第3話

窓から顔を出すと、昨日と同じく道の奥から聞こえてくるので、やはり何も見えません。


そのうちに聞こえなくなりました。


奥のほうは街灯がないので真っ暗ですが、道の入口の近くには街灯があり、誰かが出てきたらはっきりわかります。


しかし声が聞こえなくなってしばらく待ってみても、誰も姿を現しませんでした。


――まあ、いいか。


私は観察するのをやめて、そのまま眠りにつくことにしました。



その次の日の夜、寝室に入ろうとして少し考えました。


またあの声がするのではないかと。


そして寝室に入ると、やはりあの声が聞こえて来ました。


――なんなの、いったい?


毎晩こんな遅い時間に、人家のすぐそばの外で話しをするなんて。


非常識にも程があると思いました。


文句を言ってやろうかどうしようかと迷っていると、突然女の短い悲鳴が聞こえました。


――!


私はパジャマ姿のまま飛び出し、路地へ向かいました。


すると道の奥に、男と女の姿が見えました。


街灯がなく真っ暗なはずなのに、何故かその姿がやけにはっきりと見えたのです。


男は私に背を向け、女は男を見ていました。


そして男はあろうことか、金属バットで女を殴っていたのです。


――えええっ!

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