第八 二つの静符が一緒に現れる語彙の部

二つの静符が一緒に現れる語彙の編(v3-0404~v3-439)

v3-0404


بسم الله الرحمن الرحيم


静詞の章


الدرك äldrük 駱駝蓬の種。

ارتمان örtmän 屋根の頂上、屋上。

ارتكون örtkün 脱穀後に積み上げた穀物。

ارسلان arslan 獅子。特に王の名前に用いる。此の言葉は諺では此の様に用いる。

  الين ارسلان تتار كوجن سجغان تتماس

  alin arslan tutar küchin sichghan tutmas

 謀り事で獅子をも捕らえる、力では鼠も捕らえられず。この諺は、何か為す時に、腕付くでは無く、人に好きやり方を施す様に説いている。


v3-0405

الدرم öldrüm 死んだ。寝た切り、半身不随、中風に当たる。


本章の別の一類


تركمان türkmän テュルクメン。オグズの一種である。これらの人々が、テュルクメンと称されるのには、此の様な故事が有る。アレクサンドロスがサマルカンドを経てテュルク諸城に向かった頃、一人のテュルク人の若い可汗がいた。その名を「شو shu」と言い、彼は膨大な軍勢を率いており、自らバラサーグーン付近に「شو shu」と言う要塞を建てた。ベグたちに敬意を表す為に、要塞の前で毎日三百六十回太鼓を敲いた。人々は彼に言った。「アレクサンドロスが目前まで来ている。我々は奴と戦うのか?何か指図は無いのか?」。元々「شو shu」可汗は、ホジェンド河流域に哨兵を配置する為、且つアレクサンドロスの渡河の消息を得る為、既に此の河沿いにタルカンから成る四十人の斥侯を派遣していた。斥侯は密かに進んだ為、可汗の将兵たちは誰も其のことを知らなかった。この為、可汗は安心していた。可汗は銀で小さな池を作り、行軍時にも其れを帯同していた。それを水で満たすと、鵞鳥や鴨が喜んで入って泳いだ。可汗は其の銀の小さな池をアレクサンドロスとの戦いを説く人々に見せた後、答えて言った。「お前たち、鵞鳥や鴨を見て見ろ、どうして水に潜るのだろうか?」。可汗の回答に人々は考え込んでしまった。彼らの中には「可汗はアレクサンドロスと戦うつもりか、或いは戦いたくないのか?撤退するつもりか、或いは撤退の準備をしてないのか?」という疑いが生れた。アレクサンドロスが渡河すると、斥侯たちは連夜可汗の所に至って渡河の事を報告した。その晩、可汗は太鼓を敲かせ、東に向かって出発した。可汗は直ぐに出発する準備をして無かったので、人々の間に恐慌と混乱が生じた。家畜を探せる人々は、ぶつかる家畜に慌てて跨って可汗の後を追った。混乱の中、彼は誰かの家畜を捕まえ、誰かは彼の家畜を捕まえた。夜が明けると、宿営地は真直ぐな一筋の河谷に移った。その当時、ティラーズ、イスピジャーブ、バラサーグーン等の城市は未だ無かった。これらは後世に漸く建てられ、これらの地域で活動していたのは帷屋にて生活する遊牧民であった。可汗と其の軍勢が連夜宿営後に去る時、二十二人が家畜を見つけることが出来なかったので、家族を統治に残したままであった。彼らの名は本書に既に列記し、彼らが家畜に烙印するタムガも言及済みである。例えば、「قنق qiniq クヌク」「سلغر salghur サルグル」等である。この二十二人の家が彼らに付いていくか、此の地に留まるかを話し合っていた時、二人が彼らの元に着き、彼らも家族を連れていた。彼らは肩に背負子を担ぎ、軍勢に随行したが、疲労と飢餓で背負子の重圧で背中が汗まみれになっていた。この二戸が取り残され、既に取り残された二十二戸が会って話し合った。二十二戸は彼らに言った。「おい、お前らよ、あのアレクサンドロスがやって来たが、奴は一か所に留まれず、我らの土地にも留まれまい。去って行くだろう。我々はどの道、自分の土地に留まるであろう」。彼らはテュルク語で両戸に言った。「قال اج qal ach お前たちは此の地に残る」。後に彼らは「خلج halach」と呼ばれるようになった。ハラチュ人の起源は斯くの如しである。彼らは此の二部族である。アレクサンドロス到来後、これらの人々の長髪とテュルクに類似した独特の特徴を見て、彼らは有無を言わさず、「تركمان اند türk manänd テュルクに似た」と呼ばれるようになった。そして、この言葉は、今日に至る迄、彼らの名として続いている。テュルクメン人は本来二十四の部族であった。しかし、二つの部族がハラチ人に所属することになり、別方面の彼らとは分別してしまった。その為、彼らはオグズの列には属さなかった。この言葉の起源は此の様である。

 「شو shu」可汗が秦の方に去ると、アレクサンドロスは其の後を追った。回鶻の地に近づくと、可汗はアレクサンドロスに向かって斥侯隊を遣わし、アレクサンドロスも同様な部隊を遣わし、衝突が起きた結果、アレクサンドロスの部隊は敗北した。この衝突が起きた地を「التون قان altun qan アルトゥン・カン」と言う。今でも此の山を「التون خان altun han アルトゥン・ハン」と呼ばれている。アレクサンドロスは此の地で可汗と盟約を立てた。その後、アレクサンドロスは彼の地に留まった時に回鶻の諸城を建立した。アレクサンドロスが去った後、「شو shu」可汗は帰還してバラサーグーンの地まで前進した。その後、己の名を冠した「شو shu」城を建てさせ、其処に魔除けの物を建立した。今でも彼の地には霊験あらたかな城市は残っており、そこを超えることが出来ない。魔除けの物は未だ壊されず存在する。


v3-0408


本章の別の一類

سندرش sandrush 争論。此の言葉は諺では此の様に用いる。

  سبندا سندرش بلسا ارتكون دا ارتش بلماس

  sapanda sandrush bolsa örtkündä ishtäsh bolmas

 耕す時に争えば、稲扱きで争い合わず。この言葉は人々に誡告する。後後の紛争を避けるために、前もって物事を手堅くすべし。


برسمق borsmuq アナグマ。太ってることの比喩。オグズ人は、此の言葉の中の「م」を省略して「برسق borsuq」と言う。しかし、彼らはテュルク人が「穂」の意味で使う「بشق bashaq」に、「م」を加えて「بشمق bashmaq」と言う。

قلدرق qildruq 芒、麦の穂の先の芒。他にも用いる。

قرقلق qorqluq 怖がりな、臆病な。「قرقلق ار qorqluq är」怖がりな人。

ترتكل törtkül 四角い。「ترتكل اؤ törtkül äv」四角い家。あらゆる四角い物について此の様に言える。


v3-0409

برسغان barsghan バルスガーン。アフラスィヤーブの子の名。バルスガーン城は彼が建てた物である。これはマフムードの父の城市である。ある人たちが言うには、回鶻の国王にはバルスガーンと言う名の馬丁がいた。此の地は空気が好いので馬を放った。後に此の名前が地名になった。

برسلان burslan 此の言葉の元の意味は豹である。「ارسلان برسلان arslan burslan 獅子豹子」というのも此れに由来する。

برسلان burslan バルスラーン。男の名。「برسلان burslan」という言葉は単独では使われず、「ارسلان arslan」を加えて対偶詞で用いられる。もし獅子と一緒に使用される時は、此の言葉を男の名として用いられない。何故ならばアラブ語でも斯くの如く、彼らは「هداشى بسن」とは言わず、「حسن بسن」と言う。

قرقلم qirqlum 量り、桝。「قرقلم ساغو qirqlum saghu」一種の量具、これに満たして一単位として数える。


本章中六字の語彙


اكرجكون ikirchgün 躊躇、迷い、ためらい。「اكرجكون ايش ikirchgün ish」迷いごと。ある事をするかしないかを考えている事。「كنكلم اكرجكون بلدي könglüm ikirchgün boldi」我が心は迷ってしまった。

ككرجكون kökürchgün 鳩。


v3-0410


本章中の動詞


القتي alqti 取られた、失った。「ال توارن القتي ol tawarin alqti」彼は財物を取られた。その他にも用いる(القار-القماق alqar-alqmaq)。

 比べて知るべきは、二つの静符が相次いで出現する語彙は少なく、二つ静符は舌尖音の「ن」と「ل」と「ر」に出現する。この静詞と動詞については、考慮に値する規則である。二つの静符は上述の音にのみ出現する。これらの音は言葉を軽くし、二つの音を一つにする。この為、詩人たちは此れ等の言葉を一つの音の位置で用いることが出来る。

اركتي ürkti 驚いた。「قوى اركتي qoy ürkti」羊が驚いた。「بدون اركتي bodun ürkti」(敵が攻めてきたので)民草が驚いた。民衆が慌てふためいた(اركار-اركاماك ürkär-ürkmäk)。

اركتي irkti 貯めた。「ار توار اركتي är tawar irkti」彼は財物を貯めた。その他にも用いる(اركر-اركماك irkär-irkmäk)。


v3-0411

سرجدي sürchdi 転んだ。「ات سرجدي at sürchdi」馬が転んだ。その他にも用いる(سرجار-سرجماك sürchär-sürchmäk)。

سنجدي sanchdi 刺した。戦勝した。「ال اني بجاكن سنجدي ol ani pichäkin sanchdi」彼は匕首で彼を刺した。その他にも用いる。「بك يغيسن سنجدي bäg yaghisin sanchdi」ベグは敵に勝利した(سنجار-سنجماق sanchar-sanchmaq)。

كرسدي kürsdi 満たした。「يكت قانكا كرسدي yigit qannga kürsdi」若者は血が満ちた、成年した。此の言葉の原義は、ある物が皿などを満たすこと、時が満ちること、皿に盛りきれず溢れ出すことである。例えば、もし生地が発酵し、しばらくの間、皿に放っておくと、皿から溢れだしてくる(كرسار-كرساماك kürsär-kürsämäk)。この動詞は、「高慢な、思い上がった」意味を与える名詞の附加成分「سادي sadi/sädi」を構成する。

سرقدي sarqdi 滲みた。痺れた、麻痺した。「سوؤ سرقدي suv sarqdi」水が滲みた。あらゆる液体が、ある物から滲み出ることを此の様に言う。「اذاقم سرقدي adhaqim sarqdi」我が脚は痺れた。即ち動物などに騎乗して脚が痺れた(سرقار-سرقماق sarqar-sarqmaq)。

قرقدي qorqdi 恐れた。「قل تنكريدن قرقدي qul tängridän qorqdi」奴隷は蒼き天を恐れた。その他の物を恐れることも此の様に言う(قرقار-قرقماق qorqar-qorqmaq)。此の言葉は諺では此の様に用いる。

  قري اكوز بلدوقا قرقماس

  qari öküz balduqa qorqmas

 老いた去勢牛は斧を恐れず。この諺は、既に人を脅かす物に慣れてしまった人を指して言う。何故ならば、斧に慣れてしまった去勢牛と同じく、彼も恐ろしい物に慣れてしまったからである。此の言葉は詩歌では此の様に用いる。

  قرقما انكر اترو ترب تكرا يرا

  qorqma angar utru turip tägrä yärä

  قبسا انك البغتن اندن يرا

  qapsa aning alpaghutin andan yara

 敵を恐れる莫れ、ただ向かい合ってぶつかればよい。敵の勇者たちを囲めば、紙を折る様に容易く、折って投げ捨てられよう。


v3-0412

قرقدي qirqdi 刈った。「ال قوين قرقدي ol qoyun qirqdi」彼は羊の毛を刈った。その他にも用いる(قرقار-قرقماق qirqar-qirqmaq)。


v3-0413

سلكدي silkdi 揺らした。「ار يغاج ساكدي är yighach silkdi」男は木を揺らした。その他にも用いる(سلكار-سلكماق silkär-silkmäk)。


本章中の四字の語彙


اندغردي andghardi 誓わせた。「ال اني اندغردي ol ani andghardi」彼は彼に誓わせた(اندغرر-اندغرماق andgharur-andgharmaq)。

كندكردي köndgärdi 真っ直ぐにした、平らかにならした、認めさせた、率いた。「ال يغاج كندكردي ol yighach köndgärdi」彼は木を立てた。「اغريني كنكردي oghrini köndgärdi」泥棒に認めさせた。「ال اني يولقا كندكردي ol ani yolqa köndgärdi」彼は彼を導いた。その他にも用いる(كندكرر-كندكرماك köndgürür-köndgürmäk)。

كرتكندي kirtgündi 信じた。「قل تنكريكا كرتكندي qul tängtigä kirtgündi」下僕は神を信じた。同じく、人の言ったことや為したことを認めることにも此の言葉を用いる(كرتكنور-كرتكنماك kirtgünür-kirtgünmäk)。


 本章の命令形は五字である。例えば、「يغاج كندكر yighach köndgür 木を立てろ」、「تنكركا كرتكن tängrigä kirutgün 神を信じろ」。


v3-0414

 二つの静符が一緒に出現する動詞の中の構成は、語幹に「ت」を加えて使役形と他動詞に適用される。例えば、「ال نانك بركلتي ol näng bärkläntti 彼に物を保たせた」、「ال يغاج كندكرتي ol yighach köndgürtti 彼に木を立てさせた」。

 本章中の他動詞は助動詞「تر tur/tür」を加えて構成できない。例えば、「برتردي barturdi 行かせた」の中の「تر tur/tür」、或いは「ال اني تدغردي ol ani todghurdi 彼は彼に鱈腹食べさせた」の「تدغردي todghurdi」の「غر ghur」、或いは「تنكري الك تركردي tängri ölüg tirgürdi 神は屍を蘇らせた」の「 تركردي tirgürdi」の「كر gür」である。


本章中のムザッワーフ


ترسكاك tärsgäk ものもらい。目の瞼の上に出来た水膨れ。

ترسكاك tärsgäk 腕。


 ムザッワーフの静詞の中、その中間に静符を帯びることのできない語彙がある。ただ「مكه mäkkäh」という一語がある。この中の「ك」は畳音符を帯びる。語尾の「ه」は元々「ا」であった。これは秦から齎された墨汁の一種で、テュルクの文字の書写には使われない。

 中間に静符を帯びた語彙は派生語の中でも行われない。


v3-0415


本章中の動詞


ارتي artti 増えた。「ارتي نانك artti näng」増えた、物が。「انك اياكوسي ارتي aning äyägüsi artti」彼の肋骨が増えた。これは己惚れて他人を侮る人への諷刺である(ارتار-ارتماق artar-artmaq)。

ارتي örtti 覆う。「ال ارتي نانكني ol örtti nängni」彼は覆った、物を(ارتار-ارتماق örtär-örtmäk)。

ارتي ärtti 過ぎた。「اذلك ارتي ödhläk ertti」時が過ぎた。「ار اؤندن ارتي är ävindän ärtti」人が彼の家を過ぎた。人が通り過ぎることも此の様に言う(ارتار-ارماك ärtär-ärtmäk)。

برتي bärti 傷める。「ال انك الكن برتي ol aning älikin bärtti」彼は彼の手を傷めた。傷つけられても何も感じない物についても、此の様に言う(برتار-برتماك bärtär-bertmäk)。

ترتي türtti 塗った。「كونكا ياغ ترتي köngä yagh türtti」皮に油を塗った。あらゆる塗る行為を此の様に言う(ترتار-ترتماك türtär-türtmäk)。

ترتي tartti 持った、引いた、脱いだ。「ال يرماق ترتي ol yarmaq tarti」彼は銭を持った。その他にも用いる。「ال يب ترتي ol yip tartti」彼は糸を引いた。「ال ترت ترتي ol tartin tartti」彼は麺を引いた。あらゆる物を伸ばすことも此の様に言う。「ال اتوكن ترتي ol ätükin tartti」彼は靴を脱いだ(ترتار-ترتماق tartar tartmaq)。此の言葉は諺では此の様に用いる。

  سوؤ كرماكنجا اتك ترتما

  suv körmäginchä ätük tartma

 水を見るまで靴を脱ぐな。この諺は、何かが起きても慌てるな、と戒めている。


v3-0416

جرتي chärtti 放った。潰した。「ال جرتي نانكني ol chärtti nängni」彼は放った、物を。「ال يرماق اوجن جرتي ol yarmaq uchin chärtti」彼は銭の縁を潰した。あらゆる物の縁の尖がりを潰すことを此の様に言う(جرتار-جرتماق chätär-chärtmäk)。

سرتي sürtti 擦った。「ال اتماكا ياغ سرتي ol ätmäkkä yagh sürtti」彼はナンに油で擦った。「ال يرماقغ تاشقا سرتي ol yarmaqigh tashqa sürtti」彼は銭を石で擦った。他にも用いる(سرتار-سرتماق sütär-sürtmäk)。

كرتي kärtti 刻んだ。印を打った。「ال يغاج كرتي ol yighach kärtti」彼は木を刻んだ。「ال قلن بيني كرتي ol qulin boyni kärtti」彼は奴隷の首を刻んだ。即ち、奴隷の首に印を刻んだ。これは、奴隷虐待への諷刺である(كرتار-كرتماك kärtär-kärtmäk)。


v3-0417

 本章の命令形は三字である。例えば、「ارت ert 草を除け」、「كرت kert 印を打て」等である。これらの動詞は元来三字であり、発音時には二字になる。動詞のあらゆる変化は上述の規則の通りである。


本章中の四字の語彙


ابرتم öpürttüm 我は飲ませた。「من انكر سوف ابرتم män angar suf öpürttüm」我は彼に水を飲ませた。他にも用いる(ابرتمن-ابرتماك öpürtürmän-öpürtmäk)。

اسرتي äsürtti 酔わせた。「سجك اني اسرتي süchik ani äsürtti」酒は彼を酔わせた(اسرتر-اسرتماك äsürtür-äsürtmäk)。

اسرتي isirtti 齧らせた。「ال انكر اتماك اسري ol angar ätmäk isirtti」彼は彼にナンを齧らせた。その他の物を齧らせることも此の様に言う(اسرتور-استماق isirtur-isirtmaq)。

كرتي ägirtti 紡がせた。「ال كنكا يب اكرتي ol küngä yip ägirtti」彼は婢女に糸を紡がせた。城堡を落す為に、包囲させることも、此の様に言う(اكرتور-اكرتاك ägirtür-ägitmäk)。

الرتي alartti 睨んだ。「ال انكار كوزن التي ol angar közin alartti」彼は彼の眼を睨んだ(الرتر-الرتماق alartur-alartmaq)。


v3-0418

الرتي ilätti 着かせた、くっ付けた。「 ال انك كوزينكا بير نانك الرتي ol aning közingä bir näng ilätti」彼は彼の眼に物を着かせた。即ち、ある物の影が彼の目に射した(الرتر-الرتماك ilätür- ilärtmäk)。

امرتي amurtti 抑えた、鎮めた。「ال بك ابكاسن امرتي ol bäg öpkäsin amurtti」彼はベグの怒りを鎮めた。馬の激しい気性や鍋の沸騰を鎮めることも此の様に言う。此の言葉は詩歌では此の様に用いる。

  تسن منب سكرتسن

  tosun münüp säkirtsün

  اسزلكن امرتسن

  äsizlikin amurtsun

  اتقا كيك قيترتسن

  itqa käyik qaytartsun

  تتمش ساني امنلم

  tutmish sani umnalim

 一人の若者を褒める時には此の様に言う。彼はじゃじゃ馬に乗って馴らした後、狩へと赴く。犬に獲物を持ち返らせた時、我らは其の獲物に肉を喰らうことを望む。


v3-0419

جبرتي chubartti 奪った。「اغري ارك جبرتي oghri ärig chubartti」泥棒は人を奪った。即ち、人の財物を奪った、きれいさっぱり奪い取った(جبرتر-جبرتماق chubartur-chubartmaq)。この言葉は「جبرتوسيدي chubartusidi」という形式でも用いる。

جبرتي chibirtti (小枝で)叩いた。「ال اغلن جبرتي ol oghlin chibirtti」彼は子供を小枝で叩いた(جبرتور-جبرتماق chibirtur-chibirtmaq)。

قبرتي qopurtti 起こした。「ال ارك ارتندن قبرتي ol ärig ornindin qopurtti」彼は人を床から起こした。その他にも用いる(قبرتور-قبرتماق qopurtur-qopurmaq)。

قبرتي qapartti たこをつくった、まめをつくった、大袈裟にした。「اتك اذاقغ قبرتي ätük adhaqligh qapartti」靴は足を水膨れにした。これは腫れた後に出来るまめである(قبرتور-قبرتماق qapartur-qapartmaq)。「ال سوزك قبرتي ol sözüg qapartti」彼は話を膨らませた。話を大げさに言う人を「قبرتغان qapartghan」と言う。


v3-0420

كبرتي köpürtti 泡立てた。「اوت اشجني كبرتي ot äshichin köpürtti」火は鍋を泡立てた。ある物の口や水面などに現れた泡沫を此の様に言う(كبرتور-كبرتماك köpürtür-köpürtmäk)。

قترتي qatartti 返した。「اتغ قترتي atigh qatartti」馬首を返した(قترتر-قترتماق qatirtur-qatirtmaq)。

قجرتي qachurtti 躱した、逃がした。「ال اني قجرتي ol ani qachurtti」彼は彼を逃がした(قجرتر-قجرتماق qachurtur-qachurtmaq)。

قذرتي qadhirtti 振り返させた、曲げた。「ال انك بينن قذرتي ol aning boynin qadhirtti」彼は彼の首を振り返させた(قذرتر-قذرتماق qadhirtur-qadhirtmaq)。

قررتي qarartti 黒くした、黒ずんだ。「ال انك تونن قررتي ol aning tonin qarartti」彼は彼の服を黒くした。その他にも用いる(قررتر-قررتماق qarartur-qarartmaq)。

قزرتي qaizartti 紅くした、赤くなった。「ال قزرتي نانكني ol qizartti nängni」彼は赤くした、物を(قزرتر-قزتماق qizartur-qizartmaq)。


v3-0421

سؤرتي savurtti ひらかした、(穀物を)風選させた。「ال انكر ترغ سؤرتي ol angar tarigh savurtti」彼女は彼に小麦を風選させた。その他にも用いる(سؤرتر-سؤرتماق savurtur-savurtmaq)。

سكرتي säkirtti 跳ねさせた。「ال ات سكرتي ol at säkirtti」彼は馬を跳ねさせた。その他にも用いる(سكرتر-سكرتماك säkirtür-säkirtmäk)。

كجرتي kächürtti 渡らせた、過ごさせた。「ال انكر سوف كجرتي ol angar suf kächürtti」彼は彼に水を渡らせた。自分以外の人に有る事を経歴させることも此の様に言う(كجرتر-كجرتماك kächürtür-kächürtmäk)。

 本章の命令形は四字の言葉である。例えば「سكرت säkirt 跳ねろ」。しかし発音の時は三字の言葉と相同じである。

 動詞から派生した形容詞、形動詞、場所時間の名詞と工具の名詞は、各所で説明した規則に按じて構成される。これらの言葉について言うと、規則は通用しており、違反できない。


本章中のミサッラル


يلتغا yaltgha 諷刺、当て擦り。「ال اني يلتغا قلدي ol ani yaltgha qildi」彼は彼を揶揄した。


v3-0422

يلدرق yaldruq 光る、輝く。「يلدرق نانك yaldruq näng」光る物。即ち、盆の類で光る物。化粧した女性たちを「يلدرق اشلار yaldruq ishlär」と愛称する。この二つの言葉の「ى」には合口符を付けて読む。

يرتماق yartmaq 銅銭。回鶻語。


本章中のムザッワーフ


يرسغاج yarsghagh 山や其の他の場所で滑る所。


本章中の別の一類


يلدرغا yoldrugha とても長く湾刀に似た植物。時には、此の言葉の中の「د」が動符化して「يلدرغا yoldurgha」と読むこともある。


v3-0423

يرسكو yärsgü 「ايا يرسكو aya yärsgü」蝙蝠。チギル語。人によっては「يرسا yärisä」とも言う。


語末の字にイラートを帯びた語彙


يرنجغا yorinchgha 苜蓿。

يلنجغا yilinchgha 薄味な、不味い。「يلنجغا اش yilinchgha ash」油気や塩気が無く、味の無い、食べ難い料理。

يمرتغا yumurtgha 卵。鶏及び野鳥の卵。人類及び動物の睾丸も「يمرتغا yumurtgha」と言う。

يمرتغا yimirtgha 新鮮で柔らかい。「يمرتغا ياش yimirtgha yash」瑞々しい野菜。即ち、ホウレン草や菜っ葉の様な茎の無い野菜。胡瓜の様な脆い物も「يمرتغا yumirtgha」と言う。


本章中の動詞


ياذتي yadhti 敷いた、広げた。「ال يذتي نانكني ol yadhti nängni」彼は広げた、物を。敷布の様なものの上にナンを広げた(يذار-يذماق yadhar-yadhmaq)。


v3-0424

يوذتي yodhti 擦った、消した。「ال تبراق يوزندن يوذتي ol topraq yüzindin yodhti」彼は土を顔から拭った。「ال بتك يوزتي ol bitik yodhti」彼は字を消した。その他にも用いる(يوذار-يوذماق yodhar-yodhmaq)。

يوذتي yüdhti 失った。「ال يك يوذتي ol yük yüdhti」彼は荷を失った(يوذار-يوذماك yüdhär-yüdhmäk)。

ييذتي yädhti 結いた。「ال يتكاك ييذتي ol yätgäk yädhti」彼は包みを結わいた。即ち、荷物の帯や風呂敷包みを緊く結わいた(ييذار-ييذماك yädhär-yädhmäk)。


本章中の三字の語彙


يرتي yortti 速歩させた、小走りさせた。「اتلغ يرتي atligh yortti」乗り手は(馬に)速足させた(يرتور-يرتماق yortur-yortmaq)。某所の方言では「يرتار yortar」とも言う。

يرتي yirtti 裂いた、破った。「ال تونن يرتي ol tonin yirtti」彼は服を引き裂いた(يرتار-يرتماق yirtar-yirtmaq)。

ينجدي yänchdi 潰した、踏みつけた。「ال قاغونغ ينجدي ol qaghunugh yänchdi」彼は甜瓜を潰した。即ち甜瓜を地面に置いて足で踏みつけた。その他にも用いる(ينجار-ينماك yänchär-yänchmäk)。


v3-0425

يلقدي yalqdi うんざりした、倦んだ。「ال ياغقا يلقدي ol yaghqa yalqdi」彼は油に運𐰔入りした。即ち、彼は油を受け付けず、うんざりさせられた(يلقار-يلماق yalqar-yalqmaq)。此の言葉は諺では此の様に用いる。

  يلقسا يما ياغ اذكو كويسا يما كون اذكو

  yalqsa yämä yagh ädhgü köysä yämä kün ädhgü

 倦んでも油は好い、焼けても陽は好い。人がどんなに油を厭おうとも、干からびたら辛い食事よりは好い、太陽がどんなに人を焦がそうとも、霧の中の暗闇に立つよりはまし。

يلقدي yilqdi 擦り剥けた。「تاش انك اذاقن يلقدي tash aning adhaqin yulqdi」石で彼の脚は擦り剥いた。物と物が擦れて傷付くことも此の様に言う(يلقار-يلقماق yulqar-yulqmaq)。

يلقدي yulqdi 搾った。「ال اندن نانك يلقندي ol andin näng yulqdi」彼は其処から物を搾った。その意味は、彼は彼の所から旨い事やって物を得た(يلقار-يلقماق yulqar-yulqmaq)。


本章中の四字の語彙


يبرتي yapurtti 覆い隠す、平らかにする。「ال سوزك يبرتي ol sözüg yapurtti」彼は話を隠した。誤魔化すことを此の様に言う。「ال ييرك يبرتي ol yärig yapurtti」彼は土地を平らかにした、即ち耕す為に整地した。散らばった物を集めることも此の様に言う(يبرتور-يبرتماق yapurtur-yapurtmaq)。


v3-0426

يشرتي yashartti 茂らせた。「يمغر اوتغ يشرتي yaghmur otugh yashartti」雨は草を生い茂らせた(يشرتر-يشرتماق yashartur-yashartmaq)。

يغرتي yughurtti 捏ねる、混ぜ合わせる。「ال انكر اون يغرتي ol angar un yughurtti」彼は彼の為に面生地を捏ねた(يغرتر-يغرتماق yughurtur-yughurtmaq)。

يكرتي yügürtti 走らせた。「ال اني يكرتي ol ani yügürtti」彼は彼を走らせた(يرتر-يكرتماك yügürtür-yügürtmäk)。


本章中の別の一類


يلدردي yaldradi 輝いた、光った。「كون يلدردي kün yaldradi」陽が輝いた。雷や火が煌くことも「يلدردي yaldradi」と言う(يلدرير-يلدريماق yaldrir-yaldrimaq)。

يلدردي yoldradi 光った、煌いた。「قلج يلدردي qilich yoldradi」刀が煌いた。宝物や鉱石の閃光も此の様に言う。「ى」が開口符を帯びる時、光り輝くことを表す。もし合口符を帯びれば、宝物や鉱石の煌きを表す(يلدرير-يلديماق yoldrir-yoldrimaq)。


v3-0427


本章中のマンクース


اينج inch 安らか、安心、安静。此の様に言う「كنكل اينجمو köngül inchmu 心は安らかですか?」。「اينج كند inch känd」インチュケンド、黒い外着を着た人々が暮らす街の名称、神に呪われて、後に倒壊した。

كانج känch 子供。あらゆる動物の子も此の様に言う。

كانج ليو känchliyü 節日や王の宴席上、食べ競う為に準備された九段の高さの搭状の食卓。


本章中の四字の語彙


قافغر qafghar カーフガル。橙色の絹織物。

بارلغ barligh 懐が豊か、裕福。「بارلغ ار barligh är」裕福な人、懐が豊かな人。

اوزلك özlük 己の、私有の、自分専用の馬。人が専有するあらゆるものについて此の言葉を用いることが出来る。


v3-0428


本章中の動詞


ايذتي idhti 送った、遣わした。「ال منكا ات ابذتي ol manga at idhti」彼は我に馬を贈った。他にも用いる。「تنكري يلاوج اذتي tängri yalawach idhti」テングリは使いを遣わした(ايذور-ايذماق idhur-idhmaq)。

بيذتي bädhti 弱った。「انك كوزي بيذتي aning közi bädhti」彼の眼は弱った、見る物が朦朧とした(بيذار-بيذماك bädhär-bädhmäk)。

بوذتي budhti 冷えた、凍った。「ار تملغقا بوذتي är tumlughqa budhti」彼は凍えて凍った、即ち凍死した(بوذار-بوذماق budhar-budhmaq)。

توذتي todhti 飽きた、食べ飽きた。「منك قرن توذتي mäning qarin todhti」我が腹は食べ飽きた(توذار-توذماق todhar-todhmaq)。ある方言では「توذور todhur」とも言う。

تيذتي tidhiti 限った、止めた。「ال اني اشقا تيذتي ol ani ashqa tidhti」彼は彼の飯を止めた。あらゆることを制限することを此の様に言う(تيذار-تيذماق tidhar-tidhmaq)。

سوذتي sudhti 吐いた、唾した。「ار سوذتي är sudhti」人が唾した。他にも用いる(سوذار-سوذماق sudhar-sudhmaq)。此の言葉は諺では此の様に用いる。

  كوكا سوذسا يوزكا تشور

  kökki sudhsa yüzgä tüshür

 天に唾すれば顔に落ちる。天に向かって唾を吐けば、自分の顔に落ちる。この諺は、自分よりも地位の高い人間に敵対する人について言っている。敵意に拠って齎される苦難は、吐いた唾が自分の顔に落ちる様なものである。


v3-0429

سيذتي sidhti しっこした、ゆばった/ゆまった。「ار سيذتي är sidhti」人がしっこした(سيذتار-سيذماك sidhär-sidhmäk)。

قاذتي qadhti 吹雪の中で死んだ(قاذار-قاذماق qadhar-qadhmaq)。

قوذتي qodhti 下した、除いた、捨てた。「ال ايسن قوذتي ol ishin qodhti」彼は事をやめた。あらゆる物事が止めらることを此の様に言う(قوذور-قوذماق qodhur-qodhmaq)。

  اغلم سكا قذرمن اردم اكت خمارو

  oghlum sanga qodhurmän ärdäm ögüt humaru

  بلكا ارك بلب سن بقل اننك تبارو

  bilgä ärig bolup sän baqqil aning tabaru

 我が子よ、我はお前に礼儀と美徳を残そう。お前は学問を求めて、有徳の人に近づき、彼らから学べよ。


v3-0430

كاذتي kädhti 着た。「ار تون كاذتي är ton käshti」彼は衣を着た。その他にも用いる(كاذار-كاذماك kädhär-kädhmäk)。

كوذتي küdhti 待った。「ال مني كاذتي ol mäni küdhti」彼は我を待った。「ال قوي كوذتي ol qoy küdhti」彼は羊を牧した。その他にも用いる(كوذار-كوذماك küdhär-küdhmäk)。此の言葉はオグズ語である。


زانبي zanbi 蟋蟀。「زانبي ارت zanbi art」ザンビ・アルト。「قجنكار باشي qochngar bashi コチャンガル・バシ」と「بلساغون balasaghun バラサーグーン」の間にある峠。

ساؤجي savchi 使者。偉大なる神から遣わされた使い、聖人。此の言葉は元々「知らせ、諺と話」の意味の「ساؤ sav」から来ている。


v3-0431

ساؤجي savchi 仲立ち。親しい家の間で知らせを伝える人。オグズ語。

كارژو kärzü 投射用に準備された泥丸。

سالجي salchi 賄い方。此の言葉は元来この意味にも関わらず、後に包丁を「سالجي بجاك salchi pichäk」と呼ぶようになった。

جاؤلي chavli 胡桃の殻。柴の火おこしに使われる。

جوؤلي chovli 笊。麺片などを濾す笊。樹枝を湿らせて編む勺子の様な形状。

كاؤلي kävli 河口。この三つの言葉はケンチェーク語である。


本章中の別の一類


اسرتغو asurtghu くしゃみをさせる。「اسرتغو ات asurtghu ot」くしゃみをさせる草。

اغرتغو aghartghu 小麦を水に浸して醸造する米酒に似た飲料。

اسرتغق asurtghuq 賢い、敏い。「اسرتغق ار asurtghuq är 」賢い、敏い人。


v3-0432

امرجكا ämirchkä 軟骨。

قلدرغا qaldurgha ごわごわする。「قلدرغا تون qaldurgha ton」ごわごわする服。紙などのざわざわした物を此の様に言う。


本章中の動詞


ارتلادي artladi びんたした。「ال اني ارتلادي ol ani artladi」彼は彼をびんたした(ارتلار-ارتلاماق artlar-artlamaq)。

ارقلادي irqladi 占った。「قام ارقلادي qam irqladi」カムは占った(ارقلار-ارقلاماق irqlar-irqlamaq)。

اركالادي ärglädi 踏んだ。「ال ييرك اركلادي ol yärig ärglädi」彼は地を踏んだ。その他にも用いる(اركلار-اركلاماق ärglär-ärglämäk)。此の言葉の別形式が「اكلادي äglädi」である。

اركلادي örklädi 繋ぎ留めた。「ال اتغ اركلادي ol atigh örklädi」彼は馬を繋ぎとめた(اركار-اركلاماك örklär-örklämäk)。

تربلادي turplandi 模った。「ارتربلدي نانكني är turpladi nängni」彼は模った、物を。即ち物の雛型を作った(تربلتر-تربلاماق turolar-turplamaq)。


v3-0433

سريلادي surpladi 占った、択った。「ال ارنكاك بلا سريلادي ol ärngäk bilä surpladi」彼を指と共に占った(سريلار-سريلاماق surplar-surplamaq)。※

كريلادي kürpländi 肉を焼いた。「ال قزي كريلادي ol qozi kürpländi」彼は仔羊の肉を焼いた。即ち地上に穴を掘って仔羊の肉を焼いた(كريلار-كريلاماك kürplär-kürplämäk)。※

  ※本来「ب」の筈だが、原文のママ「ى」とした。

سرتلادي sartaldi 商人と見做した。「ال اني سرتلاردي ol ani sartaldi」彼は彼を商人と見做した(سرتلار-سرتلاماق sartlar-sartlamaq)。

سرتلادي sirtladi 組んだ、登った。「يني سرتلادي yipni sirtladi」糸を(馬の尻尾)に織り込んだ。人が小さな渓谷沿いに高所に登ることも此の様に言う(سرتلار-سرتلامق sirtlar-sirtlamaq)。

قرتلادي qarladi 老いさせた。「ال ارك قرتلادي ol ärig qartladi」彼は人を老いさせた。即ち、彼の性格が老成した。傷口や創傷を治すことも此の様に言う(قرتلار-قرتلاماق qartlar-qartlamaq)。


v3-0434

ترقلادي turqladi 量った。「ال ييرترقلادي ol yär turqladi」彼は土地を量った。馬の体躯や其の他の物を量るのも此の様に言う(ترقلار-ترقلاماق turqlar-turqlamaq)。

بركلادي bärkländi 預かった。「ال توارن بركلادي ol tawarin bärklädi」彼は財物を預かった。人や其の他の物を預かったり、あらゆる物を保管することを此の様に言う(بركلار-بركلاماك bärklär-bärklämäk)。此の言葉は本来「بكلادي bäklädi」である。「壁が築かれた、しっかりと掌握してる地」を意味する「برك يير bärk yär」から来ている。

تركلادي tärklädi 催促した、駆り立てた。「ال ايشغ تركلادي ol ishigh tärkilädi」彼は仕事を責付いた(تركلار-تلركلاماق tärklär-tärklämäk)。

تركلادي türklädi テュルク人と見做した。「ال مني تركلادي ol mäni türklädi」彼は我をテュルクと見做した。ある人をペルシャ人(アラブは除く)にすることも同じように言うتركلار-تركلاماك türklär-türklämäk)。


 本章中の命令形は五字の語彙である。例えば、「بركلا نانكني bärklä nängni 物を預かった」の中の「بركلا bärklä」と卜占の意味の「سريلا surpla」である。しかし、これらの語彙は発音時は四字の語彙と同じである。便宜上この一列に配置した。何故ならば、その中の二つの静符が発音時にはっきりしないからである。そこで詩人は其れ等を一つの字と見做すのである。この事は既に上述した。これらの語彙の其の他の格変化は、既に言及済みの規則通りである。


v3-0435

 本章中の動詞の三分類:

 其の一:動詞に某者と見做す意味が現れている。例えば、「تركلادي türklädi テュルクと見做した」。

 其の二:二つの静符を帯びた名詞で構成される動詞。例えば、「توى قرقلادي täwäy qurtladi 駱駝の虫取りをした」。その他にも用いる。

 其の三:上述の意味を表さず、動詞自体が意味を持つ。例えば、「ال توارن القدي ol tawarin alqdi 彼は財物を取り扱った」と「ار يلقدي är yalqdi 人が食べ飽きた」等である。


四字の語彙


تلدرادي tuldradi 散らした、お開きにした。「توى تلدرادي toy tuldradi 宴をおひた木にした(تلدرار-لدراماق tuldrar-tuldramaq)。


v3-0436

قلدرادي qaldradi ごわごわした。「تون قلدرادي ton qaldradi」服がごわごわした。その他にも用いる(قلدرار-قلدراماق qaldrar-qaldramaq)。

جلدرادي chaldradi ちゃりちゃりした。「تاش جلدرادي tash chaldradi」石がチャリチャリした。その他にも用いる。鎖などが落ちた時の音も此の様に言う(جلدرار-جلدراماق chaldrar-chaldramaq)。

كلدرادي küldrädi ちゃぽんとした。「تاش قذغ اجرا كلدرادي tash qudhugh ichrä küldrädi」石が井戸の中でちゃぽんとした。此の様にして深さを知る(كلدرار-كلدراماك küldrär-küldrämäk)。


「ج」で組成されるグンニーの語彙


اتنج ötünch 借り物。「من انكار يرماق اتنج بيردم män angar yarmaq ötünch bärdim」我は彼に銭を貸してやった。オグズ語。

اتنج utunch 恥じらい。「اتنج ايش utunch ish」恥ずかしい事。オグズ語。


v3-0437

اجنج üchünch 第三の、序数。これには規則が有り此の様である。十以下の数字の末尾に「نج」を加えて序数の意味を持たせる。例えば、「تورتنج törtünch 第四」、「بيشنج bäshinch 第五」。これらは本来「تورت tört」と「بيش bäsh」である。序数の意味を持たせるために、末尾に「نج」を加えるのである。

 十以上の数字も上と同じ様に構成する。例えば、「اوننج onunch 第十」、「يكرمنج yigirminch 第二十」。二十は十九の続きである。これは一つの規則である。

ارنج ärinch ~のようである。「ال بردي ارنج ol bardi ärinch」彼は行ったようだ。

ارنج urunch 賄賂。

ارنج ärinch 裕福、過ぎたる生活。ある方言では「ژ」を付けて「ارنژ är inz」と言う。

اؤنج avinch 慕わしい。心から夢中になっている物。

اكنج ikinch 第二。「اكنج نانك ikinch näng」第二の物。

اكنج ökünch 悔み。「ال انكر اكنج قلدي ol angar ökünch qildi」彼は彼に悔やんでいた。

اكنج ögünch 称賛。


v3-0438

النج ilänch 曲がった、折れた。「النج يول ilänch yol」曲がった道。

النج ilänch 冷やかし、揶揄い。荒唐無稽な事に怒ったり、揶揄ったりする人。

امنج umunch 望み。「امنج تنكريكا umunch tängrigä」望みを神に。

اننج inanch 信頼、頼るべき。「اننج بك inanch bäg」も此れに由来する。

اننج onunch 第十。「اننج يرماق onunch yarmaq」十枚目の銭。


本章中の動詞


ينجكالندي yinchkäländi へつらった、従った、妾を蓄えた。「ال منكا ينجكالندي ol mängä yinchkäländi」彼は我にへつらった。「ال قيزغ ينجكالندي ol qizigh yinchkäländi」彼は娘を妾にした。「قل تنكريكا ينجكالندي qul tängri gä yinchkäländi」僕は神に従った。即ち信徒が宇宙の創造主に帰依し、散財して祈祷した、斎戒した、礼拝した、且つ服従した(ينجكالنور-ينجكالنماك yinchkälänür-yinchkälänmäk)。


二つの静符が一緒に現れる語彙の編は完。これは八編の最後である。宇宙の創造者であり教育者である神の歓呼を願う。


v3-439


 フサインの子マフムード曰く。テュルク諸語の語彙を集め、その規則と原理を明らかにし、その差異を明らかにした。我等は本書の冒頭で部を分ける条件を既に見立てた。我等の話は既に実践し、その願いを実現した。我は既に書中から煩雑、不適切、不必要な物を削除した。そして本書を長久かつ広範に流布させる為、不朽の名著として残さん。我等の著述を締めくくる。

 願わくば、神より永遠の歓呼があらんことを。願わくば、神の使者及び其の後裔たちが限り無い恩沢を享けんことを。

 偉大なる神の卑小な奴僕スワール人、後にディマシュク人となったムハンマド・イブン・アブー・バクル・イブン・アビルファトファー(神の許しあれ)が、原稿から清書し、本書は六六四年一〇月二七日の日曜に完成した。

 此処に、我こそマフムード・カシュガリー自らが書写した稿本の末尾の原文抄録は以下の通りである。

 我は四六四年五月初に執筆を始め、四回の修訂を繰り返して編纂し、四六六年六月十日の月曜に完稿した。

 لَاحَوْلَ وَلَاقُوٌةَ اِلًا بِاللًىِ اْلعَلَىِ اْلعَطيمِ وَهُوَمَسْبُنا وَنعْمَ الْوَكيِلْ


全書完









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抄訳『突厥語大詞典』 犬單于 𐰃𐱃 𐰖𐰉𐰍𐰆 @it_yabghu

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