水辺

 母から聞いた話です。


 覚えておいででしょうか。いつぞやわたしがオーブを見た、山のなかの公民館。

 あの近辺を、飼い犬の散歩の際によく通るのです。

 その日はわたしが同伴していなかったのですが、気分よく歩いていたところ、後ろから呼ばれたそうな。

 母の少し後ろをついて歩いていたのは妹だったので、名前を呼んでなんの用か訊ねたそうです。

 すると妹は怪訝な顔で、


 「誰も呼んでないけど?」


 妹と弟には、なぜか霊感がありません。

 となりを歩いていた弟も首を横に振るので、母はうっすらと寒気を覚えて足早に引き返したそうな。


 彼女たちが歩いていたのは、土手だったんですよね。

 しかも例の公民館のあたりで、川の流れが曲がるんです。

 あの建物のなかが晴れた昼間でも暗い感じがするのは、おそらく気のせいではないのでしょう。

 水辺には出るって、よくいいますよね。

 "人が死ぬタイプの探索型ホラゲ"、我ながら秀逸な表現だったということでしょうか。

 ……実際死んでるかどうかなんて、調べたくもありませんけど。



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