14#『楽園』の中の奇跡的な再会
「ここは・・・」
先に目が覚めたのは、すっかり背中のアドバルーンの空気が抜けたハクチョウの女王様だった。
「皆!!大丈夫?」
「大丈夫だよ。」
「飛んだショックで羽根がだいぶ抜けただけ。」
「はい!!ペリカンのオギちゃん!!僕も嘴の風船は全部無事です!!」
ペリカンのオギは嘴をばくん開くと、嘴の中の大きく孕んだ袋の中のプラスチックゴミから『魔術』で変換した、ゴム風船の山を皆に見ようとした。
ぐらっ。
「おぅとっと・・・」
ペリカンのオギは嘴の袋の中の風船の重みに耐えられず、思わずバランスを崩した。
「着いたぞぉーーー!!みんな!!長旅ご苦労様ぁ!!ここが・・・」
どばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばどばぁーーーーーーっ!!
「ご、ごめん!!ハクチョウの・・・大王様・・・!!嘴の中の風船全部ぶちまけて・・・」
ぷぅ~~~~~~~~~~~~!!
ぶち巻かれて覆い被さってきたゴム風船の山から、ハクチョウのブルンガ大王が長い首を突きだすと、たまたま嘴にくわえていた青いゴム風船を息を入れてぷく~っ!!大きく膨らませてキョトンとした。
「な、なんだぁい!!」
ハクチョウのオギブルンガ大王が嘴を開けると、嘴から離れたゴム風船は、
ぶぉ~~~~~~~~!!ぷしゅ~~~~~~~~~!!しゅるしゅるしゅるしゅる!!
と、吹き口からハクチョウのブルンガ大王の吐息を吹き出して、向こうの方へ吹っ飛んで行ってしまった。
「わーーーーい!!風船だぁーーーー!!」
「風船だ!!」
「風船!!」
「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」「風船!!」・・・
がーがー!!ぎゃあ!!ぎゃあ!!ぴー!!ぴー!!じゃー!!じゃー!!かー!!かー!!くるっく!!くるっく!!ででっぽ!!ででっぽ!!こー!!こー!!ぐぇー!!ぐぇー!!けーん!!けーん!!がーがー!!ぎゃあ!!ぎゃあ!!ぴー!!ぴー!!じゃー!!じゃー!!かー!!かー!!くるっく!!くるっく!!ででっぽ!!ででっぽ!!こー!!こー!!ぐぇー!!ぐぇー!!けーん!!けーん!!
がーがー!!ぎゃあ!!ぎゃあ!!ぴー!!ぴー!!じゃー!!じゃー!!かー!!かー!!くるっく!!くるっく!!ででっぽ!!ででっぽ!!こー!!こー!!ぐぇー!!ぐぇー!!けーん!!けーん!!がーがー!!ぎゃあ!!ぎゃあ!!ぴー!!ぴー!!じゃー!!じゃー!!かー!!かー!!くるっく!!くるっく!!ででっぽ!!ででっぽ!!こー!!こー!!ぐぇー!!ぐぇー!!けーん!!けーん!!
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!
「わー!!おい!!皆!!ゴム風船に1羽につき1個だよぉーーー!!」
「な、」
「なんなんだ?!」
「ふ、大量の風船がひとりでに?!」
「膨らんだり萎んだり?!」
「どうなってるんだ?これ?!」
「すごーーーーい!!こんなに鳥が!!いっぱい!!」
「カラス、カモ、ハト、カワウ、サギ、ムクドリ、スズメ、ヒヨドリ、キジ、ヤマドリ、トビにワシにタカ、フクロウ、インコにオウムまで・・・いろんな種類の鳥がワンサカ居るぞ!!」
「あれ?女王様、王様、フラミンゴのベキィさん、クジャクのジャニスさん・・・見えるの?!この風船がひとりでに動いてるの?!」
「え?!あんた達には見えないの?!」
ハクチョウの女王様は、呆然としているウミガラスのアデル、マガモのマガークとクッコ、カナダガンのポピン、ウミガラスのカルガモのガスタ、それと遅れてやってきたコクチョウのプラッキィやシラサギのカルドとアオサギのアルゼ、カワウのレンスは大きく頷いた。
「おいらには見えるヨーー!!」
長い間、大量のゴム風船を詰め込んでいた嘴の袋の弛みを直している、ペリカンのオギがボソッと言った。
「そっか!!あの鳥達・・・見えないのは当たり前かぁ!!」
ハクチョウのフリード王様は、相槌を打った。
「あの鳥達・・・皆・・・実は死んでるんだ。」
「死んでるぅぅぅぅぅーーーーーー!!?????」
水鳥達は激しく仰天した。
「そうだよ。あの風船に集って、遊んでいる鳥達は皆実は、事故に逢ったり人間に駆除されたりして殺されて死んでいるんだ。」
頭に今さっき、膨らませて萎んだ青いゴム風船を乗せてハクチョウのブルンガ大王が水鳥の前にやってきた。
「あの鳥達が見えないのは、きっと『魔力』と共にある『霊力』を持ってないからだと思うよ。ほら、あの風船の山から持ってきたこの透明なゴム風船を膨らませて、廻りを透明な風船沿いに見てごらん?」
ハクチョウのブルンガ大王は、水鳥達に萎んだ透明な風船を渡した。
ぷぅ~~~~~~~~~~~!!
「はっ!!」
「すごい!!」
「こんなにも!!」
「何でここにいっぱい?!」
自ら膨らませた透明な風船を透かして見ている水鳥達は、『能力鳥』のアカショウビンのピルとカワセミのタックやトビのバーグ、マガモのリヤンやトキのモモと一緒にはしゃいで大量のゴム風船で遊ぶ『死せし』鳥達の姿に思わず見入っていた。
「それは・・・実は、この『楽園』もとい『バードランド?』を創設したのはこの俺だ。」
ハクチョウのブルンガ大王は、嘴の鼻の孔をパンパンにして水鳥にむかって言った。
「そして、俺はこのハクチョウの女王様と王様の間に産まれた子だ!!」
「ええええええええ?!」
「そうよ。皆。これはね・・・」
ハクチョウの女王様は、顔を空に向けてこよ『楽園』の創設の経緯をゆっくりとした口調で話した。
「あたいはね、産まれた子達が巣立つ中で1羽だけ残ったあのブルンガと、王様が見守る中、で魔法対決をしたの。
ブルンガはねえ、「後継ぎになりたい」と魔法を所得したいと言い出して、魔法使いに為るための試練としての魔法対決を、あの湖で果し合いしたのよ。
この魔法対決は、壮絶なものだった。
「あ・・・あんた強くなったじゃん・・・!!」
完敗を認めたあたいがブルンガに、言ってやったわ。
「魔術を所得して、いったい何をやりたいの?」
そしたら、息子のブルンガは、
「俺、『バードランド』をこの翼で造る。」
と言い出して、
「えええ?この湖が『バードランド』じゃないの?」
と切り返したら・・・
「いいや、俺の考えている『バードランド』は、無念を抱いて死に行く野の鳥達を癒し、心地よく次世へ飛び立たせるのが目的の『バードランド』だよ。」
って。
「ママぁ、いや、女王様がついせんだって、獣の白いヒグマや4本角のシカが魔術修行に来たでしょ??
このに獣が出没したって、女王様の召し使い達が大騒ぎしたあの大大大事件・・・
女王様、あの修行してきた獣達・・・今何してるのか知ってる?
人間に殺されて無念千万で死んでいった獣達が、快く次の次世に行ける場所を創る為なんだって。
山野に堕ちてたり、街に捨ててある風船を『魔術』で再利用した風船を使ってね。
ここは、人間に傷つけられた鳥達への、風船を使った癒しの場所でしょ?
俺の考えているのとは全くコンセプトが違うんだ。だから・・・!!」
と、目を輝かせて言うもんだから、私はこの修行の最終試練として旅立たせたの。
そしたら、あのブルンガ。
この世界から、あたいがかつてあの湖になってきて『魔術』を授けた弟子、要するにあの海に大量に浮かんでたプラスチックゴミを、ゴム風船に変換した『能力鳥』を呼び寄せて、元々人間が開発して閉鎖された遊園地を大改造して、この豊かな山野や干潟の拡がる『バードランド』を作っちゃったの!!
凄いでしょー!!あたいの息子!!」
「えっへん!!」
ハクチョウのブルンガ大王は、胸を張りドヤ顔をした。
「ふーん。」
水鳥達は大あくびをしたり、透明な風船を翼で突いたりして素っ気ない態度を示した。
「こらー!!あんた達!!」
ハクチョウの女王様は、水鳥達の興味成さそうな態度に憤慨すると・・・
「あーーーーーーっ!!」
フラミンゴのベキィは叫んだ。
「ショー!!あんた『ショー』でしょ?!」
フラミンゴのベキィは、ネックまでパンパンに膨らませたピンク色の風船を自らの羽毛に当てがってブブブブ~~~!!と萎んでいくのを楽しんでいる1羽のフラミンゴを見付けて大声で叫んだ。
「ん?」
『死に体』のフラミンゴのショーが気付いて振り向くと、萎んでが嘴で膨らませた風船を思わず離してしゅーっ。と萎んだ。
「ベキィ?その声はベキィ?!」
「うん。そうだよ!!前世はあんたに不倫してしまった為に・・・こんな目に・・・御免ね・・・!!」
フラミンゴのベキィこ目から、大粒の涙がぶわっ!と溢れ止めどなく流れ落ちた。
ばさっ!ばさっ!ばさっ!ばさっ!
感極まった『死に体』のショーは、涙を流してクシャクシャな顔をしているベキィの側へ飛んでくると、ギュッと翼で抱き締めた。
「僕・・・貴方を今でも愛してると言っていいかなあ?」
「い・・・いいわよ・・・貴方は身体は死んでも、何時までも私の心で生き続けてるわよ。」
「身体は滅んでも、共に生きていた思いでは永遠に残ると言うからね・・・」
「私からも御免ね・・・フラミンゴのショーさん・・・」
クジャクのジャニスは、目から(涙)を流して、フラミンゴのベキィと抱き締め会うショーの前にやって来た。
「御免ね・・・あのピーコック模様の風船・・・『儀式』に女王様が直々にショーさんが使う為の風船・・・勝手に盗んで・・・本当に・・・ごめんなさぁぁぁぁぁーーーーーーい!!!」
クジャクのベキィは、羽毛の懐からゴムが伸びきって萎んだピーコック模様の風船をフラミンゴのショーの目の前に差し出して泣き崩れた。
「いいんだよ!!いいんだよ!!クジャクさん。顔あげて!!せっかくの美貌が台無しだよ。
僕はね、女王様が僕の為に美しいピーコック模様の風船を用意しても、僕は選ばなかったよ。
僕の羽根と同じピンクの風船を選んでたよ。
現に、僕はあの『儀式』の時にピンクの風船を真っ先に選んでたもん。
僕はピンクの風船オンリーでね。ほら。此処にも。」
『死に体』のフラミンゴのショーは、半ば膨らませたピンク色のゴム風船を、クジャクのジャニスは涙で真っ赤に腫れ上がった目で見詰めていた。
「ごめんね・・・私からも謝るわ。ジャニス。
湖で辛く当たってごめんね・・・」
ハクチョウの女王様の目からも、一筋の涙が溢れていた。
「ジャニス、あげるわよ。このピーコック模様の風船。
この風船はあんたのものよ。
あ、ねぇ!!トキさん!!時間を戻す『能力』の・・・」
「あたし?」
ハクチョウの女王様に呼び出されたトキのモモは、鴇色の翼を拡げて女王様の側へ飛んできた。
「ねぇ、トキさん。お願いがあるよ。あ、ジャニス。ピーコック模様の風船貸して。」
ハクチョウの女王様は、トキのモモにクジャクのジャニスのゴムの伸びきったピーコック模様の風船を差し出した。
「この風船、新品の状態に戻せる?」
「膨らますの?やだぁ!!ひとの嘴を付けた風船!!涎バッチリ付いてるんでしょ?鳥インフル・・・げっ!!」
嫌々と怪訝な顔をするトキのモモの側を振り向くと、パンパンに膨らませた巨大風船を目の前で鰭脚の爪で割ろうとする、ハクチョウの女王様に仰天してしまった。
「わ・・・解りましたよ!!師匠!!こ、この風船を新品に戻しますよ!!
だから、そんな物騒なでっかい風船を退けてよ!!」
「そう?」
ハクチョウの女王様は、巨大風船の吹き口を離してぷしゅ~~~~~!!と萎ませて羽毛の懐へ仕舞った。
「あーーーーーーっ!!この風船でっかいなぁーーーーー!!
始めてみたーーー!!」
ハクチョウの女王様の後で声がして振り向くと、1羽の『死に体』のヒドリガモが目を輝かせて興味そうに見上げていた。
「あら?ヒドリガモさん。このでっかい風船欲しそうね。
ごめんねーこれ、あたいの大切な風船なの。」
「それより私、女王様本当に逢いたかった・・・あのね、」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます