第2話

ーーピロリ。


夜遅くにスマホが鳴った。

持ち主は訝しげにそれを見る。

通話、メール、対外的なツールは未使用である。

もっぱら『ソシャゲ専用機』と化したモバイルフォンをまじまじと眺めた。


先日はイタズラとした思えないメッセージが送られてきたのだが、今回は果たして……。



「私メリーさん。これからあなたの所へ行くの」


ーーピロリ。


「私メリーさん。小田急線に乗って行くの」


ーーピロリ。


「私メリーさん。今度は各駅停車に乗って行くの。勉強したの」


ーーピロリ。


「私メリーさん。お腹空いた。車内販売ってないの?」


ーーピロリ。


「私メリーさん。ちょっとだけ駅で降りちゃおうっと。売店でお菓子買うの」


ーーピロリ。


「私メリーさん。電車行っちゃった。ポシェットも中に置いて来ちゃった!」


「どうしよう、これ追いかけた方が良い? 急行乗れば追いつくかな?」


「どれに乗れば良いんだろう。急行多くて分からないよ。とりあえず目の前のやつでいいや」


「唐木田に着きました」


「登りの電車はもう無いみたいです。とりあえず改札に行きます」


「ピンポーンって、乗り越しで引っかかりました。お金は無いです。全部ポシェットの中です」


「すいません……はい。えっと乗り越しちゃって……、お金無いんです。すいません」


「また君かって、わざとじゃないんです。違います、家出じゃないんですってば!」


「いや、やめてください。親とかほんと無理なんで。これでもシッカリもので通ってますし、その信用を傷つけたくは……はい、はい。わかりました」



そこで多量のメッセージが止まる。

しばらくして……。


ーーピロリ。



「私メリーさん。唐木田まで迎えに来てください」



お前は唐木田が好きか!

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