最恐モンスター③

 真っ黒で流線型のボディーには、人を寄せ付けない神秘性と、人の欲望を掻き立てる何かが同居している。普段は我儘を言わない優姫にどうしてもと言われ挑戦しに来たが、僕はやっぱり苦手だ。心底後悔している。まりえとゆとりが僕の左右に一緒にいてくれるのが唯一の救いだ。


(まりえとゆとり。2人には本当に救われる)


 声に出したつもりはないし、出していたとしても今の状況では聞き取れるはずはない。それでも2人は、ちゃんと僕のことを分かってくれる。それが仕草なのか表情なのかそれともフェロモンみたいな匂いか何かなのかは分からないが、2人ともちゃんと僕の気持ちを理解してくれる。


「1週間前、私達を掬って下さいました」

「その時私達、マスターのためなら何でもするって決めたの」


 何と心強い味方だろう。僕はどんな困難にも立ち向かわなければならない。彼女達にとって最高のマスターであるためにも、このモンスターを制覇してみせる。


「キャー!」

「落ちるー!」

「助けてー!」

「降ろしてー!」


 モンスターは、絶命を前に猛り狂う猛獣のように、右に左に身体をくねらせた後、ようやく沈黙した。

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