第8話 魔族を退治!

 陽真が過去を振り返っているあいだに、シルフィの案内で亮と一緒に駒子の家の前まで、いつのまにか到着していた。

 すると、ひまわりのブレスレット、そのチャーム部分が、ファン、ファン、とゆっくり点滅し始めた。


「反応があるわね。そのブレスレットのチャーム部分がそうなると、魔族が悪さをしている部分に近いっていう証拠なのよ」


 さらに近づいてみましょう、とシルフィは家の裏口に回り、ステッキを振る。

 塀に透明な扉ができ、シルフィは入っていく。


「勝手に入っちゃってもいいの?」


「すぐに終わらせれば大丈夫よ。この透明な扉をくぐると、身体も透明になるから。だけど音や声はちょっとは聞こえちゃうから、物音と声には気をつけてね」


「わかった」


 亮が力強くうなずき、気持ち小声で返事をする。

 陽真と亮もシルフィのあとに続き、駒子の家の庭に入った。

 シルフィの歩くとおりに進むと、ひまわりの点滅がファンファンファンファン、と速くなった。


「あそこよ。あの紫陽花に魔族が巣食っていて、紫陽花を仲介して魔法を送っているの。だからこの家の住人が困ったことになっているのよ。特に桐原駒子が強い影響を受けているわね」


シルフィの言うとおり、なにか黒い蝶のような影が紫陽花の周りをまわっている。紫陽花も黒っぽく見えるししおれてしまっている。


「そのひまわりのブレスレットをつけているから、魔族の姿も魔族に悪さをされている紫陽花の本当の姿も、陽真と亮にも見えるはずよ」


「うん。紫陽花、黒っぽくなってる」


「あの黒い蝶みたいなやつが魔族か?」


 亮の質問を受けて、シルフィはうなずいた。


「そうよ。退治するときは、ひまわりのチャームの真ん中部分を半長押ししながら、こう言って。『花花まわれ 花よ咲け』──ひまわりを咲かせたときのように、咲いてって願いながらね。ただし、それができるのはチャーム部分が黄金色に輝いたときだけ。半長押ししながら『チャージ!』って言うと、『花救人(キュート)』としてのパワーと女王様の分身のパワーが集まるの。簡単に言えば、ひまわりパワーね。チャージが充分になると、チャームが黄金色に輝くから、そのときに『花花まわれ 花よ咲け』って言いながら祈ればいいわ」


 そしてシルフィは、亮のほうを向く。


「魔族が魔法かなにかで邪魔をしてきたら、亮はひまわりのブレスレットをした腕を思いっきり振るのよ。それでもだめだったら、あなたもチャームの真ん中部分を半分長押ししながら、『立ち去れ!』って祈るのよ。じゃ、さっそくお願いね」


「わかった! わくわくするなー!」


 小声で言っているが、それでも亮のわくわくする気持ちが声にあふれている。

 相手は魔族だから、陽真はちょっと恐い。

 だけど、亮のそんな姿を見ていたら、ちょっとリラックスできた。


「じゃ……いくよ」


 陽真は小声で、亮とシルフィに目で合図する。

 亮とシルフィがうなずくのを見届けると、陽真は魔族のほうに腕を差し出すようにし、ひまわりチャームの真ん中部分を長押しし始めた。


 ──が。


 突然、黒い蝶が陽真のほうに突っ込んできた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る