは違った。オーラというか何か違った。そして、一緒に避難するときにそれが分かった。この人は、本当の自分をしっかり持つ優しい人だと。涼さんは、自分が楽しい、面白いと感じるものや人に出会うとそれに夢中になる。だから、避難するときも少し楽しそうだった。あとから聞くと、小説の主人公になった気分だったらしい。


 そして、私は守られた。血だらけの涼さんに。その時に私は、心の底から「死んじゃう」と思ってしまった。もっと、この人と話していたかったと思った。お爺ちゃんにお願いして病院に。意識が戻らないときはずっと心配だった。涼さんに酷いことをいっていた人たちの事はどうでもいい。というより、顔も見たくない。



 涼さんが目を覚ました時は本当にうれしかった。訳のわからない男性のところに行くより涼さんといたいと思った。お爺ちゃんにも物怖じせずに、そしてあの洞察力は本当に恋に落ちてしまった。だから、無理やりに話を進めた。


 涼さんからの告白は本当にうれしかった。


 「君の事が好きになった。不釣り合いだけど、これからもずっと傍に………付き合って頂けませんか?」


 今でも、いえずっと忘れません。


 お付き合いと同棲をして色々分かったことがある。涼さんは、まず基本的に表情に出ない、でも言葉遣いや態度はとてもやさしい。あと、イケメンとは言えないけどカッコいいと思う(涼さんはスポーツ刈りが落ち着く、長いのは鬱陶しいと言うけど私的にはスポーツ刈りから少し伸びたくらいの時が一番ヤバい♡)。あと、頭もすごくいいし、スポーツも万能、身長も高い方。だから、涼さんを良いと思う人も結構出てきている(葉山君などよりこういうタイプの方が女子って狙うよね)。雅さんと同様に女子更衣室での話題によく登場するし、私とお付き合いしていることを知っていながらちょっかいを出そうとする人も………。でも、涼さんは私の方が可愛いし、話してて楽しいと言ってくれる。

 テスト間近の土日になると涼さんは部屋に籠る、食事などの時間以外はずっと勉強する。学校では、放課後や昼休みには学年一位に教えてもらおうと人が集まる。第一回のテスト前は図書館やお家で二人きりで勉強できたのに………。そのうちに放課後は涼さんが先生の勉強会になってしまった。涼さんの事を狙う人はここぞとばかりに質問などしながら間を詰める。私がいるのに、涼さんは優しいから丁寧に教える。


 私は不安で仕方なくなり、お風呂を使って涼さんを誘惑した。恥ずかったけど、ちゃんと襲ってくれた。その時に見た涼さんの体はいろんな意味で凄かった。テスト前日だったけどね。

 


 それからは、不安になることはあまりない。なんというか優越感?。でも、一応タイミングを見て、涼さんに私の匂いなどつけるようにしている。お風呂とか、ベットで誘惑してるけど、この頃はなにもして下さらない。


 あぁでもやっぱり一番は、表情に出さずに「可愛い」とか「君の方がいいね」って言われることかな。すごくドキドキするんですよ。

 今日の「傾城傾国」も調べてみたら、全身が熱くなってしまいました。



 


 と、いままでのダイジェストのような夢から覚めると枕元の時計は午前6時を指しているのを零は見る。温泉旅行でもっと仲良くと心に決めて。




 「零、早いね。今日なんかあったけ?」


 「温泉旅行ですよ。」


 「あー、あったね、そんなの」


 「はい!」


 この人のこの気だるげな感じもたまらなく好きな私がいる。

 

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