第19話 エピローグ

お久しぶりです。私は妖精ヘル。大岩さん達との戦いから、長い年月が過ぎ去りました。大岩さんとミルクさんの物語は、何処で落ち着くのでしょうか? 私は、『リセットボタン』という強力な兵器に、おびえる毎日を過ごしています。私はこの星の化身として、人々の関わりを消したくはない。売る者の時代とは、『リセットボタン』に辿り着くための時代でした。

売る者という名前の青年は、『世界の人々』から迫害を受け、隔離されます。青年売る者は、内気な性格から、それが『全て』と勘違いしました。売る者は、テレビゲームでいうところの凶悪なモンスターへと、姿を変えたのです。

だからこそ、売る者は人間でありたいと願い、『リセットボタン』で自分も含め世界を、消し去ろうとしました。だから、それは復讐ではなかったのですね。売る者は、長い度の中で『後悔』をします。モンスター売る者は、自らの体が限界なことに気づきました。

ここで、売る者のコピーを作るためのサラブレッド計画を発動しました。青年売る者の意思を継いだのは、大岩さんの姉リサさんでした。リサさんは、大切な人を守ろうとする『心』を持っていました。ここで売る者は、自分自身にも大切な人を守ろうとする心があることに、気がついたのですよ。何故なら、くとたリサさんは売る者のコピーですから。売る者の心は、自らを追い詰めた『世界中の人々』と大して変わりはなかったのですねえ。

売る者が答えに辿り着くまでに、莫大なお金と高度な技術が生まれたのも事実です。それらを人々は、『売る者の時代』と呼ぶのでしょう。自らの心を弱いと認めた『サッツ』を中心とした戦い『サッツの乱』では、人が人を縛り付けました。その『サッツの乱』は、売る者の技術が無ければ発生しなかったでしょうね。

この物語の最後で、大岩さんに立ちはだかったラスボス『キツタ』の迷いも、同様でしょう。私ヘルも覚悟はしていましたが、『キツタ』は新しい『リセットボタン』である『ピンポイントリセット』を唱えました。再び私の人々への愛着心はおびえたのです。

私の愛は、大岩さんとリサさん、それにミルクさんにより、強力になったのですよ。大岩さん達は、戦場を『守る心』により駆け抜け、二つの大きな戦いは終結した。お金と技術を『売る者の時代』と呼ぶのなら、大岩さんとキツキツさんの友情は、高い技術に心を吹き込んだということになります。キツタさんの研究にも、大きな影響を与えたのでしょう。

心のないお金と技術は、勇者ミルクが黙っていません。リサさんの魂である大岩さんは、いま売る者を追いやった『人々の心の闇』と向き合おうとしています。

「私は勇者として世界を救い続けた。そうしたら、いつの間にか金が底をついていた。売る者である大岩なら何とか出来るはずだ」

と、ミルクさんは言っています。

あらあらミルクさんは、自らのすべきことはやりきったと思い、テレビゲームにふけっていたようです。大岩さんは、『リサさんからの宿題』である、自らの喜びを見つけています。それは、『売る者の時代』が生んだ副産物であると言えるでしょう。それが無ければ、ミルクさんやキツキツさんと、大岩さんは巡り会えなかった。

大岩さんは、ミルクさんのわがままが、喜びの一つのようですね。大岩さんは考え、自分とミルクさんのこれからのため、人々の心の闇と戦う術を思いついたのかな?

おっと、大岩さんは最新技術ムードの研究により、図書館のキオラさんと連絡が取れたようです。

「あー、大岩さんですね。えっ、私の声が出ている? 凄いです。ミルクさんが破産した? ねえ、大岩さん。私は世界一なのです。図書館のトップです。デキるオンナなのです。つまり、忙しい! アホな話なら他を当たれー!」

キオラさんは、そう言いつつも大岩さんの考えは理解したようで、何よりですね。センロさんも同じ考えです。

「大岩か。なに、ミルクが破産したって? 知ったことか! えーと、キオラが参加するのか。ならば、俺も参加する」

フブキさんは、大岩さんの計画が心配な様子。

「今日も客入りが少なくてヒマだ。ところで大岩よ、人々の心の闇を集めることは、かなり危険だぜ。ミルクを勇者として信頼しているのはわかる。だが、三つの図書館のお客様を巻き込むなら覚悟しろよ」

どうやら大岩さんは、人々の心の闇をみんなで、退治しようとしているのですね。

大岩さんとミルクさんは、売る者の時代のツメ跡を、時に楽しみ今は解決しようとしている。ツメ跡とは、三つの図書館と巡り会えた技術。もう一つの側面として。技術で生まれた図書館達は兵器にもなりうること。大岩さんと三つの図書館の絆は強く、『兵器』にはならないと私は信じていますよ。

三つの図書館で、ゲーム大会が始まりました。大岩さんは、三つの図書館が育てた『お客様』の考え方の数々に、今更ながら感心している様子。これなら、フブキさんの危惧した計画の危険性はないでしょう。

ミルクさんは、大岩さんの用意したステージに降り立つ。ミルクさんを中心として、人々の心の闇にメスを入れることが出来ました。これこれ大岩さん、ミルクさんを特別扱いしてはいけません。三つの図書館は、大岩さんの計画を拡大しようと考えているようですね。かつて、売る者が恐れた人間の醜さとは、今たくさんの人々が向き合おうとしている。解決は難しいけれど、一歩踏み出すことも大切だね。これも含めて、『売る者の時代』は続いているのでしょう。

ミルクさんに、たくさんの手紙が図書館のお客様達から届いています。一つ一つ解決しようと、ミルクさんは苦笑い。大岩さんは、ミルクさんが一つの目標を見つけたことに喜んでいます。心の闇は、これからもたくさん生まれていくでしょう。

でも、大丈夫。勇者ミルクここにあり、ですよ。青年売る者は、二度とリセットボタンに頼りはしない。リサさんの作り上げた人形『大岩さん』は、多くの繋がりに感謝する心を持っている。売る者よ、大岩さんの中で今も宿っているのなら、『リセットボタン』を捨て、目に見える世界を、私と一緒に広げてくれますか? (完)

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売る者の時代 大槻有哉 @yuyaotsuki

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