第48話 別れの朝
***
木窓の隙間から差した朝陽が目に入り、眩しくて顔を背ける。だんだんと目覚めはじめた頭の中が、隣に眠るひとのことを思い出した。見れば、傷跡の残る、しかしなめらかな肌に、生まれたての日差しが美しく陰影を付けていた。深く眠っているのだろう、彼女はこちらが身支度をする間も起きる様子はなかった。眠る額にくちづけを落とし、そっと立ち上がる。微かに、ベッドが軋んだ。
「……エイラさん……?」
かすれた声を聞き、小さくため息をつく。起こしてしまったようだ。とろりと寝ぼけた瞳で問うロタの髪を、できるだけ優しく撫でた。
「おはよう。私は先に行っています。じゃあ、また、後で」
外套を羽織り、足早に部屋を出る。振り返ることはしなかった。
今日だ。
今日、現帝政への大規模な反乱が起こる。未来を変えるために、多くの人が死に、世界が動く。
そして、アスタルの駒として、今から自分は生死を選ぶ権利を捨てる。
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