第6話

一度家に帰ったテイは、スコップとノコギリを持ち出し、元農園に戻ってきていた。

当初、実を獲った木を台木にする予定だったが、幹も根っこも大きく一人で移動させるのは困難だっため諦め、近くに自生した小さめの木を代わりに台木にすることにした。

小さいといっても背丈はテイと同じくらいあり、約160㎝の木だ。

まず、枝と葉を全てノコギリで切り落とし、根っこを傷つけないように木の周りをスコップを使って掘り出す。

1mほど掘り進むと根っこの先が見え、掘り出すことに成功した。

全長約3mになったこの木を移動させるのは一人では無理だと判断したテイは地表から膝丈の当たりの高さで木の幹を切断する事にした。

1m50㎝ほどになった木をテイは背中に乗せ、自宅に運ぶ。

そして、運び終わったテイは今一度木を掘りだした場所に戻り、掘った穴を粗方埋めてスコップとノコギリを回収すると、その足で枯れかけのりんごの木の場所にいく。

枯れかけのりんごの木の場所に着くとすぐに一番丈夫そうな枝を見繕いその枝を切り落とし、真っ暗になった元果樹園の中を走り抜け家に帰る。

家に戻ってきたテイは枯れかけのりんごの木の枝をため池につけると、休むことなく家の横に穴を掘り始めた。


「大変だ。もう途中でやめたい。手も足もパンパンで腰も痛い。絶対一人で半日でする作業じゃない。失敗した、もう少し計画を立ててするべきだった。」


弱音を吐きながらも手をとめない。

一刻も早くしないとりんごの木は助からないという事はわかっている。

だからこそ、今日は無理に無理をしてまで作業をしている。

いつもなら寝る時間だが、眠気に耐え穴掘りを続ける。

穴を掘り終えたテイは井戸から水を汲み体全身にかけ、そのあと浴びるように水を飲みその場に倒れこんだ。


「もう限界だ。でも植えなおして、接ぎ木をして、水をあげれば終わる。もう少しだもう少し頑張らないと。」


井戸を背もたれのようにして座り込んでいたテイは今一度立ち上がる。

運んできた木を穴にいれ、その穴を埋めるように土をかけた。

家からロープとナイフをとりにいき、水につけていたりんごの木の枝を拾い上げると、枝の先端をナイフで斜めに切り、切り株みたいになっている台木にくっつけロープで縛り固定した。

そして、ため池から水を運び台木の周りにかける。


「終わったぁー。やっと終わった。大変だった......。ここまでしたんだ絶対無駄になんてならないでくれー!!」


その場で倒れこむと、夜空に向かってテイは叫んだ。


そして、疲れ果てたテイはりんごの木の隣でそのまま眠りについた。

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