あとがき・解説

【あとがき――という名の簡単な解説】



 はじめましての方ははじめまして、そうではない方はいつもお世話になっております。

 吹井賢です。


 あなたはどうして小説を書くのか?と問われたら、僕は多分、「書かずにはいられないから」と答えますけど(『マクロスF』の早乙女アルトと同じですね)、この『ぷれかりあーと!』は公募処女作であり、今でも一番面白いと思っている作品です。テーマ性と異能周りの設定が完璧に使えている作品だと思います。

 何せ公募処女作なので、手探り状態と言いますか、今よりはキチンと物語を考えていて、大筋は僕の大好きな作品である、福井晴敏氏の『Twelve Y. O.』そのままです。「昔の知り合いが革命を目論んでいることを主人公が知り、知り合った相棒と共に止めに行く」という話なんですけど、『ぷれかりあーと!』も、ほぼ同一ですね。福井晴敏氏の作品の方は、戦争とか、自衛隊とか、自衛力とか、戦後の反省とか、そういう部分がテーマになっているんですけど、この作品については「若者の労働問題」をテーマにしています。あとは、「武道とは何か」「ロックとは何か」「友達とは何か」辺りです。

 この作品、本当に気に入っているので、語ろうと思えばいくらでも語ることはできるんですけど、やっぱり久良vs飛鳥の論戦と、「零れた涙を言葉にし 疼く痛みを声にして 想いは旋律、願いは鼓動 今日の向こうの明日へ向かう」の詩が我ながら最高ですね。歌詞、声、メロディ、リズムという音楽の要素を組み込んで、「“今日”の向こうの“明日”」という、僕が書く作品の普遍的なテーマで〆てるのが、自分で書いたとは信じられないくらいにいいなあと思います。

 大抵の人間にとっては、明日なんて、放っておいても来るわけなんですけど、それは今日と同じ明日なんですよね。当たり前の毎日、変わらない日常。「今日の向こうの明日」というのは、そうではない。今日ではない明日。今とは違う未来のことです。今日の問題が解決された明日、と言い換えることもできるでしょう。僕の作品は、大抵の場合において、この「今日の向こうの明日」を求める人達と、その過程で踏みにじられてしまう今日を守ろうとする者達との戦いです。

 なお、地味に次作以降の伏線も出ていて、飛鳥の言う「能力のことを知っているボク達のパトロン」は、『雨空に謳う』に登場した御陵真希波、狼子の言う「公安の知り合い」は『破滅の刑死者』等に登場する椥辻未練です。『破滅の刑死者』本編では、こっちの事件について少し触れられてましたね。

 最後にテーマソングとして設定した『シューゲイザースピーカー』より、歌詞を引用して終わりたいと思います。



  精一杯瞬間を生きたい

  誰にだって そう だって 与えられた基本原理

  全昼夜信念を慣らせ

  矛盾が行き交う交差点 それは深層心理把握してる

  重低音倍音を上げて

  遠望願望を精査して 派手にやってやらなきゃ


  始まるはず 命が歌い出す高揚感

  終わらないはず 今宵も無心に行くのは誰だ?



 この作品が、皆様の一時の楽しみになれば、それが作者にとって最高の喜びです。

 それでは、吹井賢でした。


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ぷれかりあーと! 吹井賢(ふくいけん) @sohe-1010

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