詩人の広場 第四回 前編

今宵も広場に3つ4つと妖しい影が集まりまして、詩について話し出しております。さて今夜はどんな詩が語られるのか? どうぞひとつお付き合いください。では前編のはじまりはじまり……


帆場蔵人@食蟻獣

では、では、今日の一作目をはります。

※湿原さんは今回、欠席。草月さんは自作なので発言控え目です。


とおせんぼ 作・草月玲


 ポッケには アメ玉一つ

 スマホは邪魔なだけ

 時間なんかに縛られたくないから 時計もいらない

 電車にのって ぼくは止まらない

 どんなに 楽しくなくたって ぼくは進むよ


 いつもの景色を飛ばして まだ見ぬ光に身を置きたい

 だからこの 黄色と黒の 看板も

 ぼくには何の 邪魔になる? とおせんぼなんて しないでほしいな

 すすむ 進め どんどんすすめ

 気の遠くなる距離を歩いて 自分の行くべきところを見つけるんだ


 もう日が暮れる 足元はぬかるんでいるけど

 脚には紅まっかな血が 流れ続けるから

 止まらないと そう決めたんだ

 前 前……前 前を目指す


 でもこの風景 何かを思い出す 

 きっと君の笑顔?

 ずるいじゃないか

 だって昨日は真反対 


 一度思えばあとはずっとまとわりつく

 この夜景も 

 きみと君がいるところのぬくもりを思えば 無景

 前へ歩きたいのに 記憶と感覚がとおせんぼ

 ひどいじゃないか ここまで来たのに  

 ……帰りたい


 電車に揺られて

 夜に照らされた アメ玉一つ

 結局ぼくは 何を目指せばいいんだろう? どこに行けば正解なのか?

 ひょっとすれば 君と二人で――

 一人じゃたどり着けないのか

 電車にいくら揺られても


 そこには


帆場蔵人@食蟻獣

この詩、最初から強がっているような言葉運びですね。


おきらく@雨いろプロジェクト

アメ玉ひとつというところとスマホというアイテムから「ぼく」が若者であるという想像がされますね。孤独にけれど自由に進んでいくぼく……。でも彼にも君という存在がいて……というところがポイントでしょうか


帆場蔵人@食蟻獣

ポッケにはアメ玉ひとつ。この詩句ですでに孤独を感じたんだけど。主体は確かに若い、或いは若い頃の記憶で詩が編まれているのかな。ポッケって妙に幼い印象がする。


おきらく@雨いろプロジェクト

ポッケに幼さ感じちゃいますよね。少年はすすんだはてに、なにを見つけた、もしくは見つけるのでしょうね。終わり方が気になります。


小林素顔

色のイメージの展開がこの詩に見出せそうな気がするのですが、この「アメ玉」は何色なんでしょうね?


帆場蔵人@食蟻獣

色!



小林素顔

「アメ玉」の色のイメージが読み手によって異なると印象も違ってきそう。


おきらく@雨いろプロジェクト

アメ玉赤色だと思ってました(笑)


草月玲

確かに色が所々入ってますね。ほぼ無意識……。アメ玉、個人個人によって無数の印象がありそうですから、興味深いです。


おきらく@雨いろプロジェクト

この詩からは郷愁と寂しみと君という存在の大きさを感じました


帆場蔵人@食蟻獣

アメ玉は自分の比喩というか、自分を託しているのかと思っていました。舐めたらとけてしまうけれど、確かにある。たかがアメ玉、されどアメ玉。そんな不安定な存在として現れてるのかな、と。


色は澄んだ青かな


小林素顔

私は、第一連に白、第二連に黄色と黒、第三連に赤、第四連と第五連に夜の黒を感じたのですが、そうなると第六連の「夜に照らされた/アメ玉一つ」の色が何になるかで、かなり印象が変わってきそうな気がします。私個人としては、黒飴ではないな、という。


おきらく@雨いろプロジェクト

なるほど! アメ玉にはやっぱり深い意味が!


帆場蔵人@食蟻獣

いや、渡す相手のいないアメ玉。アメ玉て渡すイメージなのはぼくだけかな。渡すべき相手の喪失。きみがいない。


帆場蔵人@食蟻獣

素顔さんの着眼点面白いですね。書き手が無意識に出したところへ目をつける。


おきらく@雨いろプロジェクト

君の不在とアメ玉が結びついている……!


小林素顔

私は読んでいて「アメ玉」に「きみ/君」を仮託しました。でも色がはっきりと浮かんでこないので、イメージをつかみ切れていない。


小林素顔

「君」をポッケに忍ばせていくイメージ。


おきらく@雨いろプロジェクト

色は読者の想像に完全にゆだねる感じでしょうか。あるいは時間がうつろうように、アメ玉もその表情(色)を変えているのかもしれない


帆場蔵人@食蟻獣

記憶の君を、持っていく!

無意識にだけど、結果としてそれがとおせんぼ、するのかな。あらためて読む、と最後がモノクロに感じたりする。


小林素顔

なるほど、アメ玉の色も移ろう。


おきらく@雨いろプロジェクト

アメ玉の色が移ろうとしたらどういう順番で色がうつろうかも気になるところです


帆場蔵人@食蟻獣

やはりアメ玉がポイントですね。これをどう捉えるかで詩への光の当たり方がかわる。


小林素顔

ひょっとすると「染まっていく」のかなあ、「アメ玉」の色。


小林素顔

染まっていくのか色がまぶされていくのか。その連ごとのイメージの色に。それでだんだん暗い色になっていく。


帆場蔵人@食蟻獣

うん、連をおうごとに強がっているようなメッキが剥がれて、悲壮感が増していく。


おきらく@雨いろプロジェクト

だんだん暗い色になっていくなら、最後のくだりも明るいものとはとれないような気がする……最後はいったいなんなのか想像がふくらむ


小林素顔

そこなんですよね、最後の一行の、そのあと。

何かがあるのか、何もないのか。


帆場蔵人@食蟻獣

実は最初は旅立ちの詩なのかと思ったんですよ。きみときみがいる場所というのが、離れていく故郷で、段々と不安が増して。でもそれだと諸々のことが、うまく読めないんですよね。



おきらく@雨いろプロジェクト

私も旅立ちなのかと思いました。でもよく考えればタロットの愚者のようにどこか破滅的なところがあるかも? 現実世界から追放、もしくは逃避してきたのかな、ぼくは。


小林素顔

わたしはてっきり「きみ」に「アメ玉」を届けに行くものだとばっかり……。


帆場蔵人@食蟻獣

素顔さん

その読みはなかった!

だからアメ玉はきみ、なのか。


おきらく@雨いろプロジェクト

なるほどー!


小林素顔

「きみ」に「アメ玉」を届けに行く「そこには」、「きみ」がいるのか、もういないのか、それとも何か別の事態になっているのか。ちょっと外れますけどそこが気になる。


おきらく@雨いろプロジェクト

でも君のことを思って途中ぼくがすすみにくそうだとも私は思ってしまうんですよね……

おきらく@雨いろプロジェクト

なんにせよアメ玉はきみの象徴っぽいですよね


小林素顔

明らかに進みにくくなっている。そして詩の一人称は明らかに挫けそうになっている。


帆場蔵人@食蟻獣

アメ玉がきみの象徴だとすると想い出、舐めて仕舞えば溶けて消えるのに、出来ない。とおせんぼ、されている。


小林素顔

あー舐めて仕舞えば消える!思いつかなかった


帆場蔵人@食蟻獣

まだ見ぬ光に身を置きたい、のにきみとでなければたどり着けない場所を目指している。終着駅のない執着の旅路?


おきらく@雨いろプロジェクト

アメ玉、噛めば砕けるのに、ぼくは砕きもしませんしそこもポイントかな?


草月玲

はあ~……、アメ玉を舐めれば消える。でもできないという二重苦。「アメ玉=君」論、好きです。気付けなかった!


おきらく@雨いろプロジェクト

もしかしたらぼくは「きみと一緒にいられる場所」をぼくひとりで向かっていたのかもしれませんね。という矛盾がいい感じにこの作品にあるのかも?


帆場蔵人@食蟻獣

はい。矛盾する相反する要素が作品を構成してると思うんですよ。


帆場蔵人@食蟻獣

最後の、そこには、という置き方がいいですよね。


帆場蔵人@食蟻獣

この強がりや幼さを感じる心情は男性的だな、と思うのは古いのだろうかw


小林素顔

男性役割に囚われている、と今なら言えそうですね。


おきらく@雨いろプロジェクト

でもきみも男性かもしれない。きみはけれど女性的役割なのかな?


小林素顔

そうか、「きみ」が男性かもしれないという視点の欠落こそ、読み手がジェンダーロールに囚われていることのあらわれだ。



帆場蔵人@食蟻獣

あぁ、それはたしかに。恋人でもいいし、親友という線もありえる。きみとぼく、と来たときについ、男女が浮かぶ。


帆場蔵人@食蟻獣

あ、あと5分ぐらいでしめますね。


帆場蔵人@食蟻獣

どうでしょう?

草月さんからコメントが欲しいかな。


おきらく@雨いろプロジェクト

最近は君僕系の青春もの?が流行っているので余計にイメージが固定化されそう


草月玲

はい。まず、この詩に「軸」を見出していただけたこと、大変うれしく思います。アメ玉や主人公の立ち位置(君との関係)など……、ありがとうございます! 個人的に、今までこの詩に特徴を見出せなかったのでうれしく思っています。


草月玲

また合評を聴いていて、いつも以上に「自分が書たものでは無い」という感覚が強い詩でした。というのも、自分の表意識をできるだけ排除して音楽を聴きながら書いたためです。「他愛も無い二人の博物誌」という--ああ、URLです⇒ https://www.youtube.com/watch?v=lR4SBAOqoTI&t=7s …--こちらを聴きまくっていました。

 曲の旋律から着想を得たので、あまり自分でも意識してかいていなかったのです💦 いわば無意識の塊……?


帆場蔵人@食蟻獣

ほぅ、上海アリス!


小林素顔

東方はもう常識なのですね……。


おきらく@雨いろプロジェクト

小説ではあるのですが、音楽を聴きながら詩を書くとは面白くて素敵です!


帆場蔵人@食蟻獣

いや、シューティングとしてハマってたので。


帆場蔵人@食蟻獣

楽曲や映画からというのはありますね。萩尾望都とか読んで描いてますし。


草月玲

東方はSTGも音楽も、設定すら魅力的なのでハマってしまいました。音楽を聴きながら文章書くの、なかなか自分と見つめ合うには良いと思います。


帆場蔵人@食蟻獣

作品、歌が無意識の領域を歩いて点が線になっていく。シュルレアリスムとか詳しくないですが、これも手法のひとつかな。


東方、良かったですよね。


帆場蔵人@食蟻獣

そうか言葉のアウトラインが先に来てるから、アメ玉を中心に自由に奥行き深く読めたのかもしれない。 と、そろそろ次に行きますか。しづきさん、寝てるなこれはw


おきらく@雨いろプロジェクト

すやすやタイムですねw


帆場蔵人@食蟻獣

次は草月さん推薦のおきらくさんの作品ですね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る